能義平野から望む大山
なぜ、生態系ネットワークの形成に取り組むの?
生態系ネットワークの形成は、自然生態系を守り育て未来に受け継ぐだけでなく、私たちの社会活動、経済活動に様々な恵みをもたらす可能性を持っています。斐伊川水系を取り巻く自然条件・社会条件は、生態系ネットワークの形成や、自然環境を活かした地域振興を進めるうえで、全国有数の好条件を備えています。
このことから、生態系ネットワークの形成による、大型水鳥がくらす魅力的な流域づくりのための効果的な取組の検討を目的とした「斐伊川水系 生態系ネットワークによる大型水鳥類と共に生きる流域づくり検討協議会(以下、「協議会」とします)」を、2015年度に設立しました。
協議会は、同年10月に、中海と宍道湖に接する5つの市(鳥取県米子市、境港市、島根県松江市、出雲市、安来市)を対象地域とし、圏域の自然環境や指標となる大型水鳥にくわしい専門家や研究者、環境学習施設、銀行や地域メディアなどの事業者、および行政が委員となって始まりました。
2017年度には斐伊川および神戸川の上流域である、島根県雲南市、奥出雲町、飯南町が加わり、現在、2県6市2町が対象地域となっています。
なぜ、協議会を作ったの?
生態系ネットワークの形成のためには、指標となる大型水鳥のくらしやすさを主軸に、良い自然環境を守り、過去に失われた自然環境を取りもどす、あるいは新たに作っていく必要があります。
一方、斐伊川水系において大型水鳥がくらす場所は、自然を守る、または取りもどすことだけを目的にしてよい場所は、実はほとんどありません。
例えば川や湖、つまり斐伊川や神戸川、中海、宍道湖は、自然環境を守ることを目的の一つとした場所ですが、同時に、流域のみんなの命や財産を水害から防ぐ役割(治水)、農業などの産業に使う水や飲み水を運ぶ役割(利水)も持っています。もちろん、魚や貝を育て、お店や食卓に食べものとして提供する役割もあります。
また、田んぼなどの農地は、農業を営む人がお米や野菜を育てる場所です。大事な農作物を育てている時に知らない生きものがやってきたら、農家のみなさんは心配になります。せっかく育てた野菜やお米を食べられてしまったら、損をしてしまうかもしれません。
川や湖、田んぼだけではなく、流域全体の自然環境を良いものにしていくためには、たくさんの人にこの取組を知ってもらい、協力してもらう必要があります。
さらに、生態系ネットワークづくりを進めることによる「恵み」についても、たくさんの人に知ってもらう必要があります。自然環境を良いものにするだけでなく、良くなった自然環境をどうやって地域振興(農業や観光、環境学習など)に活かし、持続可能な地域づくりにつなげていくかについても、考え、実践し、広く知ってもらう必要があります。
このような考えを実現するために、さまざまな仕事をしている人に集まってもらい、協議会をつくりました。
協議会では何をしているの?
大きなまとまりである「協議会」の下には、現在、大きく分けて二つの場を設けています。
ワーキング
生態系ネットワークの形成について、また、形成を通じた地域振興、仲間づくりについて専門的な知識を持っている人が、それぞれの課題に向けて話し合う場です。
圏域部会
協議会やワーキングにおいて話し合った結果を受けて、取組を進めていくための場です。(2021年10月現在、準備中です)
協議会の体制 [MLIT]
全体構想
協議会では、下記の目的の実現に向けて「斐伊川水系生態系ネットワーク全体構想」を令和2年1月に策定しました。
■目的
斐伊川水系における大型水鳥類と共に生きる魅力的な流域づくり
● 基本方針1 河川を軸として地域の自然を広げ、つなぐ。
● 基本方針2 地域の魅力や活力の向上につなげる。
● 基本方針3 人と自然、人と人の絆を深める。
斐伊川水系生態系ネットワーク全体構想
http://www.cgr.mlit.go.jp/izumokasen/iinkai/ryuiki/econet/files/20200124_zentaikousou.pdf
協議会でこれまで話し合った結果や、協議会で使った資料は、以下から見ることができます。
(国土交通省 出雲河川事務所HP)
https://www.cgr.mlit.go.jp/izumokasen/iinkai/ryuiki/econet/index.html
写真・図表:IC=出雲市、UC=雲南市、MLIT=国土交通省、その他(無印)=(公財)日本生態系協会