柔らかい材料に特徴的な物理(ソフトマター物理・非線形物理など)を地球惑星科学や生物生態等の様々な現象に適用して,それらの基礎理解を深めることを目標とします.宇宙や惑星,地球,生物,産業に関連する現象について主に物理実験的手法をベースにして研究を進めていますが,その他のトピックにも柔軟に対応して様々なことに挑戦したいという意思があれば最大限尊重します.少し前になりますが,2016年にソフトマターを中心とした衝突の物理に関する専門書を上梓しました.クレーターを軸にソフトマター物理と惑星科学の接点に物理の側からアプローチする内容です.そちらをご覧頂ければ,私(桂木)の考え方や興味の対象等が分かると思います(興味の対象はこの書籍の内容以外にももちろん広がっていますが...).
粉体現象(基礎から応用までなんでも)
衝突応答,振動応答,階層構造,斜面流,ジャミング,非晶質化,応力鎖,サイロ流,農業応用,テラメカニクス応用,etc.
惑星地形(衝突クレーター形成,地形緩和,表面更新,etc.)
地球科学関連(地震的イベントの統計,融雪火山泥流)
生物生態関連(砂浴び行動,サメハダ,スナガニ巣穴,二枚貝潜行など)
流体・混相関連
ダイラタント流体,液滴,エアージェット,リキッドマーブル,etc.
ダスト(繊維物質によるダスト(ホコリ),微惑星形成ダストの衝突力学)
ベキ分布・スケーリング(自己アフィン,脆性破砕,フラクタル,多重フラクタルなど)
パターン形成(高分子ゲル表面に重合時に発生するパターンなど)
レオロジー特徴づけ(バルク粉体,階層粉体,サスペンション,ゲルなど)
実験技術(光弾性,AEイベント統計,力学計測,衝突装置,回転装置,高速撮影など)
その他(粘性指,視点運動,株価変動)
画像例
研究は主に実験的手法によります.大型装置ではなく,各々が自分の装置を持ち,実験のデザインからデータ取得,解析,物理の解釈までを行います.大規模研究の歯車のような感じは一切ありませんが,その分ある程度なんでも自分でこなすことになります.大規模装置等で「ココでしか測れない」というような実験計測を目指すのではなく,単純な系で視点を工夫することにより「ココでしか測らない」というような実験を行ってその物理と主に地球惑星的応用(+産業応用なども)をめざします.
高速度カメラ(フォトロン:SA5, Nova S20, Infinicam)
万能試験機(島津製作所)
振動発生装置(エミック)
高速高精度レーザープロファイラ(キーエンス+COMSステージ)
光干渉断層計(Lumedica)
アコースティック・エミッション計測系(NF)
傾斜衝突銃・クレーター形状計測系(名大装置開発オリジナル)
回転系・撮影装置(名大装置開発オリジナル)
実体顕微鏡レンズ系(カールツァイス)
光弾性粒子計測系(Vishay)
真空系(ファイファー)
高精度クリープ試験機(名大装置開発オリジナル):引退
これまで様々なバックグランドを持った学生さんと共同研究してきました.例としては,地球惑星科学,物理学,材料科学,計算科学,電気工学,環境化学などです.(地球)物理以外のバックランドの方も研究内容に関心がある方は大歓迎です.私(桂木)自身も学部時代は地球惑星科学科で学び,大学院ではフラクタルバターンなどの非線形物理,就職してからは人間工学的シミュレーションなどの研究を経験してきました.
大学の研究室における大きな目標はもちろん研究ですが,学ぶことは研究遂行のためにも必要ですしそれ自体(大学が教育機関であるので)大切なことです.学べる事項の例としては以下のような項目があります.
物理:粉体物理を中心としたソフトマター物理,レオロジー,階層構造を持つ粉体の物理特性
地球惑星科学:レゴリス挙動を中心とした固体天体表面地形(クレーターや対流・分級など),ダストの衝突過程と微惑星形成
非線形科学:パターン形成・フラクタル
生物生態:ターゲット生物の生態
データ解析:次元解析とスケーリング・イベント統計や時系列解析の手法
実験技術:デジタル計測・実験系制御・データ解析技術・装置開発
研究手法基礎:文献検索・発表・ドキュメント作成 etc.
以上の他にも,新しいことに取り組む場合は,要望にあわせていろいろなことを一緒に学んでいくこともあります.また,生物などに関しては,外部の専門家と連携して勉強することも多いです.研究することは学ぶことを常に伴います.