Evolution of EF-1α and its homologs in eukaryotes and archaea in light of the covarion hypothesis.
真核生物ゲノムにはEF-1αのパラログ(EF-1αを祖先としてもつが、それとは機能が異なる分子)として翻訳終結因子3(eRF3)と機能未知なHBS1をコードしている。我々はランブル鞭毛虫、トリパノソーマ原虫、細胞性粘菌等からeRF3とHBS1を単離した。これらの配列を元に、EF-1α、eRF3、HBS1それぞれの各アミノ酸残基の置換速度を予測し、それぞれを比較した。その結果、EF-1αでEF-1βとアミノアシルtRNAに結合する部位のアミノ酸残基が、eRF3とHBS1では有意に置換速度が速くなっていることが判明した。このことから2つのEF-1αパラログは、EF-1αが受けているEF-1βとアミノアシルtRNAからの機能性制約がなくなっている、即ちeRF3とHBS1はEF-1βともアミノアシルtRNAとも結合しないと考えられた。
Class 1 release factors of ciliates and Acetabularia caliculus: insight into stop codon recognition site in organisms with variant genetic codes.
標準遺伝暗号では3つのコドン、UAA/UAG/UGAがタンパク合成の終結シグナル(終止コドン)として、翻訳終結因子(eRF1)に認識されている。しかし、eRF1タンパクのどの部分が、どのように3つのコドンを特異的に認識しているのかははっきりとしていない。そこで我々は終止コドンとしてはUGAのみ、あるいはUAA/UAGコドンのみを使用することが判明している繊毛虫類・緑藻の一種であるアセタブラリアからeRF1遺伝子を単離した。我々はこれら新規eRF1配列と標準暗号を使用する生物から単離されたeRF1を、このタンパク質の立体構造を顧慮し比較することによりeRF1の終止コドン認識アミノ酸残基を推測した
Isolation of the eukaryotic release factor 3 (eRF3) gene from the mitochondria-less protist, Giardia lamblia: Prediction of the ancestral gene structure of eRF3.
我々はミトコンドリアを持たないランブル鞭毛虫及び2種の繊毛虫からから新たに翻訳終結因子3(eRF3)遺伝子を単離した。eRF3は翻訳伸長因子EF-1α様のC末ドメインとN末ドメインから構成されている。興味深いことにランブル鞭毛虫eRF3はC末ドメインのみをもち、N末ドメインを欠損していることが分かった。酵母を用いた解析から、eRF3のEF-1α様C末ドメインのみが機能上必須であることが分かっている。このことからランブル鞭毛虫eRF3はeRF3の祖先的ドメイン構成を持っていると考えられた。eRF3をもちいた分子系統も、ランブル鞭毛虫は最も初期に他の真核生物から分岐したことを示唆した。我々の結果は、ランブル鞭毛虫が非常に原始的真核生物であることを支持しているが、eRF3を生じたEF-1α遺伝子の重複はランブル鞭毛虫が分岐する以前、即ち真核生物進化のごく初期に起こったと考えられる。
COX1遺伝子による渦鞭毛藻類の系統解析
渦鞭毛藻類の葉緑体はそれぞれ4重膜に包まれている。これはこの原生生物の祖先は、細胞内共生した光合成真核生物をオルガネラ化したことを暗示する。我々は渦鞭毛藻類からミトコンドリア遺伝子チトクロームオキシターゼサブユニット1(cox1)を単離した。cox1をもちいた分子系統解析では、渦鞭毛藻類はマラリア病原虫類とそれぞれ近縁であること明らかになった。主な渦鞭毛藻類は、それぞれクロロフィルa+cを含む葉緑体を持っている。しかしミトコンドリア遺伝子による分子系統は、クロロフィルa+cを含む葉緑体をもつ藻類(ヘテロコント藻類)とは強い近縁関係は検出されなかった。従って渦鞭毛藻類とヘテロコント藻類は独立にクロロフィルa+cを含む葉緑体を3次共生(あるいは4次共生)により獲得したと考えられる。
ミトコンドリア遺伝子による藻類の分子系統解析その2:葉緑体を持つ鞭毛虫・渦鞭毛藻類の分子系統
渦鞭毛藻類の葉緑体はそれぞれ4重膜に包まれている。これはこの原生生物の祖先は、細胞内共生した光合成真核生物をオルガネラ化したことを暗示する。我々は渦鞭毛藻類からミトコンドリア遺伝子チトクロームオキシターゼサブユニット1(cox1)を単離した。cox1をもちいた分子系統解析では、渦鞭毛藻類はマラリア病原虫類とそれぞれ近縁であること明らかになった。主な渦鞭毛藻類は、それぞれクロロフィルa+cを含む葉緑体を持っている。しかしミトコンドリア遺伝子による分子系統は、クロロフィルa+cを含む葉緑体をもつ藻類(ヘテロコント藻類)とは強い近縁関係は検出されなかった。従って渦鞭毛藻類とヘテロコント藻類は独立にクロロフィルa+cを含む葉緑体を3次共生(あるいは4次共生)により獲得したと考えられる。
Mycoplasmaにおける未修飾UまたはAをアンチコドン第1文字目に持つtRNAの同義コドン翻訳パターンの解析
真正細菌マイコプラズマはアンチコドン第1文字目に未修飾ウリジン(U)と未修飾アデノシン(A)をもつ特殊なtRNAを使用している。マイコプラズマの全tRNA種のシークエンシングから、このような特殊なtRNAはファミリーボックスの4種類のコドンをすべて認識すると考えられてきた。しかしアンチコドン第1文字目未修飾U・未修飾Aとコドン第3文字目のU/A/C/Gとの「ゆらぎ」結合は実験的に証明されていなかった。我々はマイコプラズマの無細胞翻訳系を用い、未修飾U・未修飾Aを持つ全てのtRNA(ロイシン、バリン、セリン、プロリン、スレオニン、アラニン、アルギニンおよびグリシン)のコドン認識能を検証した。その結果、全ての未修飾U・未修飾Aを持つtRNAは4種類の同義コドンを翻訳することができることを証明した。多細胞動物、酵母のミトコンドリアにおいても、同様の特殊tRNAが発見されており、これらのミトコンドリアtRNAはマイコプラズマtRNAと同じコドン認識能を持つと推定できた。
Genetic code evolution in Mycoplasma capricolum recognition of symonymous codons in family box by tRNA with an unmodified U or A at the anticodon first position.
真正細菌マイコプラズマはアンチコドン第1文字目に未修飾ウリジン(U)と未修飾アデノシン(A)をもつ特殊なtRNAを使用している。マイコプラズマの全tRNA種のシークエンシングから、このような特殊なtRNAはファミリーボックスの4種類のコドンをすべて認識すると考えられてきた。しかしアンチコドン第1文字目未修飾U・未修飾Aとコドン第3文字目のU/A/C/Gとの「ゆらぎ」結合は実験的に証明されていなかった。我々はマイコプラズマの無細胞翻訳系を用い、未修飾U・未修飾Aを持つ全てのtRNA(ロイシン、バリン、セリン、プロリン、スレオニン、アラニン、アルギニンおよびグリシン)のコドン認識能を検証した。その結果、全ての未修飾U・未修飾Aを持つtRNAは4種類の同義コドンを翻訳することができることを証明した。多細胞動物、酵母のミトコンドリアにおいても、同様の特殊tRNAが発見されており、これらのミトコンドリアtRNAはマイコプラズマtRNAと同じコドン認識能を持つと推定できた。