室内熱環境
空間の熱に関する快適性を調べよう
ー室内熱環境を定量的に評価するー
空間の熱に関する快適性を調べよう
ー室内熱環境を定量的に評価するー
私たちの熱の感じ方は十人十色で、同じ部屋にいても暑いと感じる人や寒いと感じる人がいます。どのようにしたら客観的に今の温熱感(熱の感じ方)を数値で示すことができるかを考えます。
真夏のとても暑い日でもコンクリートの建物の中に逃げ込むとひんやりとした涼しさを感じることがあります。これはコンクリートの暖まるのに時間がかかる性質によるもので、真夏の空気が30℃でも建物のコンクリート壁がそこまで熱くなることはありません。
このように私たちの温度の感じ方は単に空気の熱(対流といいます)だけで決まるものではなく、周囲の壁の温度などにも大きく左右されます。
室内熱環境の基礎知識は、ココ(設備工学のために作ったサイト)にも掲載しています。
同じ建物内でも階や方位によって温度や湿度に違いが現れます。窓を閉め切った部屋だと湿気や空気がこもって不快なように、温熱感は測定場所によって大きく異なります。
また測定者の衣服の様子(着衣量といいます)や体質によっても大きく感じ方が変わってきますので、あらかじめ班員に「今の温度は快適かどうか?」とアンケートをとって測定結果と比較すると思わぬ発見があるかもしれません。
熱環境へ影響しそうな条件例 天気・方位・建物階数・窓の開閉状態・隣室の使用状況・周辺の壁の素材 …etc
陽東分室の空気環境が良くないのではないか?
室内熱環境を測定することで陽東分室の快適性を把握、考察する
11号館吹き抜け空間が外部の流入風などにより外気と同様の温熱環境になっているのではないか?
中間期との比較考察を行うことで冬期の快適性を把握する。
この実験ではアスマン通風乾湿計、グローブ温度計、風速計、携帯温湿度計(おんどとり)等を使って温熱環境を実測します。特にグローブ温度計は決して物にぶつけないように注意して取り扱ってください。
なお、グローブ温度計やアスマン温湿度計は温度が読み取れるようになる(時定数に達する)まで少し時間がかかります。測定したい回数が多い場合には複数台借りるなど工夫して実験してください。※研究室には2台ずつあります。
また実験時間が長い場合にアスマン温湿度計の湿球のガーゼが乾いてしまい、正しく測定出来ないケースの失敗が多く報告されています。きちんと条件を変える度に確認しましょう。
相対湿度はアスマン乾湿計で得られたデータを元に空気線図を読み取りましょう。空気線図は空気の状態(湿り具合や熱量)がすべてわかってしまう大切な図ですので、これを機に練習しましょう。
設備工学や環境工学の教科書の巻末付録等として空気線図は掲載されていると思いますので右のやり方を参考に取り組んでみてください。ちなみに設備工学の試験でも出題率高めです。
MRT(Mean Radiant Temperature)とは、グローブ温度計を用いて放射(輻射)効果が等しく均一な周囲表面温度に換算したときの値のことです。この値が気温よりも高いと放射熱によって暑さを感じ、逆に気温よりも低いと涼しさを感じます。次の式で求めることができます。
(ただしMRT:平均輻射温度[℃]、tg:グローブ温度[℃]、ta:室温[℃]、v:気流速度[m/s])
作用温度(Operative Temperature)は気温・気流・放射の3つを総合した温熱指標です。先ほど説明したMRTと乾球温度を元にして簡単に求まり、いわゆる皆さんが体感温度と呼んでいるような温度のことです。次の式で求めることができます。
(ただしOT:作用温度[℃]、MRT:平均輻射温度[℃]、ta:乾球温度(室温)[℃])
PMV(Predicted Mean Vote)温度、湿度、MRT、気流速度の温熱環境4要素の他に居住者の服装、作業状態の影響も考慮できる温熱指標です。とても優秀な指標で空調制御などにも利用されています。
ちょっと求めるのは大変なので詳しくは次のExcelを使った求め方を参考にしてください。
やはり作業量を考慮できるのは素晴らしく、ついさっきまで運動してきた人とずっと事務作業している人では周囲の温度の感じ方も異なります。ちなみにPMVとセットで予測不満率PPD(Predicted Percentage of Dissatisfied)というのもあり、これは今の温度だと何%くらいのひとが不快に感じるかを統計的に予測した値をいいます。
この実験に取り組むみなさんにはこれまで説明した温熱感の指標を簡単に求めることができるエクセルシートを後日LINEかメールでお送りします。この手引きに沿ってPMVなどの計算を行って、レポートに反映・考察してください。
風速を計測していない場合で、建物内で実験したときには風速0[m/s]を値として入力してください。なおMRTを求めるセルに入っている式が、前のページで説明した計算式になっていることも確認しておいてください。
PMVはプログラミングによって計算されているのでセルの内容を変更しないように注意してください。
ただしOTは計算されませんので、同様にエクセルで求めるか関数電卓などを使って別途計算してレポートに付してください。
レポートでは次のような点に着目するとよいと思います。
自分を含む班員みんなの感じ方と実際の数値はどうだったか?
どんなことが原因でそのような暑さ/寒さを感じたと思うか?
季節や時間、条件が変わった場合にはどのようになると思うか?