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cosα法のせん断応力測定機能と統合することで,モールの応力円は可視化ツールから応力状態を推定する解析ツールへと拡張された。
モールの応力円リバースは、複数方向から実測した垂直応力σとせん断応力τを用いて主応力を推定する特許技術(特許第7513234号)です。本ページでは、cosα法との相性の良さ、多方向測定による誤差相殺、円フィッティングによる精度向上など、この手法の“技術的な仕組み”を中級者向けに解説します。
MSCR(モールの応力円リバース)は、cosα法によって複数方向で測定した垂直応力とせん断応力から、主応力を含む応力状態を再構成する方法です。
特許第7513234号
cosα法で垂直応力とせん断応力を測定する
測定方向φを変えて多方向を測定する
180°対向方向の測定値を平均する
測定結果をσ–τ平面上に配置する
応力状態に対応する二次成分を抽出する
モールの応力円を推定する
主応力、主応力方向などを算出する
測定点群とモール円との整合性を評価する
cosα法では、二次元検出器によってデバイ環を取得します。
デバイ環上の回折角変化から、指定した測定方向φにおける、
垂直応力 σϕ
せん断応力 τϕ
を求めます。
一回の測定によって、一つの測定方向に対応する垂直応力とせん断応力の組、
(σϕ,τϕ)
が得られます。
同じ測定位置について、試料表面内の測定方向φを変えて測定します。
測定方向の例は、
0∘, 45∘, 90∘, 135∘
または、
0∘, 45∘, 90∘, 135∘, 180∘, 225∘, 270∘, 315∘
です。
各測定方向から、
(σ0,τ0), (σ45,τ45), (σ90,τ90), …
という複数の応力データが得られます。
平面応力状態では、測定方向φと、その対向方向φ+180°は釣合から同じ垂直応力、せん断応力となります。
したがって、
σϕ+180∘=σϕ τϕ+180∘=τϕ
となります。
MSCRでは、対向する二つの測定値を平均します。
σˉϕ=average(σϕ,σ(ϕ+180))
τˉϕ=average(τϕ,τ(ϕ+180))
180°の方向反転によって符号が変わる奇数次成分は、この平均処理によって相殺または低減されます。
180°の方向反転によって符号が変わる三軸せん断応力成分 τxz、τyz も対向平均によって相殺できます。
対向平均後の各測定値を、横軸を垂直応力σ、縦軸をせん断応力τとするσ–τ平面上に配置します。
各測定方向φは、一つの測定点、
(σˉϕ,τˉϕ)
として表されます。
複数方向の測定点を測定方向の順に結ぶと、多角形が形成されます。
この測定点群によって形成される多角形を、**三島の測定多角形(MSP)**と呼びます。
平面応力状態における方向別の垂直応力とせん断応力は、次式で表されます。
σ(ϕ)=Kcenter+Kσcos2ϕ+Kτsin2ϕ
τ(ϕ)=−Kσsin2ϕ+Kτcos2ϕ
ここで、
Kcenter:モール円の中心
Kσ:i成分の係数
Kτ:sin2ϕ成分の係数
です。
応力状態は、測定方向φに対して180°周期で変化します。そのため、応力状態に対応する信号は、
cos2ϕ,sin2ϕ
を基底とする二次成分として表されます。
MSCRでは、多方向の測定結果から、この二次成分の共通係数を推定します。
係数 Kσと Kτ から、モール円の半径 R を求めます。
R=sqrt(Kσ^2+Kτ^2)
モール円の中心は、
C=KcenterC
です。
したがって、推定されるモールの応力円は、
(σ−C)2^+τ^2
と表されます。
実測値には測定誤差や応力以外の成分が含まれるため、測定点が完全な円上に並ぶとは限りません。
MSCRでは、複数方向の測定結果に対して共通する Kcenter、Kσ、Kτを最小二乗法で抽出します。
モール円の中心 C と半径 R から、最大主応力と最小主応力を求めます。
σ1=C+R
σ2=C−R
主応力差は、
σ1−σ2=2R
最大せん断応力は、
τmax=R
です。
角度φに対する応力の変化は、モール円上では角度2φの変化として表されます。
理想的な平面応力状態では、各測定方向の垂直応力とせん断応力は、同一のモール円上に配置されます。
実測されたMSPと、推定されたモール円を比較することで、
測定点が円に沿っているか
各測定方向の位相関係が保たれているか
特定方向の測定点だけが外れていないか
対向する測定結果が一致しているか
応力状態に対応しない方向依存成分が含まれていないか
を評価できます。
測定点と推定円との距離は、各測定方向の残差として表せます。
残差が小さい場合、測定点群と推定された応力状態との整合性が高いことを示します。
この計算方向の反転が、「モールの応力円リバース」の名称の由来です。
最大主応力 σ1
最小主応力 σ2
主応力差 σ1−σ2
最大せん断応力 τmax
平均応力 C
任意方向の垂直応力
任意方向のせん断応力
測定点とモール円との残差
MSCRにおける応力状態の再構成は、次の三つの処理で構成されます。
average(ϕ,ϕ+180)
の測定値を平均し、方向反転によって符号が変わる成分を相殺または低減します。
cos2ϕ,sin2ϕ
に対する共通係数を、多方向の測定結果から推定します。
得られた中心、半径および位相から、モールの応力円と主応力状態を再構成します。
cosα法によって、各測定方向の垂直応力とせん断応力を取得します。
MSCRでは、複数方向の測定結果に対して180°対向平均を行い、測定方向φに対する二次成分を抽出します。
その係数からモール円の中心、半径および位相を求め、主応力、主応力方向、主応力差および最大せん断応力を算出します。
測定点群と推定されたモール円との整合性から、測定結果の妥当性も評価できます。