生活保護Q&A

Q1 私は、60歳代のひとり暮らしの男性です。ひとりで自営業をしていましたが、昨今の不況の影響で売上が激減し、持病も悪化したため、月々の経費が支払えず、廃業しました。

私は、これまでにも生活が苦しく、国民年金の保険料が支払えない期間があったため、年金は2カ月に1回約4万円しか支給されません。また、私には、預貯金など財産もなく、生活費を援助してくれる親族もいないため、このままでは生活していくことができません。

このような場合生活保護があると聞きましたが、どのような制度でしょうか?

A 生活保護は、憲法25条1項によりすべての国民に対し保障されている生存権の具体化として、生活保護法にその内容が規定されています。

具体的には、病気やけがで働けなくなった、失業などで収入がなくなったなど、何らかの原因によって生活に困っている人に対し、その程度に応じて国が定めた健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに一日も早く自立できるように支援する制度です。

Q2 生活保護の内容を教えて下さい。特に、私の場合、持病の治療中であり、現在の医療費や将来の介護費用が心配です。

A 生活保護には、 生活扶助(衣食や光熱水費など日常生活に必要な費用の支給)、住宅扶助(家賃、地代、住宅の補修などに必要な費用)など8種類があります。

病気やけがの治療に必要な費用の保障としては医療扶助が、介護保険サービスが必要な場合の費用の保障としては介護扶助があります。それぞれ必要な審査を経て、あなたの自己負担金額に相当する金額が医療機関、介護事業所などに直接支払われます。

あなたの場合生活保護の受給が認められると、医療扶助の適用により国民健康保険による診療の範囲内での医療費の自己負担金、介護保険による介護サービスの範囲内での介護サービスの自己負担金を支払う必要がなくなります。

Q3 生活保護を受ける条件は、どのようなものでしょうか。

A 生活保護は原則として世帯を単位として行います。そして、国が定めている生活保護基準によって算定されたその世帯の最低生活費と、世帯すべての収入とを比べて、収入が少なければ生活保護に該当します。

ただし、次の条件があることに注意して下さい。

1 世帯のうち働くことのできる人は、その能力に応じてまじめに働いて収入を得る努力をすることが求められます。

2 預貯金、生命保険、自動車、居住に必要でない土地や建物、耕作していない田畑などの資産は、まず生活のために活用することになっており、資産の種類に応じて解約、売却など最も効果的な活用を求められます。

自動車の保有は、山間部に居住される方の場合など例外を除いて、原則として認められていません。

また、ローン付住宅の保有は、原則として認められていません。

3 夫婦、親子などの扶養義務者からの援助を実際に受けられる場合は、こうした人たちからの援助が優先されます。

4 年金、手当など、他の法律や施策で受給、利用できるものは、それを優先して利用します。

したがって、生活保護の他に利用できる制度がないかどうか、担当員に相談することが考えられます。

あなたの場合は、年金の受給が優先されます。

具体的な最低生活費は、あなたの居住地によって異なりますが、年金収入が一月にして2万円であれば、最低生活費から年金額を差し引いた金額の支給を受けられることが原則となります。

Q4 生活保護を受けるための手続は、どのようにすればいいのですか。また、私が手続をしてから生活保護の受給までの流れを教えてください。

A 生活保護を受けるには、本人などからの申請が必要です。

市にお住まいの場合はその市の福祉事務所(新潟市の場合は各区の福祉事務所)に、町村にお住まいの場合はその地域の県の福祉事務所に、生活保護の申請書があります。この申請書に必要事項を記入し、福祉事務所に提出してください。

病気などで申請の手続きに行くことができないときは、福祉事務所に連絡してください。

申請がされると福祉事務所の担当員(ケースワーカー)が家庭訪問などの方法により保護が必要かどうか、あなたの現在の生活状況、健康状態、扶養義務者の状況、あなたの収入、資産、その他保護の決定に必要な事項の調査を行います。

この調査結果をもとに、定められた基準により保護を受給することができるかどうか、また、どの種類の保護をどの程度受給できるかについて、福祉事務所が判断し、申請日から14日以内(遅くとも30日以内)に決定し、その決定の内容を文書で申請者に通知します。

保護が開始された場合原則として毎月決められた日に1ヵ月分の保護費が金銭で支給されます。

保護の決定について納得がいかない場合でも、決定があったことを知った日の翌日から60日以内に都道府県知事に対する審査請求をしないと、争うことができなくなります。したがって、その場合お早めに弁護士へのご相談をお勧めいたします。

Q5 私は、福祉事務所の窓口に相談に行き保護の申請をしたいと言いましたが、申請の手続ができませんでした。私は、お金がないのですが、弁護士さんに依頼して一緒に申請に同行してもらうことができますか。

A 弁護士会では法テラスに委託し、生活保護の申請に対する弁護士の同行等について、登録した弁護士の支援を受けられる制度を実施しています。この場合ご本人の自己負担はありません。

Q6 生活保護を受給した場合、私にはどのような義務がありますか。

A 以下の義務があります。

1 届出の義務

収入、支出その他生活状況に変動があったとき、住居や家族構成について変更するがあったときなどには、すぐに福祉事務所に届け出てください。

2 指導・指示に従う義務

生活状況に応じて、適切な保護をするために指導・指示がなされることがあります。

この指導・指示は強制ではありませんが、これに従わない場合保護が受けられなくなることがあります。

指示・指導に納得のいかない場合、担当員にその指示・指導の根拠(通知など)を示すように求め、弁護士へのご相談もご検討ください。

3 生活向上の義務

働ける人は能力に応じてまじめに働き、支出の節約をはかるなど、生活の維持、向上に努力しなければなりません。

この点についても、担当員の指示・指導に対し納得がいかない場合、2と同様の対応をお勧めします。

4 譲渡禁止

保護を受ける権利を他人にゆずりわたすことはできません。

Q7 いったん受け取った保護費の返還を請求される場合があると聞きましたが、どのような場合でしょうか。

A 以下の場合、いったん受け取った保護費の返還を請求されることがあります。

1 急迫した事情などのため、資力があるにもかかわらず、保護を受けた場合、その受けた金品に相当する金額の範囲内の額の返還を請求されることがあります。

2 事実と違う申請や不正な手段により保護費の支給を受けた場合支給額の返還を請求されます。この場合その金品を徴収されるだけでなく、法律により罰せられることがあります。

これらの返還に関する処分に対し納得いかない場合でも、これらの処分について決定があったことを知った日の翌日から60日以内に都道府県知事に対する審査請求をしないと争うことができなくなります。したがって、お早めに弁護士へのご相談をお勧めいたします。

☆ なお、すべての弁護士が生活保護に詳しいわけではありません。生活保護に関して弁護士に相談されたい場合には、弁護士会、法テラスなどで、詳しい弁護士の紹介を受けることもご検討下さい。

(弁護士 大澤理尋)