『春の消息』

『春の消息』柳美里×佐藤弘夫・宍戸清孝(写真)
第三文明社、2017年12月1日


東北各地の霊場を探訪し、日本人の死生観をさぐる。盛夏から晩秋、そして初冬へ──。

作家(柳美里)と学者(佐藤弘夫)は、魂のゆくえを訪ねて、東北を歩いた。

それは、大震災を経験した人々が待ち望む春を探す旅でもあった。

本書は日本人の死生観をテーマに、福島県南相馬市在住の芥川賞作家・柳美里氏が、

東北大学大学院の佐藤弘夫教授と共に、かつて飢饉・冷害・震災といった大災害に

見舞われた東北各地の墓地、有形・無形文化遺産などを探訪。

第一部では、地域に残る生者と死者の交歓風景を、佐藤教授によるナビゲーションと

柳美里氏によるエッセイを組み合わせて展開。

ふたりは2016年夏から冬にかけて、青森県五所川原市の「賽の河原・川倉地蔵尊」や、

「姥捨て伝説」の舞台となった岩手県遠野市のデンデラ野・ダンノハナを訪ねたり、

中世には納骨儀礼の場であった宮城県の松島などを訪れた。

さらに東日本大震災の被災地である福島県南相馬市や警戒区域である大熊町にも足を

延ばすなど、東北各県で取材を重ねた模様を、佐藤教授による解説と、

仙台在住の写真家・宍戸清孝氏による写真で紹介。

第二部には、佐藤教授と柳美里氏の対談を収録。生者と死者の織りなす独自の文化の形成と

定着について読み解き、未来に向けた死生観・生死観を語り合うとともに、

それぞれが体験した「東日本大震災」と、その後の日々についても考察を深める。


【造本】
水口美香


【Togetter】
https://togetter.com/li/1004991


【関連記事】
週刊読書人ウェブ「刊行インタビュー 悲しみを優しく揺するものたち」
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【目次】

「はじめに」柳美里

「春来る鬼」佐藤弘夫


1 死者の記憶 佐藤弘夫

川倉地蔵尊

川倉地蔵堂

ムカサリ絵馬

若松寺

黒鳥観音

「蜂占い」柳美里


2 納骨に見る庶民の霊魂観 佐藤弘夫

八葉寺

山寺

宝珠山立石寺

垂水遺跡

松島

「遺品」柳美里


3 日本人と山 佐藤弘夫

三森山のモリ供養

光星寺

「鳥になって」柳美里


4 土地に残る記憶 佐藤弘夫

海渡神社

小斎城

「梨の花」柳美里

「境界の城」柳美里


5 生者・死者・異界の住人 佐藤弘夫

遠野

小友西来院

「春、大きな樹の下で……」柳美里


6 死者のゆくえ 佐藤弘夫

最禅寺の地獄極楽図

大悲山の石仏

浦尻貝塚

原町別院

「黒焦げとなった少年」柳美里

対談

柳美里×佐藤弘夫「大災害に見舞われた東北で死者と共に生きる」

「おわりに」佐藤弘夫

各地へのアクセス

参考文献

ご協力いただいた方々


【関連記事】

【書評】郷土の本棚(『岩手日報』、2017年12月10日)


【県別訪問先リスト】

■青森県

川倉地蔵尊(五所川原市)/イタコ/人形堂

■秋田県

最禅寺(湯沢市)/地獄極楽図

■岩手県

遠野(遠野市)/西来院

■山形県

若松寺(天童市)/ムカサリ絵馬/銅聖観音像懸仏

黒鳥観音(東根市)/ムカサリ絵馬

山寺(山形市)/宝珠山立石寺/垂水遺跡

三森山(鶴岡市)/モリ供養/光星寺

■宮城県

松島(松島町)/雄島

小斎城(丸森町)

■福島県

八葉寺(会津若松市)

海渡神社(大熊町)

大悲山(南相馬市)

浦尻貝塚(南相馬市)

原町別院(南相馬市)


【日程メモ】

7月26日-27日 青森県を訪問

8月3日 会津を訪問

8月22日-23日 山形県を訪問

10月15日-17日 丸森町、南相馬市、大熊町を訪問

11月27日-28日 岩手県、秋田県を訪問