第四話 新たな剣

「ただいま〜」

帰宅した藍華は、鞄を片付け自室に籠る。

「さてと、続きやるぞっ!」

机の前に座ると傍らに置いてあった箱手に取った。

箱の中身は組み立て途中のHG Revive版のフリーダムガンダム。

「後は・・・」

近くにあった工具箱からニッパーを取り出すと、ランナーから丁寧にパーツを切り離していく。

「これをこうして・・・」

切り離しては組み立てる作業を繰り返す。

作業開始から数時間たった頃、

「出来た!!」

机の上には一つのガンプラが立っていた。

本体の変化は、所々の色が青色に変わっている程度だが、フリーダムガンダムの特徴である大きな翼は無くなっていた。

代わりに、翼のあるべき場所には四つの剣が備え付けられていた。

「うーん・・・よし、まだ時間あるから試してこよう」

藍華は夕飯まで暫く時間があるのを確認すると、ダイバーズを起動する。

出来たばかりのガンプラをスキャナーに設置。

スキャンの完了を確認すると藍華はダイバーズにログインする。

交流広場に降り立ったアイカは周りを見渡す。


交流広場にはそれなりに人がいる。

少し先の方に2人の少年と1人の少女が立っていた。

少年のうち、片方はごく普通の服装だが、もう1人はガンダムOOに出てくる刹那の格好をしていた。

「何!?貴様......リア充かッ!」

「えっ、いや、違......」

「見つけたぞ、世界の歪みを......破壊するッ!」

そんなやり取りが聞こえてくる。

その間、普通の服装をした方の少年に寄り添うように立っている少女は、ただ2人のやり取りを見ている。

流れ落ちる水を思わせるほどに滑らかな黒髪、黒を基調とし、月の模様の入った和服を着ている少女だった。

(あの子もダイバーなのかなぁ・・・それにしてもあんな服、ガンダム作品で出てたっけ?)

「燃える展開、待ってたぜ!」

少女を連れた方の少年がそう言うのが聞こえたので、そちらに視線を戻すと「来い......ガンプラァァァァッ!」

そう叫びながら指を鳴らして消えていった。

恐らく対戦が始まりコクピットに転送されたのだろう。

「元気だなぁ」

2人の少年のやり取りを見ていたアイカの口から知らぬ間に呟きが漏れていた。

その呟きが聞こえたのか1人残された少女がこちらを見る。

(綺麗・・・)

少女の顔が余りにも綺麗だった為、見とれるアイカ。

が、少女と目があっている事に気がつき軽く会釈だけして少女の横を通り過ぎ立ち去ろうとする。

すれ違い際に表示されている観戦ウィンドウに名前が写っていたのが見えた。

「サツキ」

恐らくそれが彼女の名前なのだろう。

(まぁ関係ないか)

