SIG-DCC Newsletter 2024 Vol.1 (OS発表公募)

荷方@金沢美術工芸大学です。 

DCCより2024年度第1回目のニューズレターをお送りします。

認知科学会第41回大会オーガナイズドセッション 「創造とその解釈における意味の役割」発表公募

 DCCでは10月に開催される認知科学会第41回大会で、標記のオーガナイズドセッションを企画しています。企画概要を掲載しますので、参考にしていただければと思います。2件の招待講演を予定しております(タイトル未定)。

  高橋 康介 先生(立命館大学)

  佐合 道子 先生(陶造形作家)

 また本OSでは3名(予定)の発表を公募しています。締切(4月26日)直前のアナウンスとなり恐縮ですが,奮って応募ください。

 不明な点は事務局等にお問い合わせ下さい。どうぞよろしくお願いいたします。

日本認知科学会 「デザイン・構成・創造」研究分科会

https://www.jcss.gr.jp/branch/sig_dcc.html


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OS企画概要

われわれは何かを生み出し、目に見える形で表現する。DCCはそのような創発的な活動を、あるときはデザインと呼び、あるときは創造と呼んできた。われわれが何かを創り出す時、そこには創り手が付与する「意味」がある。その「意味」は、単一の意味とは限らないし、作品との関係も一様ではない。さらに、作品はさまざまに解釈することが可能である。創り手が込めた意味と同様の意味が感じられることも、異なる意味が感じられることもある。時には、作り手の意図を越えた意味が感じられることもある。意味は「解釈の補助線」として、創り出されたものの輪郭を明確にしたり、さらにその世界を拡張するものとして機能する。腐女子が原作にない恋愛関係を読み取るように、解釈する側が意味をプロジェクションすることもありえる。このように考えると、創造においても、解釈においても、作品と意味の関係は、単に伝達の機能を果たすものというものを超えた多様でダイナミックなものである。


 われわれが何かを創り出す時、そこには創り手が付与し続ける「意味」の存在がある。そしてその解釈もまた創作物がわれわれに投げかける意味の理解に他ならない。認知科学において特に美術や音楽といった芸術は、視覚や聴覚といった知覚的要素の理解に研究の多くが割かれてきたという事実もある。しかし形であれ色であれ、あるいは音であれ、われわれが理解しているのは知覚された刺激そのものではなく、そこから導き出された印象や主題、あるいは感情の生起といった「意味づけ」を理解しているという側面は色濃い。創り出されたものから私たちが受け取っているのは意味にほかならないのである。意味を付与すること、意味を感じること、あるいは知覚されたものを意味として形作っていくこと。何かが生み出される時の意味をめぐるさまざまな議論は、創造やデザインといったわれわれの研究をさらに深めるだけでなく、人の認知というものの本質を知るためにも欠かすことはできない。


 今回のOSでは、「創造とその解釈における意味の役割」をテーマに据え、意味をめぐるさまざまな研究課題に取り組むものである。創り手である作家は自らの発想をどのようにとらえ、認識可能な意味に変換しながら制作を行うのか。創作物の受け手は作品からどのような意味を受け取るのか。このように個人内で生成される意味だけでなく、それぞれが自身の周りにある世界とのインタラクションによって生成される意味を考えることも重要である。創り出されたひとつのものを通して、創り手や受け手の間で異なる意味が生成され、それによって創造の世界が拡張されることもディスコミュニケーションが起こることも、等しく意味の生成に伴う興味深い現象として検討の対象となろう。また、表現のジャンルによっても意味やその解釈の役割には異なる視点があるだろうとも考える。これについても検討や議論の余地は大きいと考えるのである。


 そこで、本OSは創造とその解釈における意味の役割を、創り手、受け手に限らず広く考えたいと思う。そこにはどのような認知的プロセスが存在するか。どのようなインタラクションが意味の生成に関係しているのか。これらを考え深めていきたいと考える。また、OSでは、これらの問題に取り組む研究者の発表だけでなく、実際の創り手も交え、創造活動のダイナミクスのリアルに触れながらさらに深めていきたいと考える。