本サイトについて
兵庫県南西部、通称播磨地方(旧播磨国)の神社で行われる例大祭の魅力を紹介するサイトです。
主に秋季の例大祭(一部は春季・夏季の祭礼も含む)や、各氏子地区の太鼓屋台の新調お披露目・完成式を対象に、管理人自ら写真・動画を撮影して随時情報を掲載します。
現地での見聞や文献に基づき、独自の視点で祭礼の魅力や歴史、地域ならではの特色について思いを巡らせながら紹介してまいります。
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播磨の祭り屋台に関する考察(ひとはく共生のひろば発表)のページを新設
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英語で簡易紹介:Breathtakingly Splendid and Beautiful: Autumn Festivals in Harima Province, Japan.
素人目には屋台の形はどれも同じに見えますが、じっくり見れば見るほど、その違いがはっきりと分かってきます。
播磨地方でいう「屋台」とは、いわゆる太鼓台のことを指します。呼び名にも地域差があり、南東部では「やっさ」、南西部では「やったい」と呼ぶ傾向があります。
屋台は屋根の形によって大きく分けると、平屋根型・反り屋根型・神輿屋根型の三種があります。
神輿屋根型の中でも、練り合わせを主とする「灘・飾磨型」と、高く差し上げる所作を特徴とする「網干型(チョーサ型)」があります。
さらに同じ神輿型でも、屋根の深さ、錺(かざり)金具の意匠、露盤や狭間彫刻の図柄、幕に施された刺繍の技法、そして伊達綱か隅絞りか—細部に至るまで、各地区で代々受け継がれてきた固有の形と美意識があります。
そうした違いを知るほどに、屋台を見る目は磨かれ、祭りそのものの奥行きも感じられるようになります。
「動く芸術品」とも称される屋台。
幕や高欄掛に施された緻密な刺繍、狭間や露盤に彫り込まれた木彫り彫刻、神輿型の屋根に輝く漆塗り、反り屋根型を彩る梵天——それぞれに匠の技が結集しています。
彫刻の題材には、日本神話や戦記物、中国古典の名場面が選ばれ、物語性と美術性が融合しています。なかでも著名な彫刻師の手による作品は、もはや値段のつけられないほどの価値を持つといわれます。
しかし、ほとんどの部位が木製である屋台は、激しい練りによる衝撃や、風雨・日光による劣化を免れません。そのため、部分的な修復から全体的な新調まで、一定の周期で改修が行われます。こうした「手を入れ続けながら守り継ぐ」ことこそ、屋台文化の大きな特徴です。
屋台を練り子(担ぎ手)が頭上高く差し上げることを「差す」と言います。
この所作は、氏神への感謝や村の豊穣、悪霊や疫病退散を祈る行為として始まったとも伝えられます。現実的には、村の結束を固めたり、日頃の鬱憤を晴らす「ガス抜き」の意味合いもあったのかもしれません。
一方で、屋台の上で太鼓を叩く乗り子もまた大役です。
魚吹八幡神社氏子地区では、伝統的に小学生の男子が務め、「神の子」と言っても過言ではない特別な存在として扱われます。祭礼の間は地面に足をつけることなく、練り子に肩車されて屋台と休憩所を行き来します。
なにより目を引くのは、その絢爛豪華な着物姿です。金糸銀糸の刺繍や鮮やかな染めは、日本の伝統美と職人技の粋を示すものであり、神様への敬意がそこに息づいています。
「訪れ」という言葉の語源は、「音連れ」とも言われます。
播磨の祭りの魅力のひとつも、まさに音です。
乗り子が叩く、身体の芯まで響く深い大太鼓の音。練り子たちの気合のこもった掛け声。太鼓の打ち方も、掛け声も、地区ごとに異なります。
「ヨーイヤサ」の語源は「世弥栄(よいやさか)」で、*世がいやさかになるように(繁栄するように)*との願いを込めたもの。
「チョーサ」の語源は「招財(ちょうざい)」で、財や良い縁起に恵まれるようにとの祈りが込められています。