次に会うのかも分からないし、と思い対して気にも止めなかった。

広場の中心当たりまで来て自分がログインした目的を思い出し対戦相手を探し始める。

ふと、広場の端の方に1人の少年が居るのを見つける。

割とガッチリとした体型をした少年だ。

ダイバーズを始めて間もないのか、時折辺りを見回す素振りをしている。

少年の頭上に対戦相手募集のアイコンが出ているのに気がついたアイカは(彼に対戦を申し込んでみよう)と少年に近づく。

すると少年も近づいて来るアイカに気が付いたのかこちらに視線を向けた。

近くまで行き「もし良かったら対戦しませんか?」と声を掛ける。

「俺でいいのならもちろん」と少年から返事が返ってきたので、メニューを開き目の前の少年に対戦を申し込む。

少年の名前は「ゴウ・ウェント」

その名前を確認すると同時に少年、ゴウが対戦認証をしたらしく視界が切り替わり始めた。

視界がハッキリするとアイカは、コックピットに座っていた。

手を軽く握ったり開いたりした後、大きく深呼吸しレバーに手をかける。

「さぁ行こう、フリーダム。 アイカ・ライト、 フリーダムガンダム行きます!」

言い終わると同時にレバーを前方に押し出す。

カタパルトが動き出しモニターの外の光景が一気に後ろに流れる。

カタパルトの終わりにたどり着くと同時に、フットペダルを踏み込み機体を飛び立たせる。

「宇宙かぁ・・・」

カタパルトの外に広がっていたのは広大な宇宙だった。

「戦いづらいなぁ・・・」

実体剣をメインにして戦うアイカとしては地面が無く、脚の踏ん張りの効かない宇宙は苦手意識があった。

「まぁやるしかない!」

苦手だからといってステージを変えられる訳では無い

なら今出来ることをやるしかない。

「さてと、敵はどこかな・・・」

ペダルを踏み込み機体を加速させつつ敵機を探す。


暫く移動しているとレーダーに新たな点が現れた。

「見つけたっ」

レバーとフットペダルを操作しアイカはフリーダムガンダムをレーダーに現れた点、ゴウが居るであろう宙域へ機体を向かわせる。

レーダーに映る点に近づく程、周囲に様々な物が現れ始める。

隕石などからモビルスーツ、戦艦の残骸など宇宙ゴミと言われるような物だった。

恐らくデブリ帯なのだろう、フリーダムガンダムのサイズを上回るデブリも出てきた。

いくらモビルスーツと言えど高速でデブリと激突すればタダでは済まない。

アイカは機体のスピードを落としつつ機体を移動させる。

いくつめかの大きなデブリを迂回した直後、機体のそばをビームが通り過ぎた。

「いた!」

ビームが飛んできた方向。

左前方、1機のモビルスーツがライフルを構えてこちらを見ていた。

フライトユニット装備のレッドフレームだった。

部分塗装を施してあるらしく所々、本来の色と違う黒と金色が入っている。

構えたままのレッドフレームが再びビームライフルを撃ってきたので、アイカもレッドフレームをロックオンすると仕返しとばかりにビームライフルを撃つが

「当たらない〜!」

「当たらねぇ・・・」

どちらも攻撃も的を捉えられなかった。

「もう!!エイラちゃんはちゃんと当たるのに!」

そう叫びつつアイカはレバーを操作する。

フリーダムガンダムがライフルを投げ捨て、背面のウェポンラックに装備されていたバスターソードを抜き取る。

ゴウも同じくライフルによる攻撃を諦めたらしくライフルを捨て、腰に装備されていた日本刀、ガーベラ・ストレートを引き抜き構えていた。

レッドフレームとフリーダム

2機がそれぞれの得物を構えて睨み合う

「さぁ!ここからが本番だよ!」

そう言うとアイカは、レバーを一気に押し込む。

一気に加速し距離を詰めたフリーダムガンダムがバスターソードを振りかぶるとレッドフレームに切り掛る。

対するレッドフレームもガーベラ・ストレートを振るいバスターソードを受け止める。

剣と剣がぶつかり合い火花を散らす。

2機はそれぞれ全力の力を出し相手を押し切ろうとするが機体のパワーの差は無いらしく拮抗状態が続く。

恐らく単純な力勝負では決着はつかないだろう。

「こうなったらっ」

アイカはレバーを引き鍔迫り合いを辞め距離をとると、バスターソードを背面のラックに戻し背中のラックから、ナイフを2本抜き取る。

「こっちから行くぞ!」

ゴウはそう言うとレバーを一気に押し込む。

フリーダムがナイフを構えた途端、レッドフレームが加速し距離を詰め斬りかかる。

アイカは振り下ろされるガーベラ・ストレートを右手に持ったナイフで受けとめると、左手に持ったナイフで反撃とばかりにレッドフレームを切りつける。

レッドフレームはそれを体をずらす事で躱し、ガーベラ・ストレートを受けとめていたナイフを弾くと、フリーダムの側面に回り込もうと機体を動かす。

「そう簡単には!!」

アイカはレッドフレームを回り込ませないよう、レバーに付いていたボタンを押し込む。

フリーダムガンダムの頭部に内蔵されたバルカンが近づくレットフレームに迎撃の弾丸を放つ。

放たれた頭部バルカンを警戒してかレッドフレームは回り込むのを諦め距離を取る。

「この機体だとバルカンすら危ないからな」

レッドフレームのコクピット内でゴウは独り言を呟いた。

アストレイシリーズはガンダムSEEDの外伝に登場する機体だが、ストライクガンダムなどと違い実体弾をほぼ無効化するPS装甲は持って居ない上、コクピット周りなどのバイタルパート以外は、機体フレームの殆どが剥き出しなっており単純な防御力は他の機体に比べると低い。

