無断転載禁止 / No part of this site, may be reproduced in whole or in part in any manner without the permission of the copyright owner.
無断転載禁止 / No part of this site, may be reproduced in whole or in part in any manner without the permission of the copyright owner.
tlv log 2024
↑の絵のその後の小話
「わぁ、どうしたの実休さん。だるんだるんじゃない」
畑当番に現れた実休を見て、福島は挨拶もそこそこにそう尋ねた。
「うん…」
当の実休は、伸びに伸びて伸び切った、形の崩れたジャージの上着の袷をさする。
「これはたぶん、さみしい形なんだ…」
困ったような傾きを見せる眉も、柔らかく弧を描く口元も、光忠揃いのすこし釣り上がった目元を隠す前髪もいつもの通りで、刀を握れば力強いばかりのその手は、今はジャージの生地を摘んだりしている。
「…誰かに、ひっぱられたの?」
十中八九違うだろう予想を、福島はそれでも、念のため投げかけてみた。案の定、実休は首を横に振った。伸び切ったジャージは、かわいそうに、今はその伸縮性を失っていて、実休にされるがままになっている。
「宗三と薬研を入れてたんだよ。あったかかった」
「ふたりも入ったんだ…」
「チャックも途中まで閉められた」
「閉めたんだ…」
無理を通して道理を引っ込ませるのは織田の十八番ではあるのだろうが、実休がなんの含みも持たなかったので、福島も何も言わなかった。ただ、伸び切って隙間だらけの上着では、隙間風もひどかろうと思った。
「新しいの買ってもらったほうがいいよ。それまで光忠のを借してもらおう。それは寂しいというより、寒いんだと思うな」
「さむい…」
「そうだよ。実休さん初めての冬でしょう?気をつけてないとすぐ鼻水出ちゃってかっこわるいよ」
ジャージをいじりながら立っていた実休に移動を促しながらそう言うと、実休は少し、むっ、と口元を引き締めた。
「鼻水が出ても僕はかっこいいよ」
光忠の長男が、織田で甘やかされているのは知っている。知っているので、福島は、実休の幼さに水は差さなかった。けれど、
「そうかもしれないけど、そのジャージはかっこわるいかも」
とは、きちんと伝えた。
「…そう……」
これには実休も頷くことしかできず、相変わらず伸び切ったジャージを摘んだり引っ張ったりしながら、福島に続いて歩き出す。
少し冷たい風が吹いて、ジャージの隙間から実休を撫でた。人を模した身体には鳥肌という不思議な現象があって、実休の身体もそれをきちんと再現した。けれど実休の生きている世界ではまだ色々なことが曖昧で、実休は、寒さとさみしさの違いも、鳥肌が警告するのが冷えなのか、向けられる殺気なのかも、よくわからなかった。伸び切ったジャージは宗三と薬研の形を覚えているのに、自分はそれを忘れてしまったようなきもちになって、実休は、何度も何度もジャージのたるみを引っ張った。
~おわり~
5月
なんと大慶くんがきたので、かき直しをさぼってるあれをアップデートしました…
ついっ…Xで見かけた「性癖パネルトラップ」をお借りして
たいっつーで遊んでいただきました!
桑名くんと稲葉さんのサイン関連話をふまえた富田社長と宗三
なんの脈絡もないらくがきたち