斐伊川水系の流域は、世界レベルで大切さが認められたラムサール条約登録湿地「中海」「宍道湖」をはじめとした豊かな自然環境が広がっています。
島根県奥出雲町の船通山(せんつうざん)を源流とし出雲平野を東に貫流する斐伊川と、
島根県飯南町の女亀山(めんがめやま)を源として出雲平野を流下する神戸川
斐伊川 [MLIT]
神戸川 [MLIT]
ラムサール条約湿地に登録されている宍道湖と中海
宍道湖 [MLIT]
中海 [MLIT]
斐伊川の上流には、近世に行われた鉄穴(かんな)流しの跡地につくられた棚田が広がり、同じく下流(宍道湖西岸)には流れ下った土砂を利用した水田地帯が形成されており、豊かな二次的自然が形成されています。
出雲平野(斐伊川河口部周辺)の水田地帯 [MLIT]
斐伊川の中流~上流部に広がる棚田 [UC]
流域には、こうした豊かな湿地環境を好む大型の水鳥がたくさんくらしています。斐伊川水系の流域は、多くの水鳥たちが集まる、全国でも例を見ない場所です。
宍道湖や中海、斐伊川には、毎年たくさんのハクチョウ類、ガン類がユーラシア大陸から飛来し、秋から春先にかけて、田んぼや河川などで食べものを探したり、羽を休めたりする姿を確認することができます。
コハクチョウ
マガン
ヒシクイ[MLIT]
数は少ないのですが、ツルの仲間(ナベヅルやマナヅルなど)も、秋から春先にかけ、田んぼや河川などで姿を見ることがあります。 2020年の冬には、日本では北海道以外では極めて珍しいタンチョウ(丹頂鶴)が10年ぶりに訪れ、大きな話題となりました。
ナベヅル
マナヅル
さらに、2017年はじめごろから、雲南市においてコウノトリがよく確認されるようになり、2018年には同市内で初めてひなの巣立ちを成功させました。
環境破壊などが原因で、コウノトリは1970年に一度日本の空から姿を消しましたが、兵庫県豊岡市にて自然の空に返す試みが続けられ、2007年に40年以上ぶりに自然のもとでひなが巣立ちました。雲南市における巣立ちの成功は、豊岡市、徳島県鳴門市に続いて3例目の快挙です。
コウノトリは雲南市以外にも、鳥取県米子市から島根県奥出雲町まで、川や田んぼなどで羽を休めたり、食べものを探したりする姿が数多く目撃されています。
コウノトリ
人工巣塔のコウノトリ
日本では一度絶滅し、新潟県佐渡市を中心に野生復帰の試みが続けられているトキについては、分散飼育を続けてきた出雲市が「トキを出雲の空に飛ばすこと」を目標に、トキがくらせる環境づくりを進めているところです。
トキ [IC]
トキ
日本の陸域にくらす希少な大型の水鳥は、これらハクチョウ類、ガン類、ツル類、コウノトリ、トキの5種群に大別されます。
斐伊川水系はこれら全てについて現在も生息、あるいは過去に生息していた記録があり、かつ、安定的に生息可能となるポテンシャルを有する、全国でもたぐいまれな環境特性を持っています。
写真・図表:IC=出雲市、UC=雲南市、MLIT=国土交通省、その他(無印)=(公財)日本生態系協会