フィリップ・コトラーほか著『非営利組織のマーケティング戦略〔第6版〕』メモ-5(2006.01.10)

フィリップ・コトラー, アラン・R・アンドリーセン著. 井関利明監訳. "第7章 資金の調達". 非営利組織のマーケティング戦略〔第6版〕. 東京. 第一法規, 2005, pp.253-299

2006.01.10

加藤久明

1. はじめに〔pp.253-259〕

(1)非営利組織は、たえず財政的支援を探し求める。

(2)「ミッション・クリープ(使命変形)」:多くの非営利組織は、営利企業と変わらないマーケティングを展開することから発生⇒しかし、時に組織の歪みを招くこともある。

(3)資金調達における最初の課題⇒適正なバランスを確立すること。

(4)全ての資金調達は、明確な目標を持ち、緊密に考え抜かれた戦略を持つことから始まる。

2. 資金調達〔pp.260-〕

(1)顧客中心の資金調達

(a)「プロダクト志向段階」⇒少数の献身的な寄付者が、資金の大半を提供している。

(b)「販売志向段階」⇒大規模な非営利組織の大部分は、この段階にある。

(c)「顧客志向段階」⇒組織が資金調達を組織のニーズではなく、寄付者のニーズを満たすものとして考え始めることが、資金調達において顧客志向へと移行するきっかけとなる。

(2)民間の非営利組織が依存する寄付金市場

(a)財団〔pp.265-270〕

(a1)独立財団(Independent foundations):専門スタッフによる運営、幅広い慈善活動の支援が目的。

(a2)ファミリー財団(Family foundations)特定活動の支援のため、裕福な個人が設立したもの。

(a2)企業財団(Corporate foundations):企業が設立し、調整総所得の5%以内での拠出が行われる。

(a3)地域財団(Community foundations):多くの民間からの遺贈をプールする手段として設立。

(b)企業〔pp.271-276〕

(b1)企業による寄付の大きな変化:19世紀~20世紀の変わり目における企業慈善事業は、企業貴族による特別な世界⇒1950年代に入ると、企業が主要な寄付プログラムを立ち上げ、社内財団をつくるようになる⇒しかし、1990年代には、無駄を廃して、より効率的な経営を迫られることになり、慈善事業へのアプローチが見直されるようになった。

(b2)「戦略的慈善事業」:企業が慈善事業を「競争のための武器」と考えるようになった⇒この新しいパラダイムによって、多くの企業目標が達成できる〔⇒pp.273〕。

(b3)企業と企業財団から助成金を求めること:財団に対するアプローチと変わりはなく、資金調達が最も期待できる企業は、次のいずれか1つの特徴を持っている〔pp.274-275〕

(b3-1)地域企業(Local corporation):同じ地域内にある企業は、助成活動を行うことにより、自社とスタッフにとって直接便益がある、と考える傾向がある。

(b3-2)同種の活動(Kindred activities):似たような分野に位置する企業は、もっとも有望である。

(b3-3)個人的関係や接点(Personal relationships or contacts):寄付を求めようとする企業と何らかの個人的接点がないか、ということを見直す必要がある。

(b3-4)組織構造の類似性(Structural similarity):全国的ないしは国際的な視野を持つ組織は、構造的に一致する企業を見つけ出す必要がある。

(b4)企業援助に大きく依存している非営利組織は、企業の慈善事業に対する考え方の変化にたえず気を配る必要がある⇒これからの10年間に出資する可能性がある事業領域〔⇒pp.275-276〕。

(c)政府〔pp.276〕

(c1)政府機関は、寄付請願時に、細部にわたる書類を要求することが多い⇒計画表のみならず、社会的利益への貢献度にも比重をおき、請願を評価する傾向がある⇒組織の世評が重要。

(c2)過去に優れた実績があると、たいてい助成金の受給は「くせ」のように延長できる。

(d)個人〔pp.276-〕

(d1)個人寄付は、(米国における)寄付全体の81%を占める最も主要な資金源。

(d2)個人寄付者の特徴:ライフサイクル・ステージと寄付行動パタンに基づいた分類〔pp.277〕

(d2-1)初期(The early years ; 50歳まで):寄付は少額、現金寄付が中心となる。

(d2-2)中期(The middle years ; 50~70歳):日常の寄付を行いながら、多額の特定寄付をし始める。

(d2-3)後期(The later years ; 70歳以上):遺産とその他の形式による寄付を目当てとされる。

(d3)人々が寄付する最も大きな理由⇒「大義名分に強く感じるものがある」⇒特に、裕福な人々にとってはこれがさらに重要な理由となる。

(d4)動機の問題:個人による寄付は、「譲渡」ではなく「交換」と捉えるべきである⇒非営利組織は、寄付者が求める便益を供与⇒寄付者は、寄付という形態で「支払い」をする⇒そのため、寄付者が何を「得る」のか、あるいは「得られる」のか、ということが問題となる⇒個人の寄付動機の一覧〔pp.281, 表7-4〕。

(d5)顧客中心主義をとらない非営利組織での問題〔pp.280-282〕:寄付の見込みのある人に向けて「組織」には資金が必要であると訴えることにより、寄付の請願をしようとすること⇒それは、組織のニーズを満たすために寄付をさせようとする行為⇒しかし、寄付者たちは、自らのニーズを満たすために行動を起こす。

(d6)個人からの資金調達方法

(d6-1)年次寄付〔pp.282-290〕:ほとんどの組織が、最終的にはこの方法に依存する。まず、強力なヴォランティアのリーダーシップとスタッフの支援が必要とされ、キャンペーンと一致した明確な組織構造があり、目標とそれに対する説明責任が求められる。

(d6-2)大型寄付〔pp.290-294〕:個人と企業を対象として求められる。また、特定目的に設定され、年次寄付とは大きく異なる手法を用いる。これは、寄付者にとっての利得を強調し、個人のニーズや欲求、ライフスタイル状況にとっての利得を考えるなど個人的な傾向が強い。また、多くの場合、非常に長い時間が必要とされる。

(d6-3)計画的寄付〔pp.294-295〕:寄付者の死亡時になされる寄付を意味する表現であり、多くの非営利組織にとって、重要性が増してきている。手法そのものは、大型寄付に類似しているものの、往々にして長期にわたる時間を必要とする。

(3)上記に挙げたような、非営利組織が自らの活動から資金を獲得するような傾向の増加に対しては、組織を本来の使命から次第に遠ざけているという批判もある⇒非営利組織への期待は、民間企業と政府がうまくいかなかった点を、民間企業に変わってサポートするところにあった。

(4)「社会企業家(Social Entrepreneurs)」という視点:本来あるべき姿は、使命を中心にした活動(mission-driven)であり、非営利組織が支援から脱皮し、本来の責任と自立に向かって進んでいくことへの支援である。