空気の流れ
人がいるだけで空気は汚染される?
―目の前にあるけど、見えない空気の動きー
人がいるだけで空気は汚染される?
―目の前にあるけど、見えない空気の動きー
汚染というと恐ろしいもののように聞こえますが、在室者がいるだけでCO2濃度は上がります。このテーマではきれいな空気を保つために必要な換気を気流可視化によって検証しましょう。
意識しなくても身の回りには空気があり、絶えず動いています。その流れをコントロールすることはもちろん室内にいる私たちの快適感を左右することになり、また空気清浄を保つ観点からみると必要不可欠なものといえるでしょう。私たちはある空間で過ごすだけで汗などの臭気、衣服からの粉塵、体からの水蒸気などを発しているため大人数が在室する部屋では気持ち悪くなってしまうことがあります。
そのように汚染された室内の空気をまんべんなく外部の新鮮空気と取り換える必要があります。この実験では風速計とバルーンを用いることで目には見えない空気の流れを可視化し、適切に室内外の空気が移動しているかを確認してみましょう。
風の動きは普通目に見えないので他の実験テーマ以上に自分の想像とは異なる動きをしている可能性があります。漠然と実験するのではなく「こうなるはずだ」という仮説(結論の仮定)を立てて実験に取り組むことが、充実したデータを取るために必要です。
実験方法もバルーンの動きを追うというわかりやすい方法なので、ヒトへの影響もイメージしやすいでしょう。しかし、現実の空間にはバルーンを動かすことすら難しい微弱で細かな気流も多く存在しています。実験で調べたいことに併せて風速計もうまく利用しながら、建築物における気流の動きを追いかけてみましょう。
また周囲の観察者の影響で気流が変化しないように注意することも忘れずに。
気流へ影響しそうな条件例 窓やドアの開閉状態・空調機の運転状況・室内の家具の配置・換気扇の有無 …etc
空間に在室者がいることで、二酸化炭素濃度は上昇する。ラーニングコモンズや学習室は、空間が狭かったり、声が漏れないようにドアを閉めたまま使用することが多い。そのため、機械換気や自然換気で空気を動かす必要がある。
実測で気流環境を把握し、適切な換気環境を把握する。
この実験ではバルーンと風速計を用いて実験します。また風速計には温度も表示できるものもあります。
風速計には熱線式と翼車(ベーン)式があります。微風も正確に測るためには熱線式を借りて実験するようにしてください。ちなみに熱線式は0.05~50[m/s]、翼車式は1~50[m/s]の風速を測ることができます。また精度も熱線式の方が高く、一般に普及しています。
バルーンは中にヘリウムガスを入れて使用します。もし空中で停止せず浮き上がってしまう場合は、バルーンのヒモに重りをつけて任意の高さで停止できるように調整してください。
ある窓から出入りする空気の量を概算で調べたい場合には、下の式で簡単に計算することができます。
風量[m3]=平均風速[m/s]× 断面積[m2] × 単位時間[s]
この式を使えば窓から換気された空気の量を推定することもできます。
空気中のCO2濃度など濃度を示したい場合によく使われるのがppm(parts per million)という単位です。これは100万分の1を示します。パーセント(百分率)の仲間の百万分率がppmというとわかりやすいでしょうか。ちなみに大気汚染に係る環境基準では空気中のCO2濃度は1,000[ppm](0.1%)以下にしなくてはいけないことになっています。
ではどの程度換気すれば、十分に良い空気環境(空気質という)が保たれているといえるのでしょうか?このある部屋で1時間あたりに必要な換気量のことを必要換気量といいますが、実は室の用途等を元に多くの指針があります。ここでは1時間あたりの汚染物質発生量を元に計算してみましょう。
問題:右の部屋必要換気量を計算してください。
必要換気量は下の式で表されるので、
これに各値を代入して、
レポートでは次のような点に着目するとよいと思います。
気流(向きと大きさ)の分布をわかりやすくレポートに掲載する。
風速が大きい/小さいところはどんなところだろうか?
温度も考慮して在室者が快適と感じる風速の範囲はどの程度だろうか?