低火力な頭部バルカンすらレッドフレームには致命傷になりかねないのだ。

「さて、どうやって攻めようか」

ゴウはどうやってフリーダムを撃破しようかと頭を働かす。

現状、操縦技術はほぼ互角。

腕が互角なら機体性能に頼るしか無いのだが、機体性能に関してPS装甲がない分フリーダムの方が上だろう。

「となると・・・」

一瞬の隙を突く。

一旦距離を取ったレッドフレームを追いかけるフリーダム

それぞれがスラスター光を出しながら宙を駆ける。

二つのスラスター光が交わる度にそれぞれの武器がぶつかり合い火花を散らす。

幾度目かの切り合いで両方の得物が敵を捉えた。

レッドフレームのガーベラ・ストレートがフリーダムの左腕の肘の関節を切り裂き、フリーダムのナイフはレッドフレームの右足を切り裂いていた。

フリーダムが片手を失ったのを好機と見たのか、レッドフレームがガーベラ・ストレートで斬りかかって来る。

「この!」

フリーダムは右手に持ったナイフでガーベラ・ストレートを受け止めると、破損した左腕でガーベラ・ストレートの側面を殴りつける。

運良く脆い所を突いたのか、ガーベラ・ストレートが中程から折れた。

ガーベラ・ストレートが折れた事にさすがに慌てたのか、レッドフレームが距離を取った。

チャンスは逃がさないとばかりにレッドフレームに迫るフリーダム。

レッドフレームは半分になってしまったガーベラ・ストレートを鞘にしまい、バックパックからビームサーベルを抜き取ると構える。

フリーダムが右手に持ったナイフを突き出すがレッドフレームはそれをビームサーベルで受け流し、左足で回し蹴りを繰り出す。

レッドフレームの繰り出した回し蹴りはフリーダムの側頭部に直撃するがPS装甲のおかげか損傷は頭部アンテナとバルカン、センサーの不調だけで済んだ。

「お返しだ!」

ビームサーベルに受け流されてしまったナイフから右手を離し、お返しとばかりにフリーダムは腰のレールガン基部、そこに備え付けらてたサーベルラックに手を伸ばすと、基部に取り付けたままのビームサーベルからビーム刃を形成する。

しかし、形成されたビーム刃はレッドフレームの脇腹を抉るにとどまる。

ビーム刃を出したままのビームサーベルをラックから引き抜き身構えると

同じくレッドフレームもビームサーベルを構える。

アイカはコクピット内にある機体の損傷具合を示すモニターを一瞬だけ見る。

左肘から先が無くなっている以外には先ほど回し蹴りが直撃した側頭部のセンサーの感度が少し低いのと頭部バルカンが1門潰されている以外の目立った損傷はない。

まだ戦闘は続けられるが、そろそろ決着を付けなければならない。

夕飯前の少しの時間でログインしているため、あんまり長引かせたくはない。

1度大きく深呼吸をして気を引き締める。

「よしっ」

レバーを押し込み一気にフリーダムを加速させる。

間合いを詰めると、レッドフレームに対し上段からビームサーベルを振り下ろす。

レッドフレームがそれを受けとめる。

一瞬の鍔迫り合いの後、ビームサーベルを引いたフリーダムが今度は横薙ぎにビームサーベルを振るうが、レッドフレームはスラスターを吹かし機体を上昇させることで回避、フリーダムの頭上で一回転した後、左足でかかと落としを繰り出す。