また、各地区の練り子が唄う囃子も、伊勢音頭を基調にしながら歌詞は地区ごとに異なります。その多くは文字に残されず、口から口へと伝えられてきたもの。村の共同体の中で生き続ける伝統です。
まさに、「神が音を連れてやってくる」——それが播磨の祭礼なのです。
「浜手(海側の地域)は、荒っぽい」—地元の人からよく耳にする言葉です。
その言葉を象徴するのが、「灘のけんか祭り」に代表される、激しく勇ましい祭礼です。
屋台の練り合わせや神輿合わせは、時に破壊寸前の激突を見せ、提灯練りや獅子舞も全身の力をぶつけるかのように繰り広げられます。
波打ち際の風の匂い、荒く息づく男衆の掛け声、揺れる灯火、軋む木材の音——そのすべてが見る者を圧倒し、ただの娯楽を超えて心を揺さぶります。
激しいだけが播磨の祭りではありません。
「ヨーイヤサー」の掛け声とともに繰り広げられる激しい練り合わせが“動”の美学なら、「チョーサー」で高く差し上げられた屋台には“静”の美学があります。
金木犀の甘い香り、稲刈りを終えた田んぼの匂い、提灯のやわらかな光の下、獅子舞に寄り添う篠笛の音色——秋祭りには、なぜか胸の奥に懐かしさがよみがえります。
浜の宮天満宮の「台場差し」の最中、静まり返った境内に響き渡る太鼓の音は、真夜中の除夜の鐘や、座禅・瞑想中に耳にする木魚やマントラの響きを思わせます。
播磨の祭りは、静と動のコントラストこそが最大の魅力なのです。
太鼓屋台は、もともと「賑やかし」、すなわち人寄せの道具として発展したとする説があります。
しかし、松原八幡神社では木場屋台が祭神を乗せて拝殿まで運ぶ「宮遷し」の役割を担っており、そこから祭り本来の宗教的な目的を垣間見ることができます。
実際、多くの例大祭では、神の乗る神輿を「お先太鼓」や露払いのだんじりが先導し、あるいは太鼓屋台が神輿の後についてお供をする光景が見られます。
本来、祭礼の儀式の主体は、御神体を奉斎した神輿の渡御(とぎょ)・還御(かんぎょ)の神事にあり、その行列や所作すべてが神事の一部です。
また、境内での獅子舞・能楽・田楽といった民俗芸能は、古くからその地域に伝わる物語や歴史を伝承する奉納の儀式として重要な位置を占めています。
「氏子」とは、その神社の氏神を信仰し、守り伝える地域住民を指します。氏子たちは、祭礼の準備から運営、屋台の維持や修理までを担います。
屋台は単なる飾り物ではなく、氏子衆の結束や地域の誇りの象徴です。代々受け継がれてきた彫刻や装飾、屋根の構造などは、その土地ごとの美意識や技術力を物語っています。
神社の氏子地区は、明治時代以前の村の区割りを基本としているため、現在の市町村の行政区分とは一致しないことが少なくありません。
また、神社の境内には古くからの樹木が茂り、周囲には河川や田畑が広がっています。そこには多くの野鳥や昆虫が生息し、四季折々の自然の営みを感じることができます。
氏子によって神社やその周辺環境が大切に保全されてきたことは、こうした多様な生き物が今も守られている何よりの証といえるでしょう。
当サイトの通称は 「ハリフェスト・ヘラルド」 と申します。
「播磨(ハリマ)の祭礼(フェスティバル)を報道・伝える者(ヘラルド)」を略した名称です。
「フェスト」や「フェス」という語を使ったのは、私自身が音楽フェスティバル好きで、例えば Ozzfest や Knotfest のような響きに親しみを感じているからです。さらに「ハリ」という音は、ヒンドゥー教の神クリシュナの別名でもあり、私が実践しているクリヤヨーガとの縁を感じたことも理由のひとつです。
播磨の祭礼は、いわゆる「どこにでもある誰でもができそうなどんちゃん騒ぎ」ではなく、「ここにしかない、魂のこもった骨太な祭礼行事」 です。その一つひとつには、地域の歴史や人々の美意識が凝縮されています。
まだまだ素人の域を脱しておらず、至らぬ点も多々あるかと思いますが、どうぞご寛恕ください。
