温湿度変動
周囲の環境の変化を追ってみよう
ー蓄熱・断熱性能による変化を追う実験ー
周囲の環境の変化を追ってみよう
ー蓄熱・断熱性能による変化を追う実験ー
建築にはコンクリートや鉄、木材など様々な材料が用いられますが、その熱に対する反応は同じではありません。目には見えない熱や温度の変化をロガーを使って追ってみましょう。
石やコンクリートは熱容量が大きく温めるのが大変ですが、一度暖かくなればなかなか冷えません。対して日本に多い木造の住宅は外の温度の変化によって室温も激しく変動します。これらは建築の熱容量による影響であり、どんな材料で建築を作るかは単純に構造だけではなく、空間の環境にも影響するということです。
ある空間における室温の変動は、空間を構成する部材からの熱のやりとりを見ると一目瞭然です。熱のやりとりは集熱・断熱・蓄熱に主に分類されます。とはいえ数時間前の室温から今どのくらい変化したかを体感で確認するのは至難の業。長期間、一定間隔で温湿度を測定できるロガーを使って確認してみましょう。
温湿度変動の基礎知識は、ココ(設備工学のために作ったサイト)にも掲載しています。
温湿度変動の実験はテーマ設定がとても大切です。むやみに測定場所を決めたり、なんとなく日常生活の変動を測ったりするだけでは考察を書くことが難しいでしょう。あらかじめ湿度や温度に影響する因子を想定し、こういう変動になるだろうという予測をもってテーマを決めましょう。
熱環境へ影響しそうな条件例 建物の構造・外気候の様子・室の用途・測定する時間帯・湿気の発生源の有無 …etc
空間を構成する構造によって温湿度環境も異なるのではないか?
班員の住宅を対象に実験を行い、構造による温湿度変動の違いを確認する。
8号館3階製図室は長時間利用もある空間の為、休息に適した環境も必要であるが整備されていないのではないか?
中間期(暑い)中間期(寒い)を比較し、時期による差異を確認しつつ快適に休息の取れる環境を温湿度の観点から考察する。
この実験で使うロガーは携帯温湿度計「おんどとり」と言います。一定期間の温湿度変動を測るためにメジャーなセンサですが、取り扱いにはいくつか注意事項があります。必ず一読の上守って下さい。
センサを直達光にさらさないで下さい。放射熱の影響を受けて正確に測定出来なくなってしまいます。
センサには防水性がありません。水がかからないようにし、高湿度な部屋での測定は気をつけて下さい。
急な温湿度変動にはロガーの対応が遅れます。結果が安定するまで5分程度は必要であると心得て下さい。
時間の測定間隔も機器にあらかじめ設定することができます。あまりにも細かすぎる設定間隔だと、グラフを作るときに扱いが不便でしょう。自分の班のテーマに適切な測定間隔で実験しましょう。
ロガーのデータは主に右のようなCSVファイルで出力され、お世辞にもグラフにできるようなデータではありません。左の列から日時・温度・湿度を示しています。
実際にはこれらのデータを10分刻みで平均したりすることで変化が見やすくなります。一般にこのような作業をデータ整形と呼びます。
ロガーから取り出したデータはExcelのHOUR関数やDAY関数を用いると1時間刻みや1日刻みの平均が出しやすくなります。右の図を参照してA列の時刻データから日付や時間を自由自在に取り出してAVERAGEIF関数などでグラフにしましょう。かりやすくなるのです。
またグラフにした後にラベルが不適切な場合も多いです。Excelでグラフを作る場合にはグラフを右クリックすると「データの選択」というメニューがあり、そこでラベルや凡例のデータを選択できます。
ロガーから取り出した生のデータのままでは考察を書く時にも、「何時頃から温度が低下し始めたか」すら目分量で書かざるを得ません。しかし適切な平均化によってよりデータの本質がわかりやすくなるのです。
レポートでは次のような点に着目するとよいと思います。
気象庁などのデータを参考に、実験中の外の気候はどうだったか(室温と外気温のグラフを重ねる)?
どんな時間帯が快適・不快だろうか?
変動の緩やかな時間帯や激しい時間帯を詳細に見てみよう!
この実験は特にデータ量が多く、グラフが雑になりがちです。ひとに「見てもらう」わかりやすいグラフが描けるように心がけましょう。