ピアノ作品情報

SOLO

ピアノソナタ第1番(1986年)、第2番(1988年)、第3番「ロマンティック・ソナタ」(1995年)

「3 曲のソナタ作品に、ジャズ風の特徴(リズムやハーモニー)と、ポストロマン派の近代的なピアニズムと古典的な様式の伝統的な要素を融合した。」(←作曲者の言) 第1番は単一楽章。第2番は三楽章形式。第3番はタイトルが付いており単一楽章。

パガニーニの主題による変奏曲/Variations on a theme of Paganini (1987年)

ローゼンブラットのソロ作品の中では現時点において最高の充実度を持っている。この曲について作曲者は「現代のピアノ演奏において最も効果的なメソードを取り入れ、更に極めて典型的なジャズの特徴(スイングジャズ)を組み合わせている。」と述べている。歴史的な芸術家たちはこのパガニーニの主題に魅力を感じ、作品に取り入れてきた。リスト、ブラームス、ラフマニノフ、ルトスワフスキー、近年ではファジル・サイ、そしてローゼンブラットがそこに加わる。本作品の第1変奏冒頭の爆発的なリズム、野性的なベースライン、右手で奏される4度の和音のあまりにも強烈な登場に、「やられた~ッ!」「ツボにハマった!」と思わずにはいられない。各変奏は高度な構築性を持っており、最後にはフーガが置かれている。フーガは常に疾走感を帯びており、破壊的なフィナーレとなっている。世界初演はDmitri Ratser。 なお、作品中の幾つかの変奏は音楽家などの「肖像」である。第1変奏は「Gino Vannelli」、第2変奏は「Modern Brahms」、第4変奏は「Modern boogie」、第6変奏は「Swing」、第7変奏は「Thelonius Monk +Oscar Peterson」、第9変奏は「Bill Evans」、第10変奏は「Oscar Peterson」をイメージしているそうだ。これらは作曲家自身による説明だが、楽譜には記されていない。超絶技巧である上に、拍子やリズムの表現も非常に難易度の高い作品だが、ローゼンブラットの魅力満載である。氏の生演奏を間近で拝聴したが、大変ユニークかつカッコイイ弾きっぷりで、まるで『ピアノと漫才』をしているよう。ベースの鳴らし方はかなり分厚く強引なまでに響かせていたのが印象的だった。 ローゼンブラット氏による公開レッスンを見学したが、彼はレッスン受講生に「オスカー・ピーターソンを聴いてください。」とアドバイスしていた。

ショパンの主題による変奏曲/Variations on a theme of Chopin (1989年)

ショパンのプレリュードがテーマとなっている。作風は「パガニーニの主題による変奏曲」と同様のスタイルで「肖像」が登場する作品である。世界初演はArcadi Figlin。第2変奏は「Modern Beethoven」、第4変奏は「Swing」、第7変奏は「Oscar Peterson」、第9変奏は「Slow Blues 」、第13変奏は「Sicilyana」とのこと。

エチュード・イン・ブルー/Etude in "Blue" (1989年)

和訳すると「ブルース風練習曲」ということだろうか。ジャズピアノ界の巨匠であるOscar Peterson、Garner、Shering の演奏スタイルの特徴を組み合わせている。また、ローゼンブラットはガーシュインをオマージュした作品を幾つか書いている。なおタイトル中の「Blue」(ローゼンブラットはBluesと書く時もある)はもちろん一般名詞であるが、「ラプソディ・イン・ブルー」への敬意を感じさせる命名である。 世界初演はDm. Ratser。

タンゴ/Tango(1994年)

2 台ピアノ編で有名なこの曲は、ソロで演奏するにはリズムが取り難く高度な技術が必要である。2 台ピアノ版の完成度を知っていると物足りなさを感じるかもしれないが、ピアノが1台しか置かれていない環境には嬉しい。 ピアソラを好むローゼンブラットらしい作品。ぜひデュオにも挑戦していただきたい。

鉄腕アトムの主題によるファンタジー/ "Astro 〓 Boy"(1999年)

この作品は手塚治虫の人気アニメ「鉄腕アトム」の’あのメロディ’がテーマ である。しかしローゼンブラットの手によって全く異なる曲調に変身した。ノクターンの特徴とジャズの要素を組み合わせているという。リクエストをしたのは何と日本人ではなく、Mikhail Khokhlow (グニシン・スクールのディレクターでローゼンブラットの友人)。そしてニコライ・トカレフが来日した際にアンコールでこの曲を演奏し、思いがけないメロディが飛び出したことに聴衆が大変喜んで話題になったいう。これが世界初演のようだ。そして2005年3月11日、ローゼンブラットが初来日公演した際に、自作自演が実現したのである。来日の際、ローゼンブラットとシンキンの乗ったJR山手線が「鉄腕アトム」の名所「高田馬場駅」で停車した時、プラットホームで「鉄腕アトム」のメロディチャイムが流れたが、二人はこれといって反応なし(実はちょっと反応を期待してしまったのだ・・・)。この作品はテレビ名作アニメのメロディということもあり、著作権の関係で楽譜が販売されることは難しいが、マニアックなファンによって耳コピによるソロ楽譜が数種類存在するらしい。 最近では2006年5月に植松洋史によって2台4手編が完成し、2006 年9月3日に筆者と植松がファンタスティックに初演する。

クリスマス・ファンタジー/"Christmas 〓 Fantasy" (2001年)

12 月のクリスマスの季節には、世界のキリストを信仰する国々で様々なクリスマス・ソングが歌われる。この曲は最も有名なクリスマス・ソングによるパラフレーズである。世界初演はニコライ・トカレフ。 更に、サイケデリック座による2台4手編も存在し、こちらは2006年9月3日に初演。 ドイツの「モミの木」、オーストリアの「聖しこの夜」、ロシアの「小さな松」、アメリカの「ジングル・ベル」が鮮やかに作品を飾る。例によってジャズの語法を交えた和音、楽節、リズムを使用している。ロシアのクリスマス・ソングのオリジナルは素朴でどことなく物悲しさ感じさせるものだが、この曲中では女性的な甘いタッチで描かれている。ちなみにロシアのクリスマスは1月に行われるそうだ。 余談ですが 「音楽切手こぼれ話」によると、「聖しこの夜」は、1818年ザルツブルクの北方、ドイツとの国境近くの小さな村・オーベルンドルフにあるニコラウス教会で生まれた。その年クリスマスの前日、教会のオルガンがこわれたため、 若い牧師のヨーゼフ・モーアが作詞し、親友の学校教師フランツ・グルーバーに急いで作曲してもらい、二人の重唱で歌ったのがそもそもの始まり、その後燎原の火のように世界を席捲したという。

ユモレスク・エチュード / Etude-Humoresque for piano(2006・6・15)

~作曲者からのメッセージ~

ギターリスト兼ピアニストのMarshall Harrison(マーシャル・ハリソン)からリクエストがあり、作曲しました。色んなピアノのスタイルを一つのエチュードに入れるように努力しました。

白鳥の湖 / Swan‐Lake

リスト・ファンタジー/

DUO

「カマリンスカヤ」~2つのロシアの主題によるファンタジー/Kamarinskaya (1994年)

この作品は「モダン・ピアノ・デュオ」というローゼンブラットが主宰するオレグ・シンキンとのピアノ・デュオの歴史の幕開けを飾るものとなった。原曲は1991年、オーケストラの為に作曲されている。この2台ピアノ編が作曲される以前の1980年代、ローゼンブラットは自らソロリサイタルで自作の「パガニーニの主題による変奏曲」や「ピアノソナタ」を演奏していた。しかし、同時にそのような活動にもの足りなさも感じていた。そのような折、親友であるオレグ・シンキンによって「あなたには、オーケストラの為のカマリンスカヤ・ファンタジーがあるのだから、2 台ピアノの為に編曲したらどうか」というアドバイスを受けた。そしてローゼンブラットは初のCD制作において、オレグ・シンキンとのピアノ・デュオによってこの曲のレコーディングを実現。彼らは二人とも同じ世界観と時間感覚、そして同じ物事の受けとめ方ができる理想的なデュオだった。これがきっかけとなって今日の「MPD(モダン・ピアノ・デュオ)」があるという。 この曲にはミハイル・グリンカ(ロシアの作曲家)の「カマリンスカヤ」と同じ主題が使われ、ジャズ風に展開していくローゼンブラット独自の語法が溶け込んでいる。

