【刊行物】ウィトゲンシュタイン著『ラスト・ライティングス』(講談社)

投稿日: 2016/05/16 9:26:16

訳書『ラスト・ライティングス』(ルートウィヒ・ウィトゲンシュタイン著、講談社)を上梓しました。

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この本は、ウィトゲンシュタインの晩年の遺稿 Last Writings on the Philosophy of Psychology の1、2巻を1冊にまとめて刊行するものです。

彼自身の手になる遺稿として主だったものの「本邦初訳」は、この本で区切りになると思います。(もっとも、ウィトゲンシュタインの未邦訳の遺稿としては、他に『ビッグ・タイプスクリプト』がありますが、これは原著で千頁を超えるものですので、全訳に手を出す人がいるかどうか・・・。あとは、『原論考』と、いくつかの講義録、書簡集が残るくらいでしょうか。)

『ラスト・ライティングス』前半は、彼の主著『哲学探究』第2部の最終草稿です。そして後半は、彼が文字通り最晩年に書きつけていたノートのうち、未公開だった最後の部分です。つまり、この本によって、ウィトゲンシュタインの後期の哲学の全貌が初めて明らかになると言えます。

このように、本書はウィトゲンシュタインを研究する上で不可欠の文献であり、既刊の彼の著作と密接な関係を結んでいますが、それだけではありません。単純に、一個の哲学書として極めて面白い本だと思います。この時期に彼の思考が最も熟成し、脂が乗り切っていたことがよく分かります。

ただ、初めてