Abstracts

International Symposium on Protistology: Evolution and Diversity

TKB055 as a novel member of "Discoba."

We here report the molecular phylogenetic and morphological characteristics of a balloon-shaped biflagellate (strain TKB055) from a pond on the university campus. This flagellate superficially does not resemble in any previously-described eukaryotes. To clarify the evolutionary position of this flagellate in eukaryotic phylogeny, we determined 7 nuclear genes encoding elongation factor 1α, elongation factor 2, α-tubulin, β-tubulin, actin, heat shock protein 90, and small subunit ribosomal RNA. In the 7 single-gene phylogenies, TKB055 always branched with the members of “Discoba” comprised of euglenozoans, heteroloboseans, and jakobids. Consistent with the single-gene phylogenies, multigene analyses successfully recovered the robust monophyly of TKB055 plus the Discoba lineages. We will also observe the ultrastructures of TKB055, and discuss the morphological evolution of Discoba.

Protist EST program in Tsukuba (PETIT): Similar to but smaller than PEP by Genome Canada/Genome Atlantic.

Protist EST program (PEP) by Genome Canada/Genome Atlantic had a significant impact on evolutionary protistology. The sequence data generated from this program have prompted a number of large-scale phylogenies and brought us novel insights into eukaryotic evolution. To further deepen our understanding of eukaryotic phylogeny, we are planning EST projects of several protists, and, importantly, some of these species are previously unidentified. The EST sequencing of the centrohelid Raphidiophrys contractilis is now on-going to clarify its precise phylogenetic position. We also have four "target" species for future sequencing, (1) a biflagellate from sea water sampled in Palau (YPF602), (2) a balloon-shaped biflagellate from a pond on the university campus (TKB055), (3) the exavate Dysnectes brevis, and (4) an another excavate species from deep sea sediment at a cold methane seep (NY0173). We here present "pre-phylogenomic" analyses of the preliminary data from these organisms, and discuss the potential impact of our PETIT-scale program.

Katablepharid EFL possess the evolutionary affinity to the homologues of chlorarachniophytes, foraminiferans, and diatoms.

The cellular function of translation elongation factor 1α (EF-1α) and that of elongation factor-like (EFL) proteins are most likely equivalent, delivering aminoacyl-tRNA to the ribosome in peptide elongation. It is generally accepted that the EFL gene evolution has been driven mainly by lateral gene transfer, while EF-1α genes have been vertically inherited in eukaryotic phylogeny. We here isolated an EFL gene from the katablepharid Leucocrytos marina, which may be a close relative of cryptomonads. In the EFL phylogeny, the Leucocryptos homologue showed no affinity to the cryptomonad homologues, but branched with those of the chlorarachniophyte Bigelowiella natans, the foraminiferan Planoglabratella opecularis, and diatoms. In agreement with the phylogeny, we found that the above homologues exclusively share a characteristic insertion of lysine residue. In this presentation, we discuss the EF-1α/EFL evolution in the assemblage of haptophytes, cyrptomonads, and katablepharids.

日本藻類学会第32回大会

霞ヶ浦、磯ノ浦における真核微生物の分子多様性解析

近年、自然環境中に棲息する真核微生物の多様性は、rDNA配列をPCR法により増幅・決定・解析するという、「環境rDNA解析」により盛んに解析されている。一般に環境rDNA解析は、これまで行われてきた顕微鏡観察よりも生物多様性の検出能が鋭敏であり、環境中にごく微量存在する生物種や、培養・単離することが難しい生物種の検出が可能だと考えられている。

本研究では、茨城県・霞ヶ浦から採取した富栄養淡水サンプルと、和歌山県・磯ノ浦から採取した貧栄養海水サンプルを用い、これらの普遍的水圏環境中の真核微生物の多様性を環境rDNA解析により検討した。環境rDNA解析により推定された霞ヶ浦サンプル中の真核微生物多様性は、同じサンプルの光学・電子顕微鏡観察に基づくデータと比較したところ、低く見積もられていた。一方、磯ノ浦サンプルの環境rDNA解析では、顕微鏡観察で同定されなかった真核微生物のrDNA phylotypeを多数検出することに成功した。また磯ノ浦サンプルの解析では、PCRプライマーの種類により増幅されるphylotypeが大きく変化することが分かった。我々の行った環境rDNA解析の結果は、解析対象である環境特性に極めて強く依存することを示唆している。従って、自然環境中の真核微生物多様性の把握には、単一手法を用いた解析では不十分である可能性が高い。