ビゼーの「カルメン」の主題によるファンタジー/Carmen 〓 Fantasy (1994年)

原曲は「クラリネット&ピアノ」編成の為に作曲された。ローゼンブラットの友人である優秀なクラリネット奏者アントン・ドレスラー氏に献呈された。このファンタジーではビゼーの最も有名な主題を、ジャズハーモニーとリズムが飾る。この時期のローゼンブラットは、クラリネットや2台ピアノの為の超絶技巧的な作品を作ることに大変熱心だった。彼は筆者に「僕の2台ピアノ作品の中の最高傑作だが演奏するのは大変難しい。しかし僕たちがデュオをやってきて一番素晴らしいと感じているし、思い入れの深い作品だ」と熱く語った。 シンキンも異口同音に繰り返した。奥が深い作品である。個人的な意見だが、やはりこの曲は男女のペアで演奏されたい。

タンゴ/Tango(1995年)

「タンゴ」はご存知の通り男女が情熱的に踊るラテン音楽。ロシアでは日本より遅れて2000年に入りピアソラが大流行した。この曲はそのピアソラがロシアで大ブレイクする以前に作曲された。ローゼンブラットはピアソラのタンゴを大変気に入っている。タンゴの特徴である伝統的なリズムとモダンなハーモニーが組み合わされた、情熱に満ちたローゼンブラットのオリジナル作品である。やはり大変人気が高い。ぜひタンゴならではの二人のやり取りを堪能してほしい。演奏次第では二人の絡みが非常に面白いし、何よりも官能的な大人の曲である。ローゼンブラットとシンキンのデュオは男性だけの演奏にもかかわらずドキドキしてしまう・・・・・恋多きロシアのお国柄なのだろう、さすがだ! 彼らのようなセンスのない筆者は、タンゴのリズムに親しむため実際に「アルゼンチンタンゴ」を体験してからこれを演奏してみようと計画している。

自作主題によるユダヤ風ファンタジー/Fantasy on the own theme in jewish manner (1995年)

ある夜ローゼンブラットはこの作品のメロディの夢を見たという。朝起きてこのメロディを書きはじめた。そしてユダヤ民族の伝統的音楽の語法を用いてそれをベースにファンタジーを作曲した。ほんの少しジャジーな部分も入っている。ローゼンブラットとシンキンは共にユダヤ人である。 民俗音楽をテーマに作曲することの多いローゼンブラットにとって、この主題は必然的なものだったに違いない。

前奏曲とクワジ・オスティナート/Prelude and Quasi-Ostinato (1996年)

原曲は1996年、オーケストラの為に作曲された。「プレリュード(前奏曲)」は少しジャジーでロマンティックなハーモニーを用いながらもプロコフィエフを意識した作風に、「オスティナート」は全体を通して不気味な雰囲気のリズムを一定に保つことを試みたという。バッハのフーガのように主題が繰り返しあらわれる。「クワジ」とは「~のように」、「オスティナート」は「ある一定の音型をたえず繰り返すこと」。 ローゼンブラットはこの作品で、通常よりも更に不協和音を多用しているようだ。

2つのロシアの主題によるコンチェルティーノ (連弾曲)/Concertino on 2 russian themes (1997年)

