プロローグ
駅前の道を歩いていると、お店のショーウインドーの中に置いてあったモニターに目が止まる。
モニターに映されている映像には白、赤、青、黄色で彩られたロボットが映し出されていた。
「ガンダム...」
そのロボットの名はガンダム
そのガンダムが一つ目の赤いロボットと戦っている。
(確かあの赤いのはザクだったかな……?)
「結ちゃん、何してるの?」
唐突に後ろから声を掛けられる。
「いや...何でもない……」
結と呼ばれた少女は気だるげそうに振り返りながら返事をする。
結が振り向いた先にいたのは学校の制服を着た同い年の女の子。
「藍華は今帰り……?」
「うん、時間かかっちゃった」
藍華と呼ばれた少女は少し疲れた顔をしながら答える。
「おつか・・・」
「あっ、ガンダムだ!」
お疲れと言おうとした結の言葉を遮り、モニターに映し出されている映像に釘ずけになる藍華。
(しまった……これは長くなるか……)
結は少し面倒くさそうな顔をするがモニターに釘ずけの藍華は気が付かない。
仕方なく結もモニターを眺める。
今度はバズーカ砲を沢山積んだザクらしき機体と盾らしきものを4枚持ったガンダムの顔をした機体が戦っていた。
「サイコザクとフルアーマーガンダムだ」
藍華の口から零れた言葉曰くこの2機はそれぞれサイコザクとフルアーマーガンダムと言うらしい。
「何の宣伝……?」
「多分この間話したやつだと思うよ?」
(この間と言うと……弁当食べながら話したあれか……)
「ガンプラ……戦わせるだっけ……」
「そうそれ」
今度から新しく始まるオンラインゲームらしい。
(たしか……)
ガンダムのプラモデル、通称"ガンプラ"をスキャンしてそれを自分自身が操って対戦ができるゲーム
(って言ってたはず……)
インターネットの技術が大幅に進歩しインターネット上に仮想空間を作る技術も発達した現代。
人々は自分自身の意識を仮想空間に「ダイブ」させる事が出来るようになっていた。
ダイブした仮想空間で人々は今までのインターネットの使い方をさらに発展した形で利用していた。
今までのように、検索し様々な情報を閲覧出来るのはもちろん、その情報の疑似体験など様々な事が出来るようになっている。
ゲームもタイブをし自分自身がその場に居るような仮想空間を利用した物
が殆どになっている。
もっとも結が産まれた時点でダイブを行ってやるゲームが主流だったのだが、目の前のモニターに流れている映像もその手のゲームの宣伝らしい。
モニター内の映像に映し出される「近日配信開始!」という文字を傍目に見つつ結は藍華に問いかける。
「やるつもり……?」
「もちろん!」
予想通りの返事が返ってくる
「結ちゃんも一緒にやろうよ!」
とにこやかな笑顔でこちらを振り返ってくる。
(これは予想外……あの笑顔はずるい……)
あの笑顔をされた以上やるしかない
と諦めたつつため息をつく。
近日配信開始と言うそのゲームの名は・・・
『ガンプラダイバーズ』