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多方向の測定結果を用いて応力以外の成分を除去するため,1方向測定より高精度
全方向の応力(平面応力状態)を推定し図形(モールの応力円)で表示するため,直感的に理解しやすい。
応力状態は破壊条件(最大せん断応力など)やFEM解析との親和性が高い
測定結果の妥当性を,測定点の軌跡と円への一致性として視覚的に確認できる
モールの応力円リバース解析の手順 各測定方向の (σφ, τφ) をプロットし、最適円を回帰的に推定する方法
[0233]モールの応力円リバース(MSCR)― 測定から解析例まで
モールの応力円リバース(MSCR)は、複数方向で測定した垂直応力とせん断応力から、同一位置の応力状態を再構成する解析方法です。当社の特許技術(特許第7513234号)に基づきます。
方向別の応力を束ね、同じ場所の応力状態へ戻す。その結果を実測値と照合することで、応力の大きさ・方向と、測定結果の整合性を確認します。
■ 1.測定から解析までの流れ
MSCRでは、次の順に測定・解析を行います。
① 測定位置と測定方向、測定条件を決める。
② cosα法で、各方向の垂直応力とせん断応力を測定する。
③ 180°対向方向の測定値を平均する。
④ 測定値をσ–τ平面上に配置する。
⑤ 測定方向を用いて共通係数を最小二乗推定する。
⑥ モールの応力円と主応力・主応力方向を求める。
⑦ 方向別残差から、実測値との整合性を確認する。
⑧ 加工前後や疲労段階ごとの応力状態を比較する。
■ 2.測定位置・方向・条件を決める
同一位置の応力状態を再構成するため、測定方向を変えても、測定対象となる位置が一致するように設定します。
測定条件として、材質、測定する相、入射角、照射径、測定時間、測定方向などを記録します。
必要な測定方向数は一律ではありません。試料の状態と、応力以外の信号成分の次数・強度を考慮し、サンプリング定理に基づいて2~32方向から選定します。
以下では、全周360°を45°刻みで測定する8方向の例を説明します。
測定方向φ:
0°、45°、90°、135°、180°、225°、270°、315°
加工前後や疲労段階を比較する場合は、位置・方向・測定条件の対応をそろえます。
■ 3.各方向の垂直応力とせん断応力を取得する
cosα法では、一回の測定から、その測定方向に対応する垂直応力σとせん断応力τの組が得られます。
方向φの測定値:
(σφ, τφ)
8方向の測定では、8組のデータを取得します。
垂直応力だけでなく、せん断応力も同時に用いることで、方向変化に共通する応力状態を推定します。
■ 4.180°対向方向の測定値を平均する
8方向の測定値を、次の4組に分けます。
・0°と180°
・45°と225°
・90°と270°
・135°と315°
各組について、垂直応力とせん断応力をそれぞれ平均します。
対向平均後の垂直応力:
σ̄(φ) = {σ(φ) + σ(φ+180°)} / 2
対向平均後のせん断応力:
τ̄(φ) = {τ(φ) + τ(φ+180°)} / 2
これにより、180°の方向反転で符号が変わる成分を相殺します。3軸のせん断応力による寄与のうち、この反転関係を満たす成分も相殺の対象です。
平均前の測定値も残し、対向方向の差を確認できるようにします。
■ 5.三島の測定多角形(MSP)として表示する
各方向の測定値を、横軸を垂直応力σ、縦軸をせん断応力τとする平面上に配置します。
測定点を方向順に結んで形成される多角形を、三島の測定多角形(MSP)と呼びます。
対向平均前と平均後の測定点を比較すると、方向反転による差と、対向平均による変化を確認できます。
測定多角形は実測の姿、モール円は共通成分の姿を表します。両者を重ねることで、実測値と再構成した応力状態との関係を可視化します。
■ 6.共通係数から応力状態を再構成する
方向別の垂直応力とせん断応力を、次の関係で表します。
σ̂(φ) = Kcenter + Kσ cos(2φ) + Kτ sin(2φ)
τ̂(φ) = −Kσ sin(2φ) + Kτ cos(2φ)
多方向の実測値と推定値との差の二乗和が最小になるように、共通係数Kcenter、Kσ、Kτを求めます。
求めた係数から、モール円の中心Cと半径Rを算出します。
C = Kcenter
R = √(Kσ² + Kτ²)
さらに、面内の主応力などを求めます。
最大主応力:
σ₁ = C + R
最小主応力:
σ₂ = C − R
面内最大せん断応力:
τmax = R
最大主応力方向:
β = atan2(Kτ, Kσ) / 2
測定点の円への近さだけでなく、各点の測定方向を含めて応力状態を再構成することが、現行MSCRの計算上の特徴です。
■ 7.方向別残差から整合性を確認する
各方向の実測値と、その方向の推定値との差を確認します。
垂直応力の残差:
rσ(φ) = σ̄(φ) − σ̂(φ)
せん断応力の残差:
rτ(φ) = τ̄(φ) − τ̂(φ)
確認するのは、次の点です。
・多方向の測定値が、一つの応力状態として整合しているか。
・特定方向に大きなずれがないか。
・垂直応力とせん断応力の方向変化が整合しているか。
・対向方向の差が、平均後にどのように変化したか。
応力状態を再構成し、その状態で実測値を説明する。この照合によって、応力値の算出と測定結果の整合性評価を結び付けます。
■ 8.疲労段階ごとの解析例
本例では、疲労の各段階で取得した多方向の測定値から、それぞれの応力状態を再構成します。
各段階の結果について、次の項目を比較します。
・最大主応力と最小主応力。
・主応力方向。
・平均応力。