日本国内において「二人羽織」と俗称されることもある大変人気のある作品。この作品は「ピアノ連弾」「ピアノと弦楽器」「ピアノとオーケストラ」の3つのスタイルで存在する。この連弾編は、1999 年~2000年にかけて日本で開催されたピアノデュオ作品による第5回作曲コンクール(国際ピアノデュオ協会主催)において、ローゼンブラットが特別賞・毎日新聞社賞を受賞したときの作品である(そのときは来日していない)。世界的にもよく知られるロシアの民謡「カリンカ」と「モスクワの夜」のメロディが使われている。この2つの主題は、ジャズ風なリズムやハーモニーの動きと共に、ストラヴィンスキーのごとくロシア民族の特徴を生かしながら、ロマンティックな趣で組み合わされている。観客側が聞くという行為だけに留まらず、見て楽しむこともできる妙技(作曲者はPiano stuntsと言っている)がいくつか使われている。これはすばらしいヴィルトゥオーゾであると同時に、ピアニストにとっても重宝がられる作品であろう。ピアノ1台、ピアニスト2人という条件があってはじめて可能な、高いエンターテイメント性が追求されている。 筆者主催の2005年3月11日に行われたローゼンブラット初来日公演の折、この作品を2台8手「ダブル・ピアノ・デュオ」で演奏したいと申し出た。ローゼンブラットから「それは面白いパフォーマンスだ!」という返事をいただき実行した。ただし曲の最初から最後まで2台8手という訳ではなく、前半は1台4手で演奏され、演奏者が途中で交代し、クライマックスで4人となった。更に筆者はこの経験をもとに2005年7月24日のミュージック・パフォーマンスコンサートにおいて、12 人の有志による「リレーパフォーマンス」を実行し見事に成功させた。 ピアノという楽器の可能性が膨らむユニークな作品であり、また比較的弾き易いのが嬉しい。この作品はローゼンブラットの「特許」だと確信している。

ローラ/Lola (1998年)

タイトルが決まった経緯が面白い。ローゼンブラットが初めて親友オレグ・シンキンと手紙のやりとりをした時の、二通の手紙がその由来である。「LO」はOlegから初めてもらったLetter、「LA」はAlexanderが初めて出したLetterを指している。その二つの「手紙」を組み合わせることで、オリエンタルな響きを持つ「ローラ」という名が生まれた。この作品自体にも東洋風な趣が漂っている。 ロシア国外では、ドイツにおいてシンキンと自作自演されたことがある。

ワルツ・エレジー/Waltz 〓 Elegy (2000年)

初期は「12 のトロンボーン奏者」の為に書かれ、1986 ~1989年には「フルート、ホルン、弦楽器」の為に書かれた。後者は、ローゼンブラットの友人であり、ホルン奏者のアルカディ・シルクローパーの為に特別に創作された。紛れもなく純粋なロマンティック作品である。チャイコフスキーのようでありながら、やはりジャズの和音とリズムを組み合わせている。何ともいえない妖艶なハーモニーが漂う作品で、時には響きがはかなく途絶え、時には踊るようにリズムが刻まれる。 ローゼンブラットとシンキンの音のやり取りは言葉では言い尽くせないほどセクシーで、鳥肌が立つ。

もしも、タンゴがロシア人によって発明されていたら.../If tango was invented by Russians... (2004年6月)

原曲はヴァイオリン、クラリネット、ピアノ+弦楽器の編成で作曲された。2005 年3月11日の初来日公演の為に2台ピアノ編が新たに作曲され加藤麗子へ献呈、加藤らにより世界初演された。当初、ローゼンブラットは「日本公演ではピアノ4台で演奏して、タンゴを踊りながらピアノの周りをぐるぐる回ろう!これはグッドアイデアだ!」ということで、ピアノ4台を所有するホールを選んだが実際問題として練習する場がなく、最終的に2台ピアノ作品として作曲された。コルトーが愛用していたピアノのように「両側に鍵盤が付いているピアノ」があれば。。。 このタンゴはユモレスク(ユーモアのある気まぐれな性格を持つ曲)のような性格をもつ。最も人気のあるロシア民謡「黒い瞳」「ヴォルガの舟歌」と、チャイコフスキーの「四季~6月・舟歌」、バレエ「くるみ割り人形~花のワルツ」が何とタンゴスタイルの中で出現する。楽譜のクライマックスには「Sing the main melody!」とも記譜されている。来日公演では、この「歌う」部分から更に2人加わり、4 人で歌いながら2台8手の演奏をした。この作品も難しい技術が要求されるが、演奏スタイルにも様々な可能性が感じられる、ダイナミックで贅沢な作品だ。 タンゴ好きなローゼンブラットのお気に入りの作品である。

ロンド・ア・ラ・モーツァルト/Rondo a la Mozart (2004年7月)