かかと落としがPS装甲の施されてない関節部に当たったらしく残っていた左腕の肩関節が破壊される。

しかし、左腕が壊されるのと同じタイミングでフリーダムの振るったビームサーベルはレッドフレームの左脚をしっかりと捉え切断していた。

両足を切断された状態のレッドフレームが近距離からタックルを繰り出すが、サーベルを振り終わった直後のフリーダムは避ける事もいなす事も出来ずに弾き飛ばされる。

「くっ」

タックルの衝撃で激しく揺れるコクピット内でアイカは歯を食いしばる。

衝撃でフリーダムの右手からビームサーベルが離れる。

「かはっ」

今度は後ろから来た衝撃に襲われるアイカ。

当たりを漂っていた隕石に背中から激突したらしい。

意識が朦朧としかけるのを頭を振って堪えてからアイカがモニターに映るレッドフレームを見ると、ビームサーベルを構えこちらに突撃して来ていた。

慌ててフットペダルを踏み込み機体を上昇させると、ギリギリで交わしたビームサーベルは、先程までフリーダムがいた位置を通り抜けると、フリーダムが激突した隕石に突き刺さる。

回避行動からそのまま体勢を立て直そうとするアイカだが、ゴウは突き刺さったままのビームサーベルを引き抜くとすぐに距離を詰めて来た。

何とか体勢を立て直したアイカが迎撃のために残りの1本のビームサーベルを引き抜くが、どこかのタイミングでぶつけたのか、使い物にならなくなっていた。

さらに背面のラックに付けていたバスターソードも背面のラックごとどこかに行ってしまっている。

恐らく隕石に激突した時に破損したのだろう。

現状、アイカの手元には近接武器が一つも無いという非常事態だった。

だが、レッドフレームは止まらずに突っ込んで来る。

「あぁ!!もう!!」

ふと、視界の端に見えていた"何か"に気がついたアイカはコクピット内で叫ぶと手元のレバーを操作し、両腰に付けていたレールガンをパージするとレッドフレームに投げつけた。

