Abstracts

Asia-Africa Evolution Meeting (アジア・アフリカ進化会議-長谷川政美退官記念シンポジウム)

Eukaryotic origin of glyceraldehydes-3-phosphate dehydrogenase genes in Clostridium thermocellum and Clostridium cellulolyticum genomes.

Although lateral gene transfer (LGT) events have been frequently documented in the evolution of glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (GAPDH), no eukaryote-to-prokaryote transfer has been reported so far. Here we describe the first case of the GAPDH gene transfer from a eukaryote to Clostridium species (Bacteria, Firmicutes). Phylogenetic analyses of GAPDH sequences revealed that Clostridium thermocellum and C. cellulolyticum sequences have evolutionary affinity to eukaryotic sequences, rather than to bacterial homologues, including those from other Clostridium species. These results suggest that the GAPDH genes in the two Clostridium species are of the eukaryotic origin, although the eukaryotic donor could not be specified. Since a 16S ribosomal DNA phylogeny has suggested the close relationship between C. thermocellum and C. cellulolyticum, the ancestor of the two species likely acquired the eukaryotic GAPDH gene. In the C. cellulolyticum genome, the exogenous GAPDH gene was physically separated from other glycolytic genes with bacterial origins. This gene organization was likely achieved by a random insertion of the laterally transferred gene. On the other hand, in the C. thermocellum genome, the laterally transferred GAPDH gene appeared to cluster with other eubacterial glycolytic genes. We discuss possible scenarios for the evolutionarily chimeric glycolytic gene cluster in the C. thermocellum genome.

Updating the distribution of elongation factor-like gnes in eukaryotes.

Elongation factor-like protein (EFL) is a GTPase recently identified, and proposed to bear the principal functions of translation elongation factor 1a (EF-1α). Pioneering studies of EF-1a/EFL evolution revealed the phylogenetically scattered distribution of EFL amongst eukaryotes, suggesting frequent eukaryote-to-eukaryote EFL gene transfer events and subsequent replacement of EF-1α functions by EFL. We here report new EFL sequences of two cryptomonads Cryptomoans ovata and Goinomonas amphinema, two red algae Chondrus crispus and Gracilaria changii, the foraminifer Planoglabratella pecularis, and the centroheliozoan, Rahidiophrys contractilis. We failed to recover the monophyly of cryptomonas in the EFL phylogeny, suggesting two independent EFL acquisitions in the protist group. As expected from the organismal phylogeny, the foraminifier Planoglabratella branched with the cercozoan Bigelowiella natans in the EFL tree. Raphidiophrys showed no evolutionary affinity to any eukaryotes considered in the EFL analyses. The updated EFL data presented here demand more EFL gene transfer events in EF-1α/EFL evolution than previously postulated.

10th International Colloquium on Endocytobiology and Symbiosis

Monophyly of chlorophyll-c containing plastids?: multigene phylogeny under the unlinked/separate model conditions.

Recent multi-gene phylogenetic analyses of plastid-encoded genes have recovered a robust monophyly of chlorophyll-c containing plastids (Chl-c palstids) in cryptophytes, haptophytes, photosynthetic stramenopiles, and dinoflagellates. However, all the plastid multi-gene phylogenies published to date utilized the “linked” model, which ignores the heterogeneity of sequence evolution across genes in alignments. Both empirical and simulation studies show that, compared to the linked model, the “unlinked” model, which accounts for gene-specific evolution can greatly improve multi-gene estimations. Here we newly sequenced 46 genes of Chl-c plastids, and examined the Chl-c plastid evolution by multi-gene analyses under the unlinked model. Unexpectedly, Chl-c plastid monophyly received only low to medium support in our analyses based on multi-gene data sets including up to 4,829 alignment positions. Although we systematically surveyed and excluded the genes that could mislead estimation, the (inconclusive) support for Chl-c plastid monophyly was not significantly altered. We conclude that the estimates from the current plastid-encoded gene data are insufficient to resolve Chl-c plastid evolution with confidence, and are highly affected by genes subjected to the analyses, and methods for tree reconstruction applied. Thus, future data analyses of larger multi-gene data sets, preferentially under the unlinked model, are required to conclusively understand Chl-c plastid evolution.

