形態の特徴
屋根に布団を模したものがほぼ平行に乗せられる。五段の屋根のもの、一段の屋根のものがある。多くは杉の担ぎ棒が使われる。
分布
播磨地方東部に広く分布する。高砂市、加古川市北部、北播方面。
播磨地方以外に目を向けると、布団屋根型屋台は、大阪湾沿岸から瀬戸内海一円、さらには山陰、あるいは九州は日向の沿岸から内陸へと、西日本の沿岸沿いや河川の流域に沿って広く分布している。遠く長崎でコッコデッショと言われて「おくんち」の花形となっているのも実は平屋根型の布団太鼓である。
神社
海神社(神戸市垂水区)、大宮八幡宮(三木市)、大日神社(三木市)など。
形態の特徴
屋根上面の中心で綱が交差する。基本的な構造は後述の神輿屋根屋台に近い。実際、富嶋神社の黒崎屋台などは、反り屋根屋台の屋根を改修して神輿型に変えた事例もある。
分布
播磨地方東部に広く分布する。反り屋根屋台はおおよそではあるが、平屋根屋台と神輿屋台の中間部分に分布する傾向が見られる。
神社
住吉神社(加西市)、曽根天満宮(高砂市)、高岡稲荷神社(加東市)、糀屋稲荷神社(多可郡)、諏訪神社(神崎郡市川町)、熊野神社(福崎町)、二之宮神社(福崎町)など。
播磨地方の神輿屋根型屋台は、大きく二つに分類されます。
1. 練り合わせ型屋台(灘・飾磨型)
2. チョーサ型屋台(網干型)
現代のように極限まで装飾的になったのは、高度経済成長期以降のことです。屋台の歴史から見れば、つい最近の変化にすぎません。
太鼓屋台が地域に定着すると、次々と装飾の工夫が加えられました。幕や高欄掛け、意匠的な綱、金属工芸、木彫りなどが取り入れられ、これらが互いに競い合うように豪華さを増していきます。
これに対して、祇園祭の山鉾(中世末期にほぼ現代型が完成)や、大阪・神戸のだんじりでは装飾の変化は比較的緩やかです。播磨の神輿屋台は、新調のサイクルが短く、装飾の変化が激しい点で特異といえます。現代においても、祭礼における**「風流の精神」**が脈々と受け継がれているのです。
神輿屋根型屋台は、平屋根型が西日本の海岸沿いや河川流域に広く分布するのに対し、神輿屋根型屋台の分布は狭く、播磨平野を中心とする地域に限られます。播磨平野の沿岸部を起点に、川を遡って水運と共に伝わった形跡はありますが、瀬戸内海を渡って四国の讃岐平野まで伝播することはありませんでした。
神輿屋根型屋台は、18世紀半ば頃に登場し始めます。
播磨祭礼では、屋台が席巻する以前、花形は芸屋台であるだんじりでした。
魚吹八幡神社では、その伝統を現在も受け継いでいます。また、松原八幡神社では、享保から宝暦の頃に狂言を披露するだんじりが主役であったことが、絵馬や祭礼絵巻に描かれていますが、現代では見られません。
• 檜の短い脇棒で担がれる屋台。
• 横並びで屋台の脇棒同士を接触させた状態で担ぐことに適しており、ヨイヤサーの掛け声とともに練り合わせが行われる。
• 練り子は屋台を肩や方に乗せたまま、あるいは**差し上げた状態で大きく揺らす(がぶる)**所作を頻繁に行う。
• 台場差しで有名な浜の宮天満宮(姫路市飾磨区)の屋台は泥台に特徴があり、伊達綱の裾の捻り方はチョーサ型(網干型)の隅絞りと共通する点がある。
• 恵美酒宮天満神社(姫路市飾磨区)の屋台も泥台に特徴があるが、両社の氏子屋台は練り合わせ型を基本としている。
• 練り合わせ型の屋台では、原則としてチョーサー(網干型の差し上げ)は行われない。
• 屋台を持ち上げる際、シーソーのように前後に数回傾けてから肩に入れて持ち上げるのが一般的。
• 妻鹿地区の胴付きでは、数回持ち上げた後、一斉に肩に入れる手法が見られる。
• 主に姫路市白浜町の松原八幡神社をはじめ、飾磨区の神社で多く見られる。
• 高砂市から姫路市中部、北は竹田町まで分布している。
• この地域では、屋台のことを「やっさ」と呼ぶ傾向がある。
• 松原八幡神社(姫路市白浜町)
• 大塩天満宮(姫路市)
• 荒川神社(姫路市井ノ口)
• 恵美酒宮天満神社(姫路市飾磨区)
• 浜の宮天満宮(姫路市飾磨区)
• 津田天満神社(姫路市飾磨区)
• 英賀神社(姫路市飾磨区)
• 高砂神社(高砂市)
• 高欄下に桝組を腰組し、高欄で担ぎ棒より上部が高く、泥台は低く作られている。
• 魚吹八幡神社(姫路市網干区)や富嶋神社(たつの市御津町)で共通して見られる形態で、「網干型」「チョーサ型」と分類される。
• 上下運動である**チョーサ(差し上げ)**が映えるように設計されている可能性が高い。
• 本棒・脇棒は練り合わせ型屋台よりも長く、閂(かんぬき)はない。
• 田井の屋台などでは、脇棒に吉野杉などしなる素材を使用し、高くチョーサするための工夫が施されている。
• 長い担ぎ棒と宙に舞うように高く放り上げられる屋台は、魚吹八幡神社屋台の大きな魅力。
