精神医学 Psychiatry
精神疾患を診断する際の2大診断基準
DSM分類 Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,DSM
米国精神医学会American Psychiatric Association:APAが定めた患者の「精神疾患の診断、統計マニュアル」
歴史的変遷 DSMは米国において作成されたものである その理由は当初、統計情報を集めることであった この様な働きは1840年の国勢調査において1つのカテゴリを調査したことが公には初めてであると考えられている 脳は臓器の中でも最後のBlack boxとされ確たる診断基準Standardなくしては診断も極めて不安定なものになりかねない そこでStandard作成にあたって大規模な統計情報必要とした 前述したただ1つのカテゴリとは「白痴および狂気」に関する情報を頻度として収集する事であった ちなみにそれまでの1880年までの国勢調査におけるカテゴリは「躁病、メランコリー、妄想狂、麻痺狂、認知症、飲酒症、てんかんの7つに分類されていた その後米国精神医学会(当時、~1921年、米国医学心理学会)1917年国勢調査局の案をもとに精神病院間の統一的なより一歩Standardの形式に近づいた案を作成した 従来は国勢調査において精神疾患の動向を把握する目的が強かったと考えられるが この1917年に作成された案は得られた統計情報をもとにそれまでの統計収集に終わらない 臨床的活用を強く意識したものとした その後さらに米国精神医学会はニューヨーク医学会と協力、病院間の相違をなくすことを視野に入れそれまでより比較的統一された精神疾患の病名の制定を行った この後更に疾病名に関する規定は世界大戦の始まりと共に進展した これには軍事と医療の発展のつながりが見てとれる 現在でも使用されている精神科領域の薬剤の中には戦争がその開発に大きく繋がった例は世界各地にある そして退役軍人などに特有の精神疾患等の調査も行われていった スイスの世界保健機構におけるICDはICDー6改訂版まで発表されていた 現在ではDSMと異なり精神科領域を含む多種の疾患に言及しているがこの時(1952年)はじめて精神疾患についてのChapterを追加した、ICD-6では精神疾患については10の精神神経症については9の性格については7のそして行動、知能についてカテゴライズされた しかしICD-6、ICD-7の精神疾患のChaoterはStandardとなることはおろか広く受け入れられることはなかった そのため信頼性のある、臨床診断を推進する手段としての明確な定義の必要性をもとにイギリスの精神科医ステンゲルにより総合的に再評価されているがICD-8、DSM-Ⅱ(Ⅰと変化が大きな変化は見られなかった)にはこの再評価は反映されなかった DSMはその後ICDとの連携を進めていった 1975年のDSM-Ⅲ、1978改訂のICD-9(後述する多軸システムはとりいれられていない)作成にあたたっては緊密に連携して作成がなされた 記述的とされる現在のDSMの形態の特徴が色濃く見えるようになったのも診断基準、多軸システム、病因論を曖昧なものではなく明確にされていったこの頃からであるとされる 上述したように連携し作成が進められてきたICD-9とDSM-Ⅲであるがその異なる点は「目的」にあった ICD-9が統計情報からカテゴリ定義を目指していたのに対しDSM-Ⅲでは ICD-9のように精神疾患をカテゴライスする事を目標とはしなかった 診断基準における明確さ、不一致が見られたためその後のDSM-Ⅲ-R(1987年)への改訂が行われた ICD-9は 欠点が指摘されICD-9-CMへの改訂がなされる つまりここまでの流れからも分かるように19世紀以降疾病分類や診断における精神科領域には診断における確固たるものが他の科と比較すると曖昧としており それが病院間の見解の相違等引いては患者の不利益に繋がるため 国勢調査による膨大な統計情報から診断、疾病名のStandardを作成する試みに多大な努力をついやし その改訂を繰り返してきたと言えるのではないか この様な流れから見ても 今後も(実際にDSMはさらに2011年に5版が発表予定であるし)改訂を繰り返し 診断基準としての精度の向上World Standardとしての確立が行われていくであろう事は予測に反し難いことは言うまでもない
DSM年別変遷 1952年、DSM-Ⅰ、1968年、DSM-Ⅱ、1980年 DSM-Ⅲ、1986年 DSM-Ⅲ-R、1994年 DSM-Ⅳ、2000年 DSM-Ⅳ-TR、2011年 DSM-Ⅴ
ICD International Statistical Classfication of Diseases and Related Health Problems