<がんの悪性化機構解明と治療標的分子探索>
現在日本人の死亡率のトップを占める疾患は「がん」です.がんは早期に発見できれば根治の可能性が高くなります.よって早期診断法の確立が重要な課題となります.一方,発見が遅れると治療が難しくなります.しかし最近,がん細胞特異的に高発現あるいは変異を有する分子を同定し,その発現や機能を抑制する治療薬(分子標的治療薬)の創製により,これまでの化学療法剤とは異なり副作用が少なく治療や延命効果が期待できるようになってきました.よって,がんにおいて特徴的発現を示す分子の同定が世界中で活発に進められています.当研究室においても既に前立腺癌,膵癌で特徴的高発現するPCA-1をはじめとするいくつかの分子を発見しており,現在ABHグループにおいてがん細胞における機能解析や治療創薬研究を進めています.しかしまだ新たながん細胞特異的分子の同定が切望されています.がんグループでは医学部臨床医との連携により,がんの術後検体を用いてマイクロアレイによる網羅的な遺伝子やmiRNAの発現解析を行っています.さらに,それら分子のin vitro, in vivoにおける機能解析研究により,がん細胞の無秩序な増殖や浸潤・転移における役割の解明を進めています.これら研究成果を,がんの診断・治療の新たな標的となる分子の同定へとつなげています.