安中電機製作所製 AAB-5型
日本無線製 Lumion C1型
これらは、安中電機製AAB-5型、日本無線製Lumion C1型のチューブラー型3極管です。東京電気のオーディオン製品化に追随するように、これらも製品化されました。東京電気のオーディオンと共に、これら3種の3極管が、日本で実用化した最初期の3極管です。
無線技術で大きな成果を上げていた海軍でも、3極管の有用性に注目するようになりました。1914年、海軍造兵廠で独自に3極管を入手し、3極管の調査を開始しました。電気試験所とほぼ同時期に、海軍造兵廠で3極管の実用化に成功し、安中電機製作所と日本無線に3極管を製造委託しました。海軍から製造委託された安中電機は、1917年10月にAAB-5型を製品化しました。日本無線でも、1918年にLumion C1型を製品化しました。
安中電機製作所と日本無線が製品化した3極管は、チューブラー型と呼ばれる物で、東京電気が製造したオーディオンとは異なる構造です。恐らく、海軍が入手、調査した3極管は、チューブラー型3極管だったと思われます。チューブラー型3極管は、1914年に米国Cunninghum社がAudiotronを発表したばかりでしたので、当時の最新型3極管であるAudiotronを海軍が入手し、調査したと考えています。
東京電気がオーディオンを製品化して1年程度の間に、日本国内の3社が3極管の製品化に成功したのは、日本のメーカーに3極管を製造するだけの技術力が備わってきたことを表しています。ただ、真空技術は未だに十分ではありませんでした。
尚、世界的に見て、1920年以前に実用的な3極管を製造することが出来た国は、欧米の数か国と日本に限られ、日本が世界的に見て早期に電子技術を立ち上げてきたことが分かります。
日本無線製 Lumion C1型に貼られているステッカー
保管している日本無線製 Lumion C1型には、左の写真のステッカーが貼られています。同様のステッカーは、展示中の Lumion C1型にも貼られています。