ユーゴック語の韻律詩

1.音節の形成

1.1音素の重さ

ユーゴック語の韻律は、単語を音節に分け、それらに長い(kokia)と短い(fecher)の区別をつけるところから始めます。

音節の長さは子音と母音の並び方によって決定します。はじめに次の単独子音、単独母音を定義しておきます。


子音

  • 軽子音……短い子音です。
  • 重子音……音素上は一つの子音ですが、軽子音より長めの子音です。

母音

  • 軽母音……短い子音です。
  • 重母音……長めの母音です。


重子音には、/st/、/km/、/cch/、/str/, /x/などの軽子音が二つ以上集まった子音クラスタが該当します。一方、軽子音とは/k/、/s/、/m/、/th/などの単子音が含まれます。ただし、/ry/や/bw/などは一見二つの子音が集まったように見えても、扱いは重子音ではなく軽子音です。


母音の場合は、分割に少々慣れが必要です。

韻律において、ユーゴック語の単語は母音と子音のみで成り立ちますから、母音が子音およびスペース(単語の区切り)に挟まれていればその母音クラスタを一つまたは二つに分割します。

母音クラスタが一つに分割されるケースは次の三つに分かれます。

  • 単母音(a, i, u, e, o)が一つだけ → 軽母音が一つとして扱います。
  • i系二重母音(ai, ei, ui, oi)または長母音(aa, ii, uu, ee, oo)が一つだけ → 重母音が一つとして扱います。
  • 軽子音の前のi系以外の二重母音(つまり、単母音が二つ連続している)→ 重母音が一つとして扱います。

これ以外の母音クラスタは、二つに分割されます。その際の分け方は二通りです。

  • 重子音の前のi系以外の二重母音 → 単母音二つが並んでいるものと扱います。従って軽母音が二つとして扱います。
  • 三連続母音字だが、i系二重母音または長母音が埋め込まれている→i系二重母音または長母音を重子音として扱い、残った単母音一つを軽子音として扱う。
  • 三連続母音字だが、i系二重母音も長母音も埋め込まれていない → 最初の母音字二つを二重母音として扱い重母音とし、残りの単母音一つを軽子音として扱う。


1.2音節の形成

以上の様に母音の重さを決定し、音節を区切って長短を決定します。音節の区切りは行ごとに行います。

音節の基本構造は次の通りです。

頭子音 + 音節核 (+末子音クラスタ)


音節の形成の際に、母音クラスタの前の軽子音一つだけを取り、残った子音は前の音節の末子音に含ませます。この子音を頭子音と呼びます。ただし行頭の場合は、子音字をすべて取り、そのまま頭子音とします。いずれにせよ、頭子音が音節の長さの決定に関与することはありません。

また頭子音は、スペースを無視して取り得ます。つまり、前の単語が閉音節だった場合、その末尾の子音字を一字だけ取り、音節を為すことになります。そのため頭子音は、行頭である場合を除いて、必ず音節に含まれています。


音節核には軽母音か重母音のいずれか一つが入ります。1.1で述べた通り、三連続の二重母音母音や軽母音と重母音が組み合わさって「超長母音」などは存在しません。


末子音クラスタには、前の音節に奪われた頭子音となった軽母音以外すべてが末子音クラスタとして音節に含まれます。この末子音クラスタは軽母音か重母音のいずれか一つが入ります。


以上の様に音節を作り、次の二つの条件をいずれか満たせば音節として長くなります。

  • 音節核が重母音である。
  • 末子音クラスタが存在する。

このようにして音節に長いと短いの区別をつけていき、長い音節を長音節(kokia suniinei)、短い音節を短音節(fecher suniinei)と呼びます。また、このページでは長音節を-(ハイフン)、短音節を^(ハット)で略記します。

2.韻脚の形成

2.1韻脚の概念

韻脚(有: toonsun、英:foot)あるいは単に「脚」は短音節または長音節の組み合わせで作られる有詩や西洋詩の基本単位です。有詩の一行は、この韻脚を一種類のみでいくつか並べることで作られます。

例として次の一行を韻脚に分解(有: phiskor、英: scanning)します。

Bi rekzasdis aam athte essam, joroxort'

音節に分解して長短をつけると次の通り、

^-- ^-- ^-- ^--

また、原文をパイプで韻脚に区切ると次の通りです。

|Bi rekzas|dis aam ath|te essam,| joroxort'|

^-- ^-- ^-- ^--起床においてあなたは世界一素晴らしく、プロ

この例の場合、「^--」の韻脚を四つ並べて一行としています。^--または--^の韻脚を用いる詩をウェーヘリートル詩(Weeheriitor、あるいは意訳して黙詩)と呼び、この韻脚は現世ではそれぞれバッケイオス、または逆バッケイオスといいます。


次の一行も同様に分解してみます。

Theamsen en Dekan Kas ar manaa!