ゴウは、飛んできたレールガンを避けることはせずレールガンを切り裂く。

しかし、アイカが1発も撃たずにいたため大量に入っていた弾丸が誘爆、レッドフレームは火球に包まれる。

全身を焦がしたレッドフレームが、漂う煙を腕で振り払いながら火球の中から飛び出し、背中をこちらに向けた"丸腰"のフリーダムに襲いかかる。

「貰った!」

勝利を確信していたゴウが、ビームサーベルを振り向いたフリーダムのコクピットに突き立てる。

その時、ゴウの目に写っていたのは、レッドフレームのコクピットに向かって突き出されるナイフだった。

ビームサーベルとナイフ、それぞれがお互いのコクピットを貫く。

2機が爆発を起こしたのは同時だった。


交流広場に戻ってきたアイカとゴウのそれぞれの目の前にリザルト画面が表示されており、そこには大きくDrawと書かれていた。

双方とも全く同じタイミングで相手にトドメを刺していたらしい。

「なるほど、引き分けか・・・」

ゴウはリザルト画面を見ながら残念そうに呟く。

「そうみたいだね・・・」

「勝ったと思ったんだけどなぁ。

あのナイフはどこから取り出したんだ?」

「あー、あれはね・・・」

ゴウの疑問にアイカは答える。

レッドフレームにレールガンを投げつける直前、アイカの視界の端に写っていたのは、レッドフレームに切られたフリーダムガンダムの左肘から先が漂っている光景だった。

肘先から切られていた左手には切断時に持っていたナイフを握ったままだったのだ。

ナイフを握ったままの左手がすぐ近くにあるのに気がついたアイカは、レールガンを投げつける事で時間稼ぎと目くらましをしつつ左手からナイフを回収していたのだ。

想定よりもレッドフレームの接近が早かったためビームサーベルを防ぐことは出来なかった訳だが、何とか相打ちにまで持ち込むことが出来た。

「なるほど、そういう事か」

ゴウは、アイカの説明を聴いて納得したように頷く。

「なぁもし良かったらフレンド登録しないか?」

とゴウがフレンド登録を申し込んできた。

「えっ? あっ、もちろん!」

少し驚いたがアイカは快く返事をする。

フレンド登録を終えたタイミングで設定していたアラームが鳴った。

「もう夕飯の時間だから落ちるね」

「おう、お疲れさん」

「お疲れ様ー」

挨拶を済ませてアイカはログアウトを始める。

ログアウト処理で狭まってく視界の中、紫色のアクセントの入った黒色のTシャツに、黒のジーパン姿のサツキが紫色の瞳でこちらを見つめているのを見つけた。

声をかけようと口を開いた途端ログアウトが完了してしまう。

現実に帰ってきた藍華がもう1度ログインしてサツキに会うべきか悩んでいると、下の階から母親が呼ぶのが聞こえてきた。

「今行くっ」と親に返事をしたあと、机の上に立っているフリーダムに

「お疲れ様」

と声をかけ自分の部屋を後にする。


席につき、母親と夕飯を食べつつ雑談していると付けてあったテレビにガンプラダイバーズのCMが流れ始める。

「これ藍華のやってるゲームでしょ? 面白いの?」

と唐突に親が聞いてきた。

「もちろん!面白いよ」

返事を返しCMを見続けている親の横顔をみる。

「ガンプラを戦わせるかぁ・・・」

最近こそ作る回数は減ったが藍華の母親もガンプラを作っていた。

戦車や戦艦のプラモデルで培った技術を駆使して作る母のガンプラ。

出来ればそのガンプラと手合わせをしてみたいなと考えながら夕飯のグラタンを口に運ぶ藍華だった。


夕飯を済ませた藍華は、湯船に浸かりながら考え事をしていた。

「せっかく新しいガンプラ作ったし結ちゃんと一緒に戦いたいな・・・ミッションモードにでも誘ってみようかな」

(明日の朝も一緒に登校するはずだしその時に誘おう)と思いながらお風呂に肩まで浸かる。

「明日も学校だしそろそろ寝ようか」

そう呟き、湯船から出ると、体を拭き、髪を乾かす。

寝る準備が整うと自分の部屋に入りベットに寝転ぶと意外な程あっさりと眠りについていた。


気がつくと藍華は公園にいた。

特に理由があって公園に来た訳では無く何となく公園に立ち寄っただけだった。

「そう言えば早く帰ってこいってお母さん言ってたっけ?」

そんなことを考えつつ公園を後にしようとすると1人の女の子を数人の男子が追いかけているのを見つけた。

女の子は砂場に逃げ込むが男子に周りを囲まれ逃げ場を失ってしまう。

「助けなきゃ」

そう思い女の子のいる砂場に足を向ける。

砂場のすぐ近くまで来て女の子の姿がハッキリ見えた。

真っ直ぐで夜空の様な綺麗な黒髪、 整った顔立ち、だが少し暗い雰囲気の女の子。

簡単に言えば一目惚れだった。

女の子を責め立てる男子達に「やめて!」と大声を出す。

突然の大声に驚いたのか、女の子を囲っていた男子達はこちらに振り向くが

振り向いた男子達を無視し、女の子の目の前まで近づくと手を差し出す。

少し驚いた顔をした女の子だが差し出した藍華の手を握った。

女の子の手を握り返すと引っ張り上げ、女の子を立たせる。

「この子は私の友達だからもしこの子が泣くようなことしたら許さないから」

そう力強く宣言すると、諦めたのか男子達は渋々公園から去っていった。

「もう大丈夫だよ」

笑いながら少女の顔を見る。

「あの・・・ありがとう・・・」

涙を溜めた目でこちらを見ながらお礼を言ってくる少女対し

「ねぇ、名前教えて?」

と質問すると

「結、影月 結」

と返ってきた。

「結ちゃんか、私は望月 藍華 宜しくね!」


そこで目が覚めた。

「夢かぁ」

(結ちゃんと初めてあった時の夢なんて初めて見たな)

そんな事を考えつつふと時計を見る。

「うわぁ! 遅刻する!?」

藍華は飛び起きると慌てて支度をしはじめた。