• 練り子が屋台を担いだまま数十メートル走り、差し上げを行うのが名物。閂がない理由の一つには、長距離を勢いよく走るための工夫があると考えられる。
• 掛け声と共に、専ら**チョーサ(差し上げ)**を行う。
• 最近では、チョーサ型屋台でも灘型・飾磨型屋台の練り方を取り入れる地区があるが、屋台同士の練り合わせは行わない。
• 差し上げの際、泥台の足が地面につくことはあまり好まれない。
• 魚吹八幡神社の氏子は屋台のことを「やったい」と呼ぶ。
• 主に姫路市網干区以西に分布する。
• 魚吹八幡神社(姫路市網干区)
• 富嶋神社(たつの市御津町)
• 春日神社(たつの市御津町)
• 蛭子神社(たつの市御津町)
• 荒神社(赤穂市)
屋台の重量ですが、先代の松原屋台で「約2トン」と表記されています。胴突きで有名な妻鹿屋台は 2.5トンという噂もあります。
練り子が50人〜60人程度で担ぐ計算で、2.0トン屋台なら、一人当たり33 kg〜40 kgの負荷となります。
播磨地方の屋台の平均的な重量はわかりませんが、1.2トン〜1.5トンの範囲に多くの屋台が入るのではと思われます。
最近では屋台は大型化、重量化する傾向があるように思います。特に、浜の宮天満宮の天神屋台は屋根、露盤、伊達綱どれをとってもサイズが最大級です。もしかしたら、2.5トン以上あるかもしれません。
屋台屋根の頂上に飾られる。宝の珠に準えた装飾。カプラ(宝珠)・ガキ・伏鉢からなる。仏教の建築物由来ではないかと思われる。
飛龍、鷲、鳳凰、唐獅子、麒麟、鯛など、躍動感溢れるデザインが多い。
剣を表し、知恵・破邪・降魔の意味を持つ。
神社のシンボルを表す。八幡神社では巴や龍が、天満・天神神社では梅鉢が多い。村のシンボルを表す。
布団太鼓屋台特有の錺金具である。播磨地方では反り屋根屋台にあしらわれることが多い。一面に対になるように配置されることが多いが、中央に大きなものを一つ設置された屋台もある。前後,左右でそれぞれ違うモチーフがあしらわれることもある。海老、鯱、飛龍、青龍、唐獅子、鷹、鷲、鳳凰、孔雀、扇などのデザインがある。
瑞祥(吉兆)の動物(虎・孔雀・千鳥・兎・十二支)や草木、退治ものや武者、龍など題材は多岐にわたる。
灘型では二段が多いが、反り屋根屋台やチョーサ形では三段が多い。
平屋根太鼓特有の彫刻である。布団台と狭間の間に位置し、布団台の裏側に貼り付けられており、4面ある。
元来、神棚ではまさに雲の模様が彫られており天界が表現されている。屋台でも雲を見上げるように真下から出ないと見えにくい。
屋台では、雲のデザインから発展して他の彫刻同様、龍・鳳凰・植物など様々なデザインがある。
前面に錺金具を施す場合と、幕掛け金具の座金のみの場合がある。井筒端には「紋」と同じく、神紋や各村のシンボルが表されることが多い。
男柱金具はよく見えるところなので最近では凝ったデザインのものが増えてきた。鯉・龍・海老・梅・鶴亀など。
図柄は古いところで龍や獅子、時代とともに人物ものへと変化。神話や英雄武者物も多い。
歴史上の有名なシーンが描かれることが多く、その種類は100を超えると言われる。中国者では漢楚軍談・三国志、日本ものでは古事記・御伽草子・太平記・源平盛衰記などがある。中には、その村固有の伝統やゆかりの人物の言い伝えを表したものがある。
正隅とも。角(隅)を清めると同時に守護する役割を担う。通例、獅子や龍が多い。
高欄下の彫刻である。腰彫り、腰枡とも言う。特に、高欄下に厚みのあるチョーサ型屋台でその装飾や彫刻が凝っている。
練り合わせをしない西方の屋台は特に咥え(くわえ)とも呼ばれ、獅子や龍がまさに脇棒を咥えているような表現で、全体に亘り彫られている。一方、練り合わせをする屋台では唐草や波に千鳥などシンプルな意匠が多い。ただし、浜の宮天満宮の屋台では、この咥えがある。これは台場差しにより高く持ち上げる際に、伊達綱の裾と同様に、見せることに重点を置いた結果かも知れない。
龍や虎、歴史上の戦記物が刺繍されている。面積が大きい分、屋台を華やかに飾る大きな要素のひとつである。
練り合わせ型屋台の特徴のひとつである。チョーサ型屋台では、乗り子の衣装が豪華であるため、高欄掛けはクッション程度の簡素なものである。
名の通り、伊達の綱だが先につけられた房が踊り、屋台練りを躍動的に見せる。「がぶり」などにより、よく揺らすことで氏神への祈りを表現しているという見方もある。
主に、チョーサ型屋台で見られる。動的な伊達綱と違い、静的な隅絞りであるが、各村で模様が違い、絹でできているため雅な印象を与える。
古くは悪霊や鳥や敵を脅し、退けるために使われたといい、また、神を崇め、神聖なものとして扱われたという。屋台はその太鼓がないと動かない。遠くからでも太鼓の音がすると、人々は祭りを知る。
白木で完成した屋台は、通例数年祭りで練られたあと、漆塗りを施す。