騒音
静かだと感じる空間に音はない?
ー音の大きさから騒音を感じる境目を調べるー
静かだと感じる空間に音はない?
ー音の大きさから騒音を感じる境目を調べるー
騒音は聞きたい音を聞くのに邪魔になる音全般のことを指しています。つまり観測者が何を聞きたいか次第でどんな音でも騒音になり得るため、その感じ方の境目を調べてみましょう。
例えば自宅で窓を開けていて隣の家の音が塀を越えて聞こえてきたり(音の回折)、アパートの壁が薄いために隣室の音楽がうるさかったり(壁体による音の吸収率の違い)した経験は多くの人が一度は体験しているでしょう。
音の正体は空気の圧力変動です。ここで注意したいのは人に聴こえている音の大きさは感覚量であり、ある大きさの音がさっきの音の2倍になったからといって、空気の圧力変動が2倍になったとは限らないのです。この実験で音を定量的に測ることを通して、詳しく考えてみましょう。
騒音は絶対的なものではなく、観測者によって大きく異なります。店内BGMもその時の自分の気分次第ではうるさく感じてしまうこともあるでしょう。周囲を人が歩いているときと誰もいない時ではどれくらい音の大きさは違うのかなど身近なふとした疑問をテーマに選べるとよいでしょう。
また部屋の騒音レベルを計測した場合には音レベル分布図を描くと結果がわかりやすくなります。
音環境へ影響しそうな条件例 騒音発生源の音ボリューム・在室者の様子・空調のON/OFF・周囲の壁の素材 …etc
映画館でのお供といえばポップコーン。しかし、ポップコーンは、本当に映画館で食べるのに適しているのか?
一般に市販されているお菓子6種(ポップコーン+5種)を一口咀嚼し終わるまでの音を測定し、一番大きい音で考察を行う。
足音の大きさは時に不快感を誘う。特に女性の靴は、種類も多く、ヒールなどは音が鳴るイメージがある。
女性靴を対象として、一番音が響くと考えられる、会談で、測定を行い音の響き具合を確認する。
この実験では騒音計を用いて実験します。この機器は周囲の音圧レベル(単位:db)を測定することができ、音に関する補正値を選ぶことができます。実験ではA特性という補正モードを用いることがほとんどですが、詳しくは次節を読んでください。
計測機器は周囲の音の反射の影響をなるべく受けないように地面から1.2m以上、周囲3.5m以内になにもない空間で測定するのが理想です。この条件を満たすのが厳しい場合には反射物が極力ないように努力し、音源にマイクロホンを向けて測定しましょう。
音の大きさの感覚はウェーバーフェヒナーの法則という「人間の感覚で感じられる差は対数的」であるという法則に従います。つまり音源の大きさを単純に2倍しただけでは音の大きさを2倍には感じられないのです。
そこで音圧[N/m2]を対数化したものを音圧レベル・音の強さレベルといい、デシベル[db]を単位としています。
人の聴覚ではおよそ20[Hz]から20[kHz]を聞くことができるとされていますが、物理的に同じ音圧の音でも周波数が違うと感じる音の「大きさ」は異なります。
そこで1000[Hz]の音の音圧レベルを基準にしたラウドネスレベルという指標があります。右がそれをグラフにした等ラウドネス曲線です。
1000[Hz]の時と同じ音の大きさに感じる音圧レベルを結んだグラフで、左のグラフを見ると人は低い音ほど聴こえづらく、高い音の方が小さい音でも聞き取りやすいことが分かります。
ラウドネスレベルは単に音圧という物理的な量で測るのではなく、人の感覚に基づいているため騒音など人の感じ方を測るには有効ですが、測定するとなると難しくなります。
そこで実際には騒音計で測定した音の周波数毎に重みづけを行い、人間の聴き取る音の大きさに近い状態でデシベル表示します。つまり騒音レベルとは音の大きさをそのまま表示したものではなく、各周波数の音圧レベルを周波数毎に定められた一定の数値(A特性)で補正した値を合計したものなのです。
デシベルは物理量を人の感覚の指標に直したものなので非常に理解しやすいのですが、対数計算されているため足したり引いたりしたい時には複雑になります。
左は暗騒音の有無による補正値を計算した例で、計算結果も対数計算になります。
レポートでは次のような点に着目するとよいと思います。
実際に班員はその音を騒音と感じただろうか?
周囲の音を吸収したり反射したりする原因は何か?
測定は理想的な環境で正しく行われていただろうか?
音は指標算出のために対数計算をしばしば用いますので、慣れていない人はよく教科書などを参考にして取り組んでください。