ゆうさんインタビュー

呼ばれたい人称代名詞のために、手話通訳者として

 ゆうです。ノンバイナリーです。セクマイ以外の人には、あまりカミングアウトしていないかも。手話での会話で代名詞は使わず名前だけまたはサインネームで呼んでくださいと伝えることはあります。あとは、Twitter(X)には使用してほしい人称代名詞を書いています。


​〜当事者として通訳をしてみて何か感じることはありますか?


 用語の難しさがあると思います。「Agender(エイジェンダー/アジェンダー)」や「AFAB(エーファブ:生まれた時に割り当てられた性別が女性)」といった言葉自体、普通の通訳者は知らないと思うので。デモに寄せられるメッセージでは、アカデミズム的内容もあったりもします。 

〜当事者通訳のメリット、デメリットはありますか?

 メリットは、メッセージの受容がしやすいこと。フェミニズムやクィアの言葉も膨大。より一般的であろうフェミニズムの主要な言葉でさえ、手話(同時通訳)で適切に表現するのは難しいと思うので、クィアな用語であれば尚更と思う。デメリットは、学ぶ場所が少ないこと。地域の手話講習会でもセクハラや「misgendering(ミスジェンダリング)」 が多々あった。ろうコミュニティと同様、手話コミュニティも狭い世界ということもある。

〜難しかった通訳

 話し手の性別がわからない状態で、「異性との恋愛については〜」「同性との恋愛については〜」といった内容を通訳することがあり、空間を使って表現するのも難しく感じたことがあります。または、早口な話者の通訳の時や法律などの場合専門用語が多い時ですね。医療を含め、熟練の通訳者でないと太刀打ちできないような内容も、LGBTQとかかわる、そこも難しいところだと感じています。 

〜セクマイ大会通訳後のご自身の変化はありましたか?

 大阪の人などつながりが増えたのが良かった。正しい情報をろう者に伝える必要があるので、普通の通訳だともっと適役がいるのでは、と躊躇するがセクマイ関係の話なら、少なくとも内容をより正しく理解していると思うので、やってみたいという気持ちが強いです。

〜通訳以外で、ゆうさんご自身の将来像をどのように描いてらっしゃいますか?  

 メディア関係に勤めているので、手話、ろう文化、セクマイ、ろうLGBTQといった分野についての情報を当事者含め、色々な人に伝えるようにしたい。手話通訳ももちろん大事だけれど、それ以外にも手話やろう者と関わっていく仕事もあると思う。色々な方法。特に自分だからできるやり方で、ろう者、中でもろうLGBTQの人がより良い生活を送れるようにしていきたいですね。 

~LGBTQ+の通訳における人称の表現の重要性について教えて下さい。


​ 手話を学び始めたころ、「手話は女男をわけて表現する言語なので、事前資料にある人物について性別を確認する」というような話を聞いたことがあります。特にLGBTQ+の通訳の場合、一歩進んで、司会が本人に呼ばれたい名前とともに使ってほしい代名詞の確認をするのが良いと思います。


 そうすることで、手話の分からない人は、手話では女男で分かれた表現があることを知れるだけではなく、この場がきちんと性自認を尊重した通訳がされる場であると知ることができます。通訳者側からみると、普段の癖で女男二元的な表現をしてしまうことがあります。また、トランスジェンダー(ノンバイナリーの人も含む)の中には、女性や男性といった代名詞を好む人もいますが、参加者全員の名前と代名詞もその場で覚えることは難しいです。リアル開催であれば名札、オンラインであれば表示名を「呼ばれたい名前、代名詞」にしてもらえると、うっかりミスを防止した通訳環境が作れます。このように通訳者および通訳の利用者の双方が安心できる場が作れるのです。