・主応力差と面内最大せん断応力。
・MSPと方向別残差。
掲載例では、疲労段階1、2で主応力方向が変化し、その後の段階で応力が緩和する様子が示されています。また、荷重方向を0°としたとき、主応力方向が荷重方向へ近づく変化が示されています。
このように、多方向の測定を段階ごとに繰り返すことで、応力の大きさの変化と、主応力方向の変化を分けて把握できます。
■ 9.モール円の重ね合わせで確認すること
各段階のモール円を重ねると、中心と半径の変化を比較できます。
・中心の変化:面内平均応力の変化。
・半径の変化:主応力差と面内最大せん断応力の変化。
・左右端の変化:最大主応力と最小主応力の変化。
主応力方向の変化を確認するには、円の輪郭だけでなく、方向が分かる測定点・推定点、または主応力方向βを併せて表示します。
同じ中心と半径の円でも、主応力方向が異なる場合があります。大きさは円で、向きは方向付きの点で確認します。
■ 10.直接測定が困難な方向への応用
部品形状によって、必要な方向へX線を傾けられない場合があります。
その場合でも、同じ位置について測定できる複数方向の垂直応力・せん断応力から応力状態を再構成できれば、直接測定していない方向の応力を推定できます。
例えば、0°方向の測定が困難な場合に、90°、135°などの測定可能な方向を組み合わせて解析する方法です。
ここで推定するのは、同一位置における未測定方向の応力です。別の位置の応力を推定する外挿とは区別します。
測定方向の組合せは、係数を求められる配置か、整合性を検証するデータが確保できるかを確認して選定します。
■ 11.MSCRで確認できること
MSCRでは、方向別の応力値から、次の情報をまとめて評価できます。
・同一位置の面内応力状態。
・最大主応力、最小主応力と主応力方向。
・平均応力、主応力差、面内最大せん断応力。
・多方向の実測値と再構成した応力状態との整合性。
・加工・熱処理・ピーニング・疲労段階に伴う応力状態の変化。
・直接測定していない方向の応力の推定。
仕組みの説明は[0255]、計算式と数理的背景は[0256]を参照してください。
■ 関連ページ
[0255]MSCRの技術的な仕組み
https://www.stress.co.jp/0255
[0256]MSCRによる応力状態解析の数理的背景
https://www.stress.co.jp/0256
[0239]モールの応力円で見る応力変化
https://www.stress.co.jp/0239
[0173]測定できない方向の応力を推定する
https://www.stress.co.jp/0173
[0262]MSCRの適用範囲
https://www.stress.co.jp/0262
モールの応力円とは、1点の応力とせん断応力を円で2次元グラフィカルに表現する方法で、 360度全方向の応力を1つの円で表現します。2次元グラフィカルに表現することで視覚的に理解できます。
グラフィカルなので、応力測定、解析がうまく行っているか一目でわかります。
主応力方向が視覚的に理解できます。
全方向2次元解析のため主応力方向の変化、つまり応力の回転が捕捉できます。
1点の応力を2〜8方向の測定結果から推定することにより精度の高い解析を実現します。
180度フリップ平均で3軸せん断応力を相殺して精度の高い解析を実現します。
応力測定の妥当性評価
これまでの解析だとわからない。
2次元解析でわかる主応力の回転
主応力の求め方 モールの応力円
主応力の回転 モールの応力円
モールの応力円リバース解析 と 従来方法
モールの応力円リバース解析のデータ
疲労による応力変化 モールの応力円
疲労による応力変化 モールの応力円
【A. 基礎レベル(従来理論ゾーン)】
├─ [0197] ロゼットゲージによる主応力解析(旧来手法)
└─ [0219] モールの応力円の扱い(教科書レベルの基礎)
↓ 基礎を理解後、次の段階
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【B. 準基礎レベル(リバース解析の概念導入)】
├─ [0167] 主応力解析 by モールの応力円リバース
├─ [0173] 測定できない方向の応力を推定する(応用の入口)
└─ [0212] 次元の違う応力解析手法(従来とリバースの比較)
↓ ここで“リバースの基本概念”を理解
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【C. 中核レベル(モールの応力円リバースの中心ページ)】
▶ **【中心】 [0245] モールの応力円リバース解析 総括(総本山)**
※ 全ページは最終的にここへ収束する構造
↓ この総括から下位の技術的ページへ展開
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【D. 分解レベル(難易度別に三層構造)】
【初心者向け】
・概念の図示
・σとτの違い
・なぜ“リバース”と呼ぶのか
【中級者向け】
└─ [0255] モールの応力円リバースの“技術的仕組み”
・σ+τの活用
・多方向測定
・誤差相殺
・円フィッティング
【上級者向け】
・座標変換
・円の最適フィッティング
・誤差分布
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【E. 実務・応用レベル(現場で役立つページ群)】
├─ [0233] 測定〜解析例(実測例:8方向・疲労・溶接)
[0173]測定できない方向の応力を推定する。モールの応力円リバース
[0256]上級者・研究者向けモールの応力円リバースによる応力解析の数理的背景