新著『謝罪論――謝るとは何をすることなのか』を、柏書房から9月27日に刊行します。
そもそも謝罪とは何か。私たちの生活や社会において謝罪はどのような機能を果たしているのか。謝罪の成功や失敗の鍵はどこにあるのか。
謝罪の複雑な諸側面を解きほぐし、その全体像を明らかにする本です。
本書は哲学や倫理学のほか、政治哲学、法学、言語学、社会心理学、社会学等の知見も幅広く参照しながら、謝罪という行為の内実を探っていきます。
ただし、学問的な抽象論に終始するのではなく、むしろ多種多様な謝罪の具体例を取り上げ、それらを基にして議論を進めるのも、本書の特徴です。
たとえば、電車のなかで意図せず他人の足を踏んでしまったときに「すみません」と声をかけること。知人の持ち物を誤って壊してしまったときの謝罪。強盗の加害者による被害者への謝罪。先行世代のしたことについて後続世代が謝ること。不特定多数の相手への謝罪、医療過誤をめぐる謝罪、等々。
謝罪という行為は、私たちの生活の隅々にまで深く根を張っており、社会のなかで非常に大きな位置を占めています。
だからこそ、この行為の詳しい内実と全体像を掘り下げていくことは、私たちの生活や社会について、ひいては私たち自身について、重要な理解を獲得することにもなるはずです。
ともあれ、不適切な謝罪や不必要な謝罪が蔓延するこの社会にあって、個人や集団が謝罪と適切に向き合うために、その足場ないし参照枠としての役割を本書が果たすことを願っています。
《出版社および版元ドットコムのページ》
https://www.kashiwashobo.co.jp/book/9784760155330
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784760155330
【目次】
プロローグ
第1章 謝罪の分析の足場をつくる
第1節 〈軽い謝罪〉と〈重い謝罪〉――J. L. オースティンの議論をめぐって
第2節 マナーから〈軽い謝罪〉、そして〈重い謝罪〉へ――和辻哲郎の議論をめぐって
第3節 謝罪にまつわる言葉の文化間比較
第2章 〈重い謝罪〉の典型的な役割を分析する
第1節 責任、償い、人間関係の修復――「花瓶事例」をめぐって
第2節 被害者の精神的な損害の修復――「強盗事例」をめぐって①
第3節 社会の修復、加害者の修復――「強盗事例」をめぐって②
第3章 謝罪の諸側面に分け入る
第1節 謝罪を定義する試みとその限界
第2節 謝罪の「非本質的」かつ重要な諸特徴
第3節 誠実さの要請と、謝罪をめぐる懐疑論
第4章 謝罪の全体像に到達する
第1節 非典型的な謝罪は何を意味しうるのか
第2節 謝罪とは誰が誰に対して行うことなのか
第3節 マニュアル化の何が問題なのか――「Sorry Works! 運動」をめぐって
エピローグ
註
文献表
あとがき
索引