韻脚に区切り長短をつけるとこの通りです。

|Theam|sen en| Dekan| Kas ar| manaa!|

^-^-^-^-^-

偉大なる彼女の下、人々は団結する!

韻脚は「^-」であり、五つ並べられています。いわゆる「アイアンブ」です。^-が使われる詩は一般にサゼリートル詩(Thazeriitor、あるいは意訳して楽詩)と呼ばれます。

ただし、有詩の場合、行が短音節で終わることは避けられます。そのため、「-^」や「--^」のような韻脚を採用する詩であっても、最終韻脚が「-」「--」にそれぞれ変化することがあります。加えて最終音節に限り、短母音であるにもかかわらず長音節の代わりとなるケースがあります。


2.2脚韻

ユーゴック詩では脚韻が頻繁に使われます。ユーゴック語で脚韻とは、行末の音節の音節核と末子音クラスタを完璧に一致、または似たものに揃えることを指します。頭子音まで一致するのは避けられる傾向があります。また脚韻に複数の音節を使うことも可能です。


例えば、

Bi rekzasdis aam athte essam joroxort'.

起床においてあなたは世界的に素晴らしく、プロ。

Mo rekzasdisaa reknasyaitan mo jeitas.

そして起床界は導かれ、進展するだろう。

Dekan Puus karam tin syatantue tanast chort'

朝方に我らの布団時代の偉大なる幕が降りる。

Bi fan h'en din ath torbadistei fi rekzas.

起床するために産まれてきた男によって(DEGwer四行詩より)

この場合、-ort'と-asで脚韻を交互に使っています。


別の例も上げましょう。

Imuurnar he teggenna am chemngan'm sur?

私に会った帰還者はどうなるのだろうか?

Yuguu tesseder man h'imuurtas di thookur.

互いに遠方へと帰る者を阻止し。

Phador chemn mo teg wirka h'an yarza fenzur.

夜は変わり、報いを残すこともなく闇を得る。

Dinai reitogandis yethemn'r mo reeu'r?

これらを誰が実現し再び取り戻すのだろうか?

この場合、-urのみが四行全体で使われています。


また、一音節の子音クラスタのみの一致、あるいは一音節の音節核のみの一致は、脚韻と認められず「脚韻無し」とされることが殆どです。

同じ単語や形態素、語尾などで脚韻とすることは原則許されず、同様に「脚韻無し」となります。

3.詩の形式

3.1四行詩

四行で一つの詩とする四行詩(有: ateea)が最も手軽に読まれる形式として好まれ、これに続く長詩なども基本的に四行を一塊としてこれらを複数並べていくことが多いです。いわば、有詩の基本単位は音節(suniinor)→韻脚(toonsun)→行(phaatar)→四行詩(ateea)という階層になっています。


形式はいくつかあれど、基本的な四行詩は長行と短行の順番に並べるか、並べないかで二分できます。並べる場合、行の作り方が少し複雑化します。

四行詩のスタイルは基本的に次の2通り。行末のaやbは脚韻の存在と種類を表しています。

  • Nersekdis Ateea(列挙式)

――――(b)

――――a

――――(b)

――――a

列挙式では、偶数行か奇数行かに関係なく同じ韻脚数で四行書かれます。脚韻は交差の場合もあれば、偶数のみ、または統一脚韻のこともあり、自由です。


  • Kehhadis Ateea(交差式)

――――a

―――-b

――――a

―――-b

交差式とは、偶数行と奇数行の区別がされているものを言います。これらの区別は最終韻脚の形状で決定され、偶数行の最後が「^-」で終わるように最終韻脚の形が変形している必要があります。

例えば、ウェーヘリートル詩の場合、次のように変化します。

^--^--^--^--

^--^--^--^-

^--^--^--^--

^--^--^--^-


逆ウェーヘリートル詩の場合はこのようになることが多いです(最終韻脚の短音節が省略されています)。

--^--^--^--a

--^--^--^-b

--^--^--^--a

--^--^--^-b

そして、交差式では必ず交差脚韻が採用されます。


3.2その他の形式

即興的に一行だけ読むなど、形式を崩したものがいくつかあれど、よくあるものでは、革命詩などと呼ばれる形式があります。革命詩では以下の詩の様に、基本的には交差式ウェーヘリートル詩でありながら、形式が少し崩れて--^と-^^の両方の韻脚が同時に認められます。

Goodis, tar arche, di semdis fo Naara,

同志よ、来たれ、祖国の戦いへ

Taartai ti zen koon kethaa wasbugan.

光輝く太陽が昇るとき、我らは団結する

Goodistas aartaa fi chemn stomo haara,

共同体は階級を逆転するべく来たる

Amthemanon Jeir, tar aamz, man mo fan!

社会主義の前進だ、君たち男女よ!