クロロフィルa, bを持つ緑色渦鞭毛藻類Lepidodinium chlorophorumの葉緑体起源

光合成渦鞭毛藻の多くは、chlorophyll cを持ち、カロテノイド系色素としてペリディニンを持つ葉緑体を保持している。ペリディニンタイプ葉緑体の起源は二次共生した紅藻類を起源とすることが広く受け入れられているが、ペリディニンタイプ葉緑体とは異なる色素組成を持つ渦鞭毛藻類葉緑体も存在する。宿主細胞の系統解析では、非ペリディニンタイプ葉緑体を持つ種の中に散在している。つまり非ペリディニンタイプ葉緑体を持つ渦鞭毛藻類は、ペリディニンタイプ葉緑体を一度手放したあと、三次共生により新たな葉緑体を獲得したと考えられる。渦鞭毛藻Lepidodinium chlorophorumは、ペリディニンタイプ葉緑体ではなく、chlorophyll bを含む緑色の葉緑体を保持している。従って、Lepidodinium緑色葉緑体はその色素組成から緑藻起源であると考えられてきた、ごく最近まで葉緑体遺伝子配列に基づく分子系統解析は行われていなかった。これまでの葉緑体遺伝子解析は、Lepidodinium葉緑体とChlorophytaに属する緑藻類の葉緑体との進化的近縁性を明らかにしたが、その起源を特定するとこはできなかった(Takishita et al., 2008 Gene in press)。興味深いことに、葉緑体色素組成データはLepidodinium-プラシノ藻葉緑体との共通性を示唆している。しかし、Takishitaらの解析では、データ中にプラシノ藻類はOstreococcusNephroselimsしか含まれず、Lepidodinium葉緑体のプラシノ藻起源説を検討するには不十分であった。本研究では、新たに5種類のプラシノ藻類葉緑体8種類を決定・系統解析し、Lepidodinium葉緑体起源をさらに詳細に検討したので報告する。

霞ヶ浦のプロティスト相2007

藻類を含むプロティスト(原生生物)は、水域の生態系においてきわめて大きな部分を占めている。そのため水圏生態系の理解には、どのようなプロティストがどの程度棲んでいるか?という基礎的な情報が不可欠であるが、残念ながらこのような調査は極めて限定的である。近年、環境DNAを用いたプロティスト相の研究が盛んになってきたが、形態的な観察からの対応がほとんどなされていないため、両者がどれほど実際のプロティスト相を反映しているかは不明である。

霞ヶ浦は関東平野東部に位置する大きな海跡湖であり、周囲での人間活動が大きいため、重要な水源であると同時に、人為的な富栄養化が激しく、日本を代表する富栄養湖となっている。それに伴い水質悪化の代表例として注目され、1970年代からはじまぅたアオコの大量発生でも有名となった。

これらを背景として、2006年10月から約1年間、霞ヶ浦で5回のサンプリング調査を行い、顕微鏡観察からプロティスト相を調査し、環境DNAの解析も行った。その結果、約500種のプロティストが確認され、分類群としても緑色植物、不等毛植物、卵菌類、ラビリンチュラ類、ビコソエカ類、渦鞭毛藻類、繊毛虫類、ケルコゾア、クリプト植物、ハプト植物、ユーグレノゾア、ロウコゾア、アプソゾア、ヘリオゾア、アメーボゾア、コアノゾアなど極めて多岐にわたった。このような種組成は富栄養湖の一般的な姿を示しているものと思われるが、特に珪藻類において汽水湖的な要素も若干見られた。この調査は筑波大学学内プロジェクト「普遍水域におけるプロティスト多様性解明とプロティストバイオリソース基盤の構築」の一環として行われた。

リボソームタンパク質遺伝子を用いた有中心粒太陽虫の系統的位置の解明

真核生物はこれまでの形態情報及び分子情報に基づき、それぞれの生物グループの近縁性によっていくつかのスーパーグループに分類されているが、有中心粒太陽虫類(Centroheilida)はどのスーパーグループにも分類できない所属不明の生物グループの一つである。これまでに7つの遺伝子を用いた連結分子系統解析が行われたが、有中心粒太陽虫と他の真核生物グループとの関連性は未だ不明のままである。

そこで我々は、有中心粒太陽虫の一種であるRaphdiophrys contractilisのcDNAライブラリを作成し、それを用いて多数の遺伝子配列データを得ることにより大規模データセットの作成を行った。データセットに含まれる配列情報は、高い発現レベルを持つリボソームタンパク質遺伝子である。リボソームは全ての生物に存在しており、その構成タンパク質や遺伝子配列がよく保存され、進化速度が遅いことから、真核生物全体における大系統レベルの解析を行う際に分子マーカーとして適すると考えれる。

本研究では、R. contractilis及び近年報告された様々な真核生物グループのゲノム解析やEST解析からの、複数のリボソームタンパク質遺伝子を用いた最尤法による連結分子系統解析を行い、有中心粒太陽虫の系統的位置及び真核生物グループ間の近縁性について検討を行ったので報告する。

珪藻におけるS-アデノシル-L-メチオニン合成酵素遺伝子の進化

S-アデノシル-L-メチオニン合成酵素(MAT)遺伝子は様々な物質にメチル基を転移させるためのドナーを合成するタンパク質をコードしており、バクテリアから真核生物まで広く保存されている。我々はこれまでの解析で、一部の真核生物はMATを持っておらず、アミノ酸レベルで類似しているがMATとは明確に区別される遺伝子であるMATXを持っていることを発見した。MATXを有する真核生物は系統樹上で散在しているため、真核生物間でのMATX遺伝子の水平伝播を示唆している。

興味深いことに、羽状珪藻Phaeodactylum全ゲノム中およびFragilariopsis ESTデータ中にはMATのみが同定されたが、中心珪藻Thalassiosira全ゲノム中にはMATに加え、MATXも同定された。されに、中心珪藻3種及び羽状珪藻4種を用いて、RT-PCRによる量遺伝子の検出を試みた結果、中心珪藻2種および羽状珪藻2種から量遺伝子を検出し、他の3種からは一方の遺伝子の実が検出された。本研究によりMATとMATX両遺伝子を持つ珪藻類は系統樹上で広く分布しており、MAT遺伝しのみを持つPhaeodactylumは2次的にMATXを捨てた「特殊ケース」であることが示唆された。