播磨地方の例大祭は、通常2日間にわたって行われます。1日目を宵宮、2日目を**本宮(昼宮)**と呼びます。神社によって行事の流れは異なりますが、宵宮の主たる行事は村練りです。
氏子たちは自分の地区(町・村)を、だんじりや太鼓屋台とともに練り歩きます。要所では屋台を高く差し上げたり、だんじりでは獅子舞や民俗芸能を披露したりします。隣接する地区の屋台同士が出会うと、境界で練り合わせを行い、広場では複数地区が一堂に会して練り合わせを披露することもあります。
本宮(昼宮)では、神事として神輿の渡御と還御が行われます。神社の年番にあたる氏子の中で、特定年齢の者が神輿を担ぎ、御霊の遷された神輿に奉仕します。他の氏子は、自らの地区のだんじりや太鼓屋台を巡行させ、祭神(氏神)のお供として御旅所参りや宮入りを行います。宮入りの際には、各地区の屋台が神社の境内に入り、鳥居や楼門前、拝殿前で差し上げや練り合わせを披露します。地域によっては、神社や御旅所の練り場で屋台同士が激しくぶつかる練り合わせを行うこともあります。こうした他地区との練り合わせは、練り子にとって重要な見せ場であり、観客にとって祭りの最大の醍醐味です。
祭りの主役ともいえる太鼓屋台ですが、あくまで「賑やかし」、すなわち人寄せの道具として発展したという説もあります。もともと祭礼の儀式の主体は、御神体を奉斎した神輿の渡御・還御です。魚吹八幡神社では、今もだんじりでの伝統芸能に重きが置かれています。また、境内での獅子舞・能楽・田楽などの民俗芸能は、地域の歴史を伝承する重要な奉納の儀式です。
一方、松原八幡神社では木場屋台が祭神を乗せて拝殿まで運ぶ「宮遷し」の役割を担うことから、屋台が祭り本来の目的に直結する例も見られます。神の御霊が遷された神輿は、お先太鼓や露払い(だんじり)が先導し、だんじりや太鼓屋台が後ろについてお供する光景も確認できます。
つまり、屋台を引き立て役とする神社もあれば、屋台を主役とする神社もある。こうした神社ごとの多様性こそが、播磨祭礼の大きな魅力の一つです。