植物学会大会 第71回 シンポジウム

一次植物におけるelongation factor (EF)-like遺伝子の侵入・EF-1α機能乗取り

翻訳伸長因子elongation factor 1α(EF-1α)は、アミノアシルtRNAと結合しそれをリボソームAサイトに運搬するタンパク質である。このようなタンパク質合成の必須ステップを触媒するため真正細菌類、古細菌類、真核生物に普遍的に分布し、そのアミノ酸配列は高度に保存されている。近年、EF-1αと機能的相同ではあるが、進化的起源が異なるelongation factor-like(EFL)遺伝子が発見された。EFL遺伝子をコードする真核生物群は必ずしも互いに系統的近縁でないため、①EFL遺伝子は真核生物間を水平移動し、②ゲノム中にコードされていたEF-1α遺伝子はEFL遺伝子に機能を乗っ取られ、③EF-1α遺伝子はゲノムから消失したと推定される。この仮説に基づくと、進化的中間段階としてEFL・EF-1α両遺伝子をゲノム中に保持する期間が存在するはずであるが、そのような真核生物種は報告されていなかった。しかし、最近我々の研究により、原始紅藻類PorphyraにおいてEFL・EF-1α両遺伝子の発現を確認した。興味深いことにCyanidioschyzon merolaeではEF-1a遺伝子だけがコードされているため、原始紅藻類の進化中でEF-1αàEFLへのトランジションが起こり、Porphyra類はその中間段階であると考えられる。また我々は、珪藻類はゲノム中にEFL・EF-1α両遺伝子はコードされるが、EFLあるいはEF-1a遺伝子のみが発現していることを確認した。従って珪藻類は、EFL・EF-1α両遺伝子が発現するPorphyraよりもさらにEFL侵入が進んだ中間段階であると考えられる。

平成19年度日本水産学会春季大会

有毒渦鞭毛藻Alexandrium catenellaのミトコンドリア大サブユニットrRNAは断片化している

【目的】 渦鞭毛藻Alexandrium catenellaは神経毒STXを生産し、麻痺性貝毒の原因となるため水産上有害な生物である。本種の生態や生理をゲノム理解するためにも、細胞内で何が起きているのか把握することは極めて重要である。本発表では、A. catenellaを用いて、エネルギー生産にかかわる重要な器官であるミトコンドリア(mt)の遺伝子、rRNAの特徴について報告する。

【方法】 A. catenella ACY12株からCTABバッファーを用いてDNAを抽出し、RNAはRNeasy Plant Mini Kit (QIAGEN) を用いて抽出した。cDNAの作成およびRACEは3’Full RACE CORE Kit (TaKaRa)を用いた。PCRによって得られた産物は、クローニング後塩基配列を決定した。

【結果】 A. catenellaのシトクロムcオキシダーゼサブユニット1遺伝子とシトクロムb遺伝子間の介在配列に大サブユニットrRNA遺伝子の配列を確認した。本配列は約120bp程度と本来の全長と比較して非常に短く、機能しない偽遺伝子である可能性があった。しかし、RACE法によって本断片およびその他2種類のrRNA断片の発現が確認されたため、渦鞭毛藻のmt rRNA断片化されてコードされており、転写されたrRNA断片が機能する可能性が示唆された。

日本藻類学会 第31回大会 ワークショップA 「最新!分子系統解析法」

「分子系統解析ってコンピューターがやるから(簡単だし)間違いないんじゃない?」って本当か?

分子系統解析は生物自体の類縁関係を推定する(本来の?)目的以外にも、多くのアプリケーションがある。例えば、多重遺伝子ファミリー解析では遺伝子ファミリー間での進化過程・タンパク質機能の分化過程にも知見を与えることが可能である。しかしその系統推定の結果は、あくまで我々が解析前に設定する条件に大きく依存し、僅かな条件設定の違いが劇的な解析結果の違いに結びつく場合が少なくない。つまり、解析条件および配列データの特性によっては深刻なアーティファクトを引き起こすのである。本ワークショップの前半では、まず3つの系統解析法(最大節約法・距離法・最尤法)の概要を解説した後、現存データ、シミュレーションデータをもちいて3つの解析法の特性について論じる。特に最尤法を用いて解析する際の、条件設定(モデル選択)の重要性について解説する。またタンパク質遺伝子配列を系統解析する際、塩基配列レベルで解析すべきか、それともアミノ酸レベルで解析すべきかについて、現存データの解析結果について解説を行う。