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姫路城のすぐ東側(旧城下町)で幼少期を過ごしました。小・中・高校時代は、隣の市の浜手で育ちました。
父方の曽祖父は、地元の村で子ども屋台を購入する際、かなりの額を寄付したと聞いています。小学6年生のとき、私もその子ども屋台に乗り子として参加し、太鼓を叩きました。親戚の中には、魚吹八幡神社のある地区の屋台で乗り子を務めていた人もおり、その衣装を見せてもらった記憶が、いまも鮮やかに残っています。
それからしばらくのあいだ、なぜか祭りへの興味は薄れていました。大学、大学院で地元を離れ、そして仕事のために京都で暮らすようになったのです。
その頃、天神さん(菅原道真公)にまつわる逸話――京で相次いだ落雷や災厄が道真の祟りとして恐れられ、その怨霊を鎮めるために「雷神」「天神」として神格化されたという話――を知りました。その物語に触れたとき、日本人の心の深層にある「畏れ」や「祈り」という感情に、強く惹かれました。
さらに、三島由紀夫の小説やドナルド・キーンの評論を通して、日本人の美意識や文化、芸術への理解を少しずつ深めていきました。
京都の雅で厳かな祭礼にも心を打たれましたが、どこか物足りなさも感じていました。
――それは、幼いころから親しんだ浜手の「熱気」と「練り」の感覚が、どこかに置き去りにされていたからかもしれません。
もともと浜手育ちの私は、どちらかといえば明るく開放的な性格です。けれど、周囲からはよく「おとなしいね」「祭り好きなのが意外」と言われます。
自分では「凝り性」なほうだと思います。MBTI分析ではINTJ-T(建築家)タイプ。内に秘めた情熱は強いけれど、感情表現は少し不器用――そんな自覚があります。
そんな私の中で再び火がついたのは、友人のひと言がきっかけでした。
「やっぱ、練らんとあかんでしょ!」
その瞬間、胸の奥が熱くなりました。
「練ってなんぼ」の浜手の祭り文化が、やっぱり好きなのです。
腹に響く太鼓の音。激しい練り。練り子たちの大きな声。
鉢巻と廻しを締め、「やっさ」を練っているときの自分が好きです。
練りの最中に汗をかき、祭りシャツと法被を脱いだとき、ふとこぼれる笑み――そんな瞬間の自分も、けっこう好きです。
祭りに参加するたび、関係者の方々の情熱と誇りに心を動かされます。
そして、自分がそんな人たちと同じ土地に生まれたことを、心から誇りに思います。
2019年10月 姫路市白浜町松原八幡神社の「灘のけんか祭り」を観に行き、宵宮の神社練り場でスリルを味わい、祭り熱が再燃する。
2021年1月 加西市のミニチュア屋台製作者の試作品組み立てのモニタリングに協力する。
2021年9月 屋台保存連絡会主催の祭り写真展示会に写真を応募し、3作品が当選する。
2024年5月6月 北条節句祭り写真展に応募する。受賞は逃すが、展示をしていただく。
2024年10月 北条屋台(姫路市)、亀山大屋台(姫路市)、黒崎大屋台(たつの市)の練り子として参加する。
2025年2月 兵庫県立人と自然の博物館主催「共生のひろば」で播磨の祭り屋台について発表。
2025年3月 姫路市自然観察の森「第5回 めぐみの森作品展」で金賞受賞
2025年3月 高砂神社再建400年祭氏子木曽町屋台の練り子として参加する。
2025年5月 恵美酒宮天満神社 都倉町新調屋台入魂式 御幸屋台の練り子として参加する。
2025年7月 蛭子神社 夏祭り 岩見港屋台(大屋台・子ども屋台)の練り子として参加する。
2025年9月 高砂神社 戎町帳場開き屋台練り出し、鍵町屋台大改修お披露目練り出しに練り子として参加する。
2025年10月 恵美酒宮天満神社氏子御幸屋台、北条天満宮氏子北条小屋台、高砂神社氏子木曽町屋台、生矢神社神社氏子亀山大屋台、福泊神社氏子福泊屋台、灘のけんか祭り(松原八幡神社氏子)宇佐崎屋台、富嶋神社氏子黒崎大屋台に練り子として参加する。
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