人体の表皮、筋肉、内臓、血管、骨、歯などを3Dプリンタで3Dモデルを造形するためには、断層画像群から、1)任意領域の抽出(医療分野ではセグメンテーションと呼ばれる)、2)抽出された画素群(3D画像の場合、各画素はボクセルと呼ばれる)からポリゴン(多角形)で構成される3Dモデルへの変換、が必要である。断層画像群からポリゴンデータへの変換は、主に等値面生成アルゴリズムが使用される。ここで、等値面とは、天気図などで用いられる等高線を3次元に拡張したものと考えると分かり易い。この等値面生成が十分密に測定された断層画像群に対して行った場合、数百万から数千万の膨大なポリゴン数が発生する。そのため、3Dプリンタが造形可能な範囲のポリゴン数に削減して造形する必要がある。さらに、そのポリゴンモデルは空間的に閉じている(穴がない)必要があり、同時に重複面や空間上のゴミも取り除く必要がある。
本稿では、3Dプリンタの造形原理と造形方法、医用画像を対象とした3Dプリンタによる造形方法、臨床や術前支援のための造形事例について概説する。さらに我々が研究開発中の効率的な手術環境を実現するためのソフトウェアアプローチ(3次元画像処理システムや歯科分野や整形外科向けの術前計画支援システムの研究開発)と、テイラーメイド人工関節や犬用カスタム骨折プレート(図2)、手術時の補助工具の製作に関するハードウェアアプローチ(3Dプリンタ、精密鋳造装置、EBM(Electric Beam Melting)装置の応用)を紹介する。