1F 揮毫
1F 揮毫
揮毫,これを瞬時に読めたら,漢字検定,上級の部類だ.ちなみに私は,しばらく考えて,結局Google先生のお世話になった.きごう,辞書的には筆をふるうことの意で,書画をかくこと(広辞苑)である.
この書は白石和紙に書かれている.宮城県白石市周辺で作られる白石和紙は,伊達藩に古くから伝わる伝統工芸品でありながら,後継者不足となり,最後の伝承者が亡くなられたあと,まわりの人たちがなんとか技を受け継いで,いまにつなげている.白石和紙には,地域の歴史と風土,そして人々の思いが込められている.
書は工学研究科 化学・バイオ系の 猪股宏教授 にお願いすることははじめから決めていた.東北大学の中で,この書をお願いできる方は先生以外には考えられなかった.そして,
猪股先生は,環境科学研究科の設立にも関係し,たいへん近しいところにいらっしゃるので,我々の思いを口にしなくても通じる.先生は,審念熟慮,試行錯誤のすえ,墨の濃さ,文字の配置,筆の運びなどを決められ2020年の正月にこの書をしたためた.
この字には力があり,そして絶妙なバランスだ.くずれそうで,持ちこたえ,次への躍動感がある.
白石市に2m四方の和紙の製作をお願いにいったとき,劣化しやすい西洋紙に対して,白石和紙は百年もちますねという私のお世辞めいた浮ついた感想に,この和紙の製作に携わってくれた阿部桂治さんが,静かにおっしゃった.
「いえ,千年もちます.」
歴史,伝統,地域,未来,この白石和紙の揮毫には,そんな思いが込められている.
白石市にある,「蔵富人」で,白石和紙の歴史や,新しい作品などを見ることができる.是非訪れてみていただきたい.場所は・・・,Google先生に聞いてみるとすぐわかる.