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X線応力測定で測定できない方向の応力を、モールの応力円リバース法を応用して推定する手法を紹介します。コーナー部やリング内面にも有効です。
モールの応力円リバース解析は、様々方向から測定した応力とせん断応力の軌跡が円になることを利用した解析方法です。特許第7513234号
モールの応力円は, X線応力測定の教科書の最初の方に記載されている基本的な原理です。
[0173]X線応力測定で測定できない方向と推定法
測定したい箇所にX線が届いても、希望するすべての方向で測定できるとは限りません。試料の形状や周囲の構造によって、装置の配置やX線の入射方向が制限されるためです。
MSCRでは、測定可能な複数方向の応力から、同一箇所の応力状態を再構成します。その状態を用いて、直接測定できない方向の応力を推定します。
■ 1.測定箇所と測定方向は、別の条件
「その場所を測定できること」と「その場所を希望する方向から測定できること」は、同じではありません。
例えば、段差や立ち上がり部の近傍、溝の内部、複雑な形状の部品などでは、次のような制約が生じます。
・装置や検出器が試料に干渉する。
・入射X線が周囲の構造に遮られる。
・回折X線が遮られ、解析に必要な回折環を取得できない。
このような場合でも、方向を変えれば、同じ箇所を測定できることがあります。
■ 2.方向が変わっても、対象は同じ応力状態
同じ箇所の応力は、測定方向によって垂直応力とせん断応力の値が変わります。
ただし、それぞれが無関係な値なのではありません。同一の平面応力状態に対応する値であれば、方向による変化は、モールの応力円の関係に従います。
したがって、測定できない方向があっても、測定可能な方向から応力状態を求められれば、その状態に対応する任意方向の応力を計算できます。
■ 3.MSCRによる推定の流れ
① 測定可能な方向を確認する
対象箇所について、装置の干渉、入射X線と回折X線の通過経路を確認し、測定できる方向を選びます。
② 同一箇所を複数方向から測定する
cosα法を用い、各方向の垂直応力とせん断応力を取得します。方向を変える際も、同じ応力状態を評価するため、測定位置と照射範囲を対応させます。
③ 応力状態を再構成する
測定方向の情報と、各方向で得られた垂直応力・せん断応力を用いて、MSCRで応力状態を再構成します。
全周を測定できない場合は、実際に測定した方向に対応する関係式を用います。等間隔8方向測定と同じ相殺効果や誤差低減効果が、そのまま得られるわけではありません。
④ 測定値との整合性を確認する
再構成結果と各方向の実測値を比較し、同一の応力状態として説明できるかを確認します。
測定方向が狭い範囲に偏ると、測定値の変動が推定結果に強く影響する場合があります。そのため、測定方向の数に加え、方向の広がりも考慮します。
⑤ 測定できない方向の応力を求める
再構成した応力状態から、目的とする方向の垂直応力とせん断応力を計算します。最大主応力、最小主応力、主応力方向も求められます。
■ 4.直接測定値と推定値を区別する
装置で取得した回折情報から求めた方向別の応力は、直接測定に基づく値です。
一方、測定できない方向の応力は、複数方向の測定から再構成した応力状態に基づく推定値です。
結果を示す際は、測定位置、実際に測定した方向、再構成結果との整合性、推定した方向を併せて示します。どの情報を測定し、どの値を推定したかが分かる形にします。
■ 5.推定が対象とする範囲
この方法は、同一箇所の応力状態について、測定できない「方向」を補うものです。別の場所の測定値から、X線が届かない箇所の応力をそのまま求めるものではありません。
また、再構成の対象は、ここでは試料面内の平面応力状態です。測定値にその状態では説明できない成分が含まれる場合は、整合性を確認し、測定条件や解析方法を検討します。
■ 関連ページ
[0215]応力p、垂直応力σとせん断応力τ
https://www.stress.co.jp/0215
[0199]モールの応力円
https://www.stress.co.jp/0199
[0245]MSCR技術体系
https://www.stress.co.jp/0245
[0254]MSCRで得られる結果と、その読み方
https://www.stress.co.jp/0254
円筒形内部の周方向応力の推定
そこで、モールの応力円リバースで応力場を解析して0方向の応力を推定します。
実際に測定できるのは、−60°及び−120°です。
円筒形内部の周方向応力の推定
実際に測定できるのは、−60°及び−120°です。
円筒形内部の周方向応力の推定
加工面は、右側がせん断面で左側が破断面になっています。
円筒形内部の周方向応力の推定
モール応力円で、測定点■から0°応力●を推定します。
円筒形内部の周方向応力の推定
応力の測定結果と0度方向の推定結果です。
破断面では、せん断面に比べて圧縮応力が抜けています。せん断面では圧縮応力は抜けていませんが、せん断応力が加わっています。これは現象とよく一致しています。
詳しい内容はお問い合わせください。