筆者はローゼンブラットのことを「現代版モーツァルト」と称してきた。それは彼の作品の性格とモーツァルトのそれがあまりにも似ていると思わずにはいられないからだ。原曲はピアノとオーケストラの為に作曲されている。陽気な笑い声が聞こえてきそうなユーモラスで超絶技巧作品。どれほど多くの作曲家がモーツァルトの「トルコ行進曲」に魅せられ、この作品をテーマに作品を披露してきただろうか。生き物のように躍動感に満ちたエネルギッシュな音が万華鏡のように展開していき、わずか4分の中に、ローゼンブラットの溢れんばかりの才能が鮮やかにあらわれている。このロンドでは、2 台のピアノの間で競争が行われているのだそうだ。確かに忙しい曲である。不協和音がそれを一層際立たせ、例によってジャズ風なカラーとの絶妙なバランスが素晴らしい。来日の際、ローゼンブラットは筆者に「この曲テクニックが本当に難しいよねえ・・・」としみじみ困った様子で語っていたのが微笑ましかった。2004 年7月に完成。2005 年3月にローゼンブラット&筆者のデュオによって世界初演され、ローゼンブラットお気に入りのピアニストでありミュージックパフォーマンスの発起人の一人である岡本美緒里氏に献呈された。

余談ですが、来日の際ローゼンブラットは練習前の指慣らしに、必ずといってよいほどモーツァルトの作品をゆったりしたテンポで30分以上弾いていた。 一般的な日本人ピアノ学習者がハノンやツェルニーをやるようなものだろう。

リムスキー・コルサコフの主題によるファンタジー/Rimsky-Korsakov 〓 Fantasy (2004年6月)

原曲は2003年、クラリネットとピアノの為に作曲されている。この作品にはリムスキー・コルサコフの異なる名作、「熊蜂の飛行」・交響組曲「シェエラザード」・オペラ「金鶏」・「サトコ」などが含まれている。ローゼンブラットが技巧的で華やかな作品を熱心に書いていた時期の作品。2004 年6月完成。 2005 年3月に筆者らによって世界初演され、筆者の友人である星川一洋氏へ献呈された。

日本の歌によるファンタジー~日本の未来である、チャーミングな世麗音に捧ぐ~(2台8手編)/Fantasy on Japanese Themes (dedicated to Charming Serene , the Tomorrow of Japan) (2004年8月)

2005 年3月11日に行われたローゼンブラット初来日公演「ダブル・ピアノ・デュオ」の為に、ローゼンブラットが憧れの国だと語る「日本」の観客へ、彼の特別な思いを込めて全精力を費やして書いた「傑作」。2004 年、筆者が十数曲の日本の名曲を気の向くままに五線紙におこして、コメントを付けて彼へ送った。「さくらさくら」「浜辺の歌」「荒城の月」「花」「ずいずいずっころばし」「かごめかごめ」「赤とんぼ」「上を向いて歩こう」など。彼が最初に選んだ曲はストレートに日本をイメージできるという「さくらさくら」。その他これに合いそうな明るい曲ということで選んだのが「浜辺の歌」と「赤とんぼ」。選曲において「さくらさくら」以外の曲については特別に象徴的な意味はなく、インスピレーションで選んだようだ。本作品はその後半年で完成した。曲の始まりはしめやかに美しく導かれてのどかな「浜辺の歌」から始まるが、次第に怒涛のようなスケールの大きい波へと変わっていく。ふと山へ目を向けるとそこには立派な寺が立っている、この時「さくらさくら」によって荘厳な鐘の音が遠くで鳴り響く。そしてテイクファイブの「赤とんぼ」を口笛で吹く若者、ナンパでもしながら街を闊歩しているような粋な調子。やがてラフマニノフ調のドラマティックな「さくらさくら」からスイングする「赤とんぼ」、この辺りからエネルギーが更に増していく。未来へ夢を抱きながら颯爽と奏でるブルース調の「浜辺の歌」、最後には「さくらさくら」までもがニューオリンズ・ジャズ・スタイルになってしまう。この曲が最後まで演奏された時、それを聴いた人はいつのまにかニューオリンズのベイジンストリートに立っているような気分になるかもしれない。ローゼンブラットのコンセプトは日本的な色合いを残しながら編曲するというものではない。3 つの日本の古い歌を素材にジャズをクロスオーバーしていくことで「全く違う作品として」作り上げたのだ。 これが彼のオリジナリティである。2005 年秋、加藤麗子&植松洋史によって2台4手編が完成し、2006 年9月3日に初演。

