認知科学会大会OS「知の生成をささえるものは何か?—コモディティとしての領域知識とその流通をめぐって—」

第37回日本認知科学会大会(オンライン開催)にて、DCCメンバーを中心とする企画で、OS「知の生成をささえるものは何か?—コモディティとしての領域知識とその流通をめぐって— 」を開催いたします。

皆様のご参加をお待ちしております。


OSオーガナイザー: 田中吉史(金沢工業大学)、荷方邦夫(金沢美術工芸大学)、青山征彦(成城大学)、髙木紀久子(東京大学)、松本一樹(東京大学)

<本企画の趣旨>

認知科学はこれまで、人間の知的な振る舞いを支える様々な仕組みを、内的なプロセスのみならず、社会文化的な基盤まで、様々な観点から明らかにすることに取り組んできた。また、こうした研究は、思考、熟達化、創造性、デザインや芸術など、高度な認知的活動の支援手法の検討など、実践的な問題とも結びつく形で進められてきた。

これまで一般に、デザインやイノベーション、アートなど、知の生成的な活動は、特別な素養や専門家としての長期にわたるトレーニングによって獲得される専門知識(領域知識)が必須とみなされてきたと思われる。しかし近年、そうした専門的で高度な知識・技能が、テクノロジーの進展や様々なツールの開発とも相俟って、パーソナルファブリケーションなどの形で、より多くの人々にもそれほどのコストを伴わずに利用可能なものになってきた。また、いわゆるSTEAM教育の重視により、アートを用いた教育が一般大学でも展開されつつあり、創造的な活動に関する領域知識の普及・一般化(コモディティ化)は今後実社会においてもさらに重要となると考えられる。

このことは、高度な領域知識や技術が、一部の専門家から開放され、いわば「民主化」されてきている、と見なすこともできるだろう。そして、「民主化」された知識や技能、それらを支えるプラットフォームは、広く流通するごくありふれたものだが私達の生活を支える上で欠かすことのできない日用品のような存在、つまりコモディティとしてますます重要なものとなっていくと予想される。

一方、こうした専門的な領域知識のコモディティ化によって、古くからある課題の深化や、新たに生じてくる問題の検討が、今後の認知科学にとって重要な研究テーマとなってくるであろう。

本OSでは、このような知の生成的な活動を支える知識やその普及・コモディティ化をめぐる研究を取り上げ、議論する場を持ちたいと考えている。

<プログラム>

・企画主旨説明(5分)

・研究発表(各15分)

Jingyan SUN・岡田 猛(東京大学)『演技訓練場面において注意が俳優の感情体験に与える影響の検討』

櫃割 仁平・野村 理朗(京都大学)『俳句と認知科学:感情との関わりから』

岩井 優介・岡田 猛(東京大学)『他者作品の推敲による小説創作の促進』

松本 一樹・岡田 猛(東京大学)『「深い作品鑑賞」はいかに可能になるか? -初心者による熟達者視点の取得の支援に向けた研究枠組み構築の試み-』

青山 征彦(成城大学)『日常のなかの創造的行為:ハンドクラフトを中心に』

荷方邦夫(金沢美術工芸大学)『デザイナーの知を民主化する ―一般ユーザ向けデザイン支援ツールの開発―』

・総合討論(25分)