色彩

身の回りの色が私たちに与える影響

ー色彩の違いによる感じ方の変化を調べようー

実験の目的

 色彩はあまり設計のなかでも意識したことがある人は少ないかもしれませんが、空間のイメージを決定づける重要な要素です。視覚と心理的印象の関係を感じる実験につなげましょう。

基礎知識

 色彩の分野において重要なのは、光に直接色がついているのではなく物理的なある波長の電磁波が目に入ると、脳内で現像し認識しているということです。言葉で説明すると難しいように感じますが、実際に例を見てみましょう。それぞれのペンギンの両目の色は同じはずなのに(本当に同じです)違う色のように感じませんか?これは脳が黄色や青の周囲環境を考慮して色を認識しようとするため起こる錯覚なのです。

 このように色の見え方は、見るタイミングや環境に大きく影響され、その感じ方が私たちの日常生活の気分にも大きく影響しています。

実験テーマの決め方

 私たちは身の回りの「色」に心理的に影響されるため、建築物等には意図を持って色がつけられています。色相や明度、彩度を単に測定するだけではなく、班員や周囲の人に色の印象についてアンケートを行い、統計的に見てみると良いでしょう。

 色の見え方が影響する条件例  周囲の照明の色温度・どんな用途でどんな色が最も多いか、使われているか …etc 

仮説・課題

洋服において同じ機能でも異なるカラーバリエーション、対象者におる大きなイメージがあるのではないか?

テーマ

ユニクロのダウンを対象として、色相、明度、彩度を調査し、カラーの狙いを検討していく。

仮説・課題

色はどのような印象につながっているのか?

テーマ

陽東図書館を対象として、表紙の色による傾向を把握する。

実験器具について

マンセル標準色票

 本実験ではマンセル標準色標を使用して実測を行います。色標は紙でできているので、破いたり雨に濡れたりしないよう丁寧に扱いましょう。

  また色標の色が変わってしまうと正確な測定が出来なくなるので長時間、直射日光にさらさないようにしましょう。

この実験テーマにおけるデータのまとめ方の例

色の3要素を切り口に、結果を多方面から観察してみよう

 陽東キャンパスにおける建物の天井・壁・床の部材の色彩を調査し、その心理的効果を明らかにしようとした。対象は10号館・8号館・図書館・メディア基盤・生協の5つつとし、結果は右のようになった(2015年井城らの過去レポートを参考にした)。

 このような表にまとめただけでは私たちの身の回りの配色を調査したことにはなりません。さらに色の3要素に注目して、特に多い明度はなにか?明度と彩度のバランスはどのようになっているかをグラフ等で明らかにすることを目標としましょう。

 たとえば右の結果は色彩分布図にすると建築部材毎に採用しやすい色の彩度・明度の組み合わせが見えてくるような結果になっています。

色彩の心理効果

面積効果

 視野の中で占める大きさにより色の見え方が異なる現象。

 一般に面積が大きくなるにしたがって明度や彩度が高くなる。建築のではカタログの見本だけみて壁紙を決めたら、思ったより強い色だったなどという形で現れることがある。

距離・大きさ・重量感覚

 同じ距離でも手前に見える色と遠くに見える色がある前者を進出色(赤・橙等)、後者を後退色(青・青緑等)という。また大きく見える色が膨張色、その反対が収縮色といわれ、一般に明るい色ほど膨張して見える。重量は表面の色が暗いものは明るいものより一層重そうに見えると言われる。

考察のポイント

 レポートでは次のような点に着目するとよいと思います。


  • どの色(色相・彩度・明度)が人間の心理にどのような影響を与えているか?

  • その色彩が使用されている目的・意図は何であると考えられるか?