日本藻類学会 第31回大会

従属栄養性渦鞭毛藻Crypthecodinium cohniiにおけるプラスチドatpB遺伝子

存在する。ほとんどの光合成種はカロテノイド系色素としてペリディニンタイプの色素を持つ。ペリディニンタイプの渦鞭毛藻の色素体ゲノムは2 kb から3 kb ほどの環状DNA であり, それぞれ0 から3 遺伝子をコードしている。一方,従属栄養や寄生性の渦鞭毛藻はもとは色素体を持っていたが,それぞれ水平的に欠失させたと考えられている。しかし, もともと持っていた色素体がどのようなタイプであったかは知られていない。

著者らは, 従属性渦鞭毛藻Crypthecodinium cohnii DNAを用いたPCR により得られた断片についてシーケンスを行い, プラスチドATP 合成酵素 beta chain (atpB) 遺伝子を得ることに成功した。atpB のアミノ酸配列を用いて系統解析を行った結果, Amphidinium operculatum 等のぺリディニンタイプの渦鞭毛藻と単系統群を形成したため, C. cohnii はもともとぺリディニンタイプの光合成渦鞭毛藻であり, 進化の過程で従属栄養性へ移行したと考えられた。今後, 本遺伝子の発現の確認およびコードされているゲノム構造について詳細に解析する予定である。

真核生物におけるEF1α-like(EFL)遺伝子の分布と関係性について

翻訳伸張因子Elongation factor 1 α(EF1 α)はタンパク質合成に必須であり,全ての生物においてそのアミノ酸配列は高度に保存されている。また,機能的に重要な遺伝子であるために高度に発現しており,EST 解析により容易にそのmRNA 配列を同定することができる。しかし近年,いくつかの真核生物グループにおいてEF1 αを持たず,代わりにEF1 αのアミノ酸配列に相同性を示すが,明らかに配列の異なるEF1 α -like(EFL)遺伝子を持つものが存在することが明らかとなった。EFL を持つ生物グループはEF1 αを持っていないため,EFL がEF1 αの代替タンパク質として機能していると考えられる。また,このEFL を持つ生物グループは系統的に近縁なグループ間というよりも真核生物全体において点在して分布しているため,それらの祖先的生物からEFL を受け継いでその後いずれかの遺伝子を喪失した可能性が挙げられる一方,EFL が水平転移によって他の真核生物グループへと移動し,EF1 αに取って代わってその機能を果たしていることも考えられる。しかし現時点で,EFL遺伝子を持つ生物グループの存在の報告がまだ少なく,EFLの登録配列数体も少ないため,真核生物全体におけるEFLの分布とその系統関係は明らかではない。

そこで,今回新たにEFL を持つことが明らかとなったForaminifera やCentrohelida のEFL アミノ酸配列, またEFL を持つ生物グループの一つであるCryptomonadida から新たなEFL アミノ酸配列を決定し,EFL を分子マーカーとした分子系統解析を行い,EFL の分布とその進化について検討を行ったので報告する。

相模湾コールドシープの堆積物中における真核微生物の遺伝的多様性

近年,環境サンプル中に存在する真核生物のrDNA を指標とした培養を介さない多様性解析(環境クローン解析)によって,環境中における真核(微)生物の驚くべき多様性が明らかとなりつつある。しかしそれでも従来の環境クローン解析では,真核性微生物の多様性を実際より低く見積もってしまっている可能性が示唆されている。そこで本研究では,相模湾コールドシープ(冷水湧出域)で採取した堆積物サンプルだけではなく,そのサンプルを用いた2種類の粗培養サンプル(計3種類)における真核性rDNA の多様性を解析した。その結果,堆積物サンプルから得たrDNA クローンの過半数は担子菌のCryptococcus curvatus 由来であり,その他にはApicomplexa,Ichthyosporea,Phytomyxea のような寄生性真核生物由来のものも見られた。一方,一つの培養サンプルからは補食性ストラメノパイル由来の配列が比較的多く得られ,もう一つの培養サンプルからは,以前に深海熱水噴出孔で検出されたエクスカベート由来の配列が圧倒的に多く得られた。これらの配列は培養を介していない堆積物サンプルからは検出されなかったことから,通常の環境サンプルだけでなく,その培養サンプルも同時に解析することによって,環境中に存在する真核性微生物の多様性をより正確に把握できるものと思われる。