-翌日の放課後-
ココア「みんなー!今日から地学オリンピックに向けて準備をしていくよーっ!」
全員「おーっ!」
シャロ「ってなんで私達も呼ばれてるのよ!」
ココア「えへへ〜」
シャロ「えへへ〜じゃないわよ!(まあリゼ先輩に教えてもらえるならいいか〜)」
メグ「ところで、地学オリンピックってなんだっけ〜」
チノ「地学の試験を解く競技科学と呼ばれるものです。詳しくは前回の話の記録を見てくださいね。」
メグ「地学か〜、できるかな〜」
ココア「お姉ちゃんにまっかせなさ〜い!というわけでリゼちゃんお願いっ!」
リゼ「人任せかーい!まあいい。みんなビシバシ鍛えていくぞ」
一同「ひっ(汗)」
リゼの地学基礎講座 -固体地球①-
リゼ「まずは固体地球という大事な分野だ。学校の地学でも一番初めに学ぶことが多いな。チマメ!地球の半径と一周の長さがそれぞれどのくらいか知ってるか?」
マヤ「はいは〜い!そんなの簡単だよ!地球の半径は約6400kmで一周は約40000kmでしょ?」
リゼ「さすがマヤ!じゃあ赤道と地球の中心を結んだ赤道半径と、極と地球の中心を結んだ極半径、どのような長さの関係があるかは知ってるか?」
マヤ「えっと…それは…」
リゼ「そういえばこれは中学の理科では勉強しなかったかもしれないな。なら高校生組はどうだ?」
千夜「…(目を丸くして固まる)」
ココア「どうしよう、千夜ちゃんが固まっちゃってるよ」
シャロ「千夜は国語とか歴史とかのほうが得意なのよ。リゼ先輩の質問の答えは赤道半径のほうが約20km長い、ですね、せんぱい!」
リゼ「さすがシャロ!どうしてそうなるかの説明もみんなにしてくれるか?」
シャロ「地球は自転をしているから赤道方向に遠心力で引っ張られるのよ。だから円よりも少し赤道方向に長く、極方向に潰れた形になるの。」
ココア「つまり大福みたいなかたちってこと?」
千夜「大福?」
リゼ「そうだ。まさに地球は大福のように縦に潰れ横に長い形をしているんだぞ。とは言っても6400km近くある半径が縦横で20kmしか違いがないんだから大福ほど潰れてはいないということに注意しような!あとでみんなで大福でも食べるか?」
ティッピー「チノいかん!そんなもの食ったら虫歯になるぞ!」
チノ「おじいちゃん、うるさいです。」
リゼ「さて、いま赤道半径と極半径の話をした訳だが、この2つの関係をある数値で表すことができる。この数値を偏平率と言う。」
千夜「偏、平、率、…どれくらい平らかってことかしら?」
リゼ「千夜!そのとおりだ!偏平率は楕円が円に比べてどれほど平らな(潰れた)形かということを表すぞ!」
チノ「ちなみに今ここでは偏平率と書いていますが、本当は扁平率と書くんですよ」
リゼ「し、知らなかったぞ…!」
ココア「さすがチノちゃん!私の自慢の妹だね!もふもふ」
チノ「やめてください!」
リゼ「さて、じゃあ大福の偏平率でも求めてみるか!千夜、甘兎庵から大福とってきてくれないか?」
千夜「もうあるわ♪」
シャロ「なんで制服のポケットに大福が入ってるのよ!」
リゼ「まずは偏平率の求め方の公式を教えるぞ!」
偏平率の公式
(但し偏平率をf、赤道半径(長半径)をa、極半径(短半径)をbとする。)
ココア「早速この公式を使って大福の偏平率を求めてみよう!千夜ちゃん大福貸してっ!」
千夜「はいどうぞ〜。これ、普通の大福と極半径と赤道半径を求めやすいように輪切りにした大福のセットなの〜」
ココア「わーい!ありがとう!!」
シャロ「輪切りにした」
チノ「大福って」
リゼ「なんだ?」
メグ「えーっと、上から見るとまんまるだからこっちは円と考えられるね。断面を見ると赤道半径が4.51cm、極半径が3.26cmだね」
ココア「きちんと最小目盛の10分の1まで目分量で読んでてえらいね!」
シャロ「そこまで精度必要?」
ココア「今のメグちゃんの測定結果を計算すると偏平率は約0.28だね!」
大福の断面図
リゼ「計算速いな、さすがココア!」
ココア「そうかな〜?」
リゼ「ところでココア、地球は赤道半径が約6378km、極半径が約6356kmなんだが偏平r…」
ココア「えーっと、偏平率は約0.003449だよ!」
地球の断面図(上が北)
チノ「速い…!!」
ココア「そうでもないよ〜」
