アドラー心理学の著書でよく使われる神経症とは、ノイローゼ(不安神経症、鬱病など)やヒステリー(解離性障害、転換性障害)を指します。
解離性障害や転換性障害はあまり聞きなれない病名ですが、解離性障害とは、意識が飛んだ状態や健忘症、多重人格などの症状を言います。転換性障害とは、病気でもないのに、体が痛む、見えない、歩けない、体の一部がひきつるなどの症状を言います。
アドラー心理学では、神経症の要因を①神経症が生じる条件(神経症的性格を有していること)、②副次的要因(きっかけ)、の二段階で捉えています。また、神経症は、何らかの目標を達成する手段として生じ、維持されるとも言います(目的因論)。ここでは、その目標のことを、③神経症の目標、と呼ぶことにします。
①の神経症を生じる条件とは、劣等感、共同体感覚の欠如、不適切な目標(非現実的で空想的な目標など)、不適切なライフスタイル(優越コンプレックス、自己中心的、他者への愛情の欠如など)等があるとされます。
②の副次的要因は、嫌悪体験(ひどい失敗の体験)、ショックを受けるような体験などがあるとされます。
また、神経症の症状は、自身を傷つけそうな体験を避けることで自尊心を保てたり、他者の関心を自身に向けさせることで他者を支配できるなど、自身に対して利益をもたらす場合があります。前者の例で言うと、自身を傷つけそうな体験を避けることが③の神経症の目標に該当し、この目標を達成するための手段として、神経症が生じたり、維持されるという見方ができます。
アドラー心理学の心理療法では、神経症者の振る舞いや話し方を観察したり、家族布置(何番目の子供か)や早期回想(子供の頃の出来事の回想)、よく見る夢について聞くことで、本人が抱いている目標やライフスタイルを探ることから始めます。
その上で、①劣等感の克服、②共同体感覚の育成、③目標やライフスタイルの明確化および再方向付け、などを援助していきます。