指標となる大型水鳥

について



松江市古志町でねぐらを取るコハクチョウの群れ

なぜ、大型水鳥に注目するの?

 

生態系ネットワークを形成していくには、地域を象徴する野生の生きものをシンボルや指標として、良好な自然環境を守りながら過去に失われた自然環境を取りもどし、つなげていくことが有効です。

斐伊川水系の流域には、ラムサール条約登録湿地の「宍道湖」「中海」があり、秋にはガン類やハクチョウ類など、多くの水鳥が集まり冬を越します。また、2004年から兵庫県豊岡市でコウノトリの放鳥が始まって以降、この流域でのコウノトリの目撃情報が増えており、巣づくりや子育てを行っていることも知られています。

「大型水鳥」は、生態ピラミッドの頂点に立つ、健全な生態系の指標と言えます。また、地域内外の多くの人々へのアピール性が高いという特徴もあります。現在、日本各地において大型水鳥をシンボルとした生態系ネットワークの形成、および、形成を通じた地域づくりが進められています。

① 様々な環境を複合的に利用する生きものがくらせる=自然と調和した、多様性を持った環境が一体的に存在している

 

大型水鳥の多くは、良好な環境を広範囲に移動しながらくらす習性を持っているので、生態系ネットワークの指標として適しています。斐伊川水系で越冬するガン類・ハクチョウ類・ツル類現在、雲南市を中心に生息しているコウノトリ、およびトキは、河川や湖沼・水田・草地・林など様々な環境を組み合わせ、食べものを探す場所、休む場所などとして利用しているのです。

出典:豊岡盆地に飛来したコウノトリの行動範囲と利用環境(内藤和明・大迫義人・池田啓)(2003)

大型水鳥が食べものを探したり、ねぐらで休んだりできるということは、地域に様々な自然環境があり、かつ、それぞれの自然環境が良好であることを示していると言えます。

② 生物多様性のシンボル

 

ガン類やハクチョウ類、ツル類が冬をすごすために利用する川や湖、まとまりのある田んぼは、カモ類など他の鳥類だけではなく、多くの水辺を好む野生の生きもののがくらすうえでも重要な環境条件です。

コウノトリとトキは、ともに肉食の鳥であり、里地里山における生態ピラミッドの頂点に立つ高次消費者です。これらの鳥が安定してくらしていくためには、ドジョウやカエル、トンボなど、食べものとなる野生の生きものがたくさんくらすことができる、良好な自然環境が必要です。

 生態ピラミッド

大型水鳥が冬をすごすことができる、子育てができるということは、多様な生きものがくらしやすい健全な生態系があることを意味します。

③ シンボル性やアピール性が高く、広く受け入れられやすい存在

 

ハクチョウ類やコウノトリ、トキといった白く大きな鳥や、ガン類のような大きな群れをつくる鳥は、生きものに特別な興味をもたない人の目にもとまりやすく、幸せを運ぶ鳥や良い環境を示すシンボルとして親しみやすいという特徴があります。

雲南市のコウノトリ・ロゴマーク [UC] 

国民の関心や支持が集まりやすく、環境面のみならず農業、観光、商工等への波及効果、多面的な地域振興への効果等が期待できます。

指標となる5種群の大型水鳥

 

生態系ネットワーク形成の指標として、良好な自然環境の存在と多くの人々への高いアピール性を示す、5種群の「大型水鳥」を紹介します(⇒それぞれの画像をクリックしてください)。

ハクチョウ類

ガン類

ツル類

コウノトリ

トキ [IC]

写真・図表:IC=出雲市、UC=雲南市、MLIT=国土交通省、その他(無印)=(公財)日本生態系協会