リゼ「地球と大福の偏平率、比べるとどうだ?ってお前らー!大福食べてるじゃないか、話を聞けー!!!」
チノ「地球のほうが偏平率が0に近くて円に近いということがわかりますね(モグモグ)」
リゼ「さっ…さすがチノ、正解だ。偏平率というのは0に近づくほど円になり、1に近づくほどつぶれた楕円になる。地球はやはりほとんど円といっても差し支えないということがわかるな。とはいっても多少の差は出るぞ~。その話はまた今度。今日は偏平率について勉強できたことだしこのへんでお開きにするか?」
千夜「そうそうリゼちゃん、聞きたいことがあるんだけど…」
リゼ「なんだ〜?」
千夜「重力と引力、何が違うんだっけ?この前のテストで同じ意味で使ったら減点されちゃって」
メグ「言われてみるとわからなくなってきたかも~」
リゼ「おいおい、その2つの意味は混ぜちゃだめだぞ…よし、今日は最後に重力と引力の説明もしておくか!」
一同「はーい」
リゼ「まずは引力について説明しよう。みんなは万有引力って知ってるか?」
マヤ「はーい!次のような式で表されるものだよね!」
万有引力の公式
(但し万有引力の大きさをF、2つの物体の質量をM, m、2物体間の距離をr、万有引力定数をGとする。)
リゼ「そうだ!これが何を表してるかは知ってるか?」
マヤ「質量Mとmの物体の間の距離がrであるときにそれに働く引力!」
リゼ「正解。引力というのは質量のある物体が複数あるときに発生する、物体同士が引き寄せ合う力のことなんだ。もちろんあまりにも物体の距離が遠いと目に見える結果は出ない。」
千夜「なるほど」
リゼ「じゃあ宇宙空間に質量Mの地球と質量mの人間がいてその様子を宇宙から見るとする。その時人はどうなる?」
千夜「人が地球に引き寄せられるわね。」
リゼ「そうだな、これはつまり双方が引力で引き寄せられているということだ。人間が地球に立っていても浮いていても本当ならば力の様子は変わらないはずだが、実際には完全に同じとはならない。というのも、人間が地球に立っていると地球とともに自転の運動をしているので、遠心力を受けることになる。遠心力は回転の外側に働く力だから、地球上の人間が地球に引っ張られる引力を弱める向きに働くんだ。この引力と遠心力を足した力(合力)を重力と呼ぶ。つまり重力=引力-遠心力だな。だから引力と重力は同じように扱ってはいけないんだ。さらに、重力は引力と遠心力の合力であるから力の向きが引力とは一致しないんだ。また今度図で説明する。ちなみにここでは人間を例にしたが、そのほかの物体も同じだぞ。」
ココア「ってことは回転の速度が相対的に遅い(つまり遠心力が小さい)極付近は重力が大きくて、回転の速度が速い(つまり遠心力が大きい)赤道付近は重力が小さいということだね!」
リゼ「そうだ。ただ遠心力による差はそこまで極端に大きくはないから気にする機会もそんなにないとは思う。」
千夜「なるほど~。リゼちゃんわかりやすい説明ありがとうね」
-Rabbit House前で見送り-
ココア「みんな、今日は来てくれてありがとう!」
チノ「ありがとうございました」
マヤ「みんなで勉強するのってなんか楽しいね!」
シャロ「最初は、"なんで私がここに"と思っていたけど、こういう勉強会も悪くはないわね」
メグ「あれ、あそこに見えるのは北極星じゃない?」
リゼ「おっ、そうだな~。ところで北極星の高度はどれくらいか、お前ら知ってるか?」
千夜「これは知ってるわ♪観測する地点の緯度とほぼ一緒なのよね」
チノ「そうなんですか!?なぜですか?」
ココア「北極星は地軸の北極側の延長線上にあるでしょ。だから北極では高度90度の位置に北極星が見えるの。逆に赤道上で地軸と平行な向きを見るとそれは高度にして0度になるでしょ?その間の緯度についても考え方は同じだよ!とはいっても口で説明するだけだとわかりにくいからあとで図を書いて一緒に考えてみようね。」
チノ「ココアさん、ありがとうございます。」
リゼ「ちなみに"北極星 高度"とインターネットで検索すると図がたくさん出てくるぞ」
ココア「そうなの?私機械は苦手だから知らなかった!後で検索してみる!」
シャロ「じゃあみんな帰りましょ」
一同「ばいば~い」
ココア「地学オリンピックの申し込み、もうすぐ期限だから忘れないようにね!」