アヴェ・マリア (連弾曲)/Ave 〓 Maria (2004年12月)

ローゼンブラットのオリジナル作品であるカンタータ 『 BLAGOVESTIE(ブラゴヴェスチエ)』の一部が、ピアノ連弾用に編曲された。原曲は独唱・合唱とオーケストラによる大編成の宗教的作品である。ローゼンブラットがプロデュース・編曲・指揮を行ったCD「THE MASTERS' CROSSOVER」の11曲目のあとに、「Hidden track(隠されたトラック)」として収録されている。作者によると「この作品はカトリック教の聖書(Catholic text)に基づいて美しい素朴なメロディに作り上げたかった」という。ジャズの語法は用いていない。自作カンタータから起用した部分というのは「ソプラノ&メゾソプラノ」のデュエットの箇所である。筆者が渡露した2004年12月のこと、2005 年3月の日本公演のためにもう1曲用意することが急に決まり、数日後にこの連弾編が完成した。早速ロシア公演においてローゼンブラットとシンキンがアンコールで披露した。彼らの連弾に心を打たれたロシアの聴衆は割れんばかりの拍手を贈り、皆とてもいい顔をしてホールをあとにした。おそらくこの時のシンキンは初見演奏だったはずだが、プリモ(シンキンのパート)は神に祈りを捧げるごとく神聖な響きを生み出していた。そして来日した時もアンコールで演奏され、ため息が出るほどの二人の融け合った響きに会場が包まれたのは記憶に新しい。 楽譜はいたって簡単だが、心で音を奏ることの重要性を要求される小品である。演奏時間は4分半程度。伸びやかなメロディはできるだけ大きなフレーズで歌うように演奏されたい。

組曲「不思議の国のアリスの冒険」より / Suite "Alice in wonderland" (1994年 ・ 2005年)

■To be a Pig or not to be a Baby (1994年)

■Can Can (1994年)

■Tango ~Queen's Entrance (2005年秋完成)

さすがフィギュアスケートの盛んな国ロシアらしく、原曲は「氷上バレエ音楽」として世界的にも大成功をおさめたオーケストラ作品である。そして後に「モダン・ピアノ・デュオ」の為にこの組曲の中から「2 つの断片」として「To be a Pig or not to be a Baby 」と「カンカン」が2台ピアノ版で作曲され、CDから新たなキャラクターとして知られることとなった。そして2005年3月、ローゼンブラットとシンキンの初来日公演では楽しいパフォーマンスを見せてくれた。彼らがあまりにも楽しそうに演奏してくれるので会場から笑い声まで出ていた。公演後さらに筆者の依頼によってローゼンブラットが作曲をしたのが、組曲第3曲「タンゴ」(通称アリスタンゴ・・・ローゼンブラットが他のタンゴと区別してこう呼んでいる)である。この曲は加藤麗子&植松洋史のピアノユニットサイケデリック座に献呈された。 2006 年9月3日/彩の国さいたま芸術劇場小ホールにてサイケデリック座が世界初演。

モーツァルティーノ/Mozartino(2006年)

~作曲者からのメッセージ~

モーツァルトの幾つかの名曲によるパラフレーズである。僕はこの曲を創作するにあたり、お祭り騒ぎのような陽気な感じにしつつも洗練された上品なファンタジーにしようと考えていた。そして、わずかだがユーモラスな気分も盛り込みながら創作したかった。例によって和音、和声、メロディラインなどジャズのいくつかの語法を用いた。2台4手編成。2006年1月20日に完成し、E. Mechetinaに献呈した。

宮城ファンタジー / Miyagi 〓Fantasy(2006・8・15)

2006年12月上旬、ニコライ・トカレフ氏とローゼンブラット氏のピアノデュオコンサートが宮城県仙台市にある電力ホールで開催され、この時初演された。宮城県にゆかりの深い「荒城の月」と「斉太郎節」が主題として使われている。全体的にローゼンブラット作曲の「ワルツ・エレジー」のような、静かでゆったりとした曲調。2台4手編成。

2004年 ロシア訪問記

2005年 初来日&観光

2005年 招聘コンサート ★【ダブル・ピアノ・デュオ】

2006年 2度目の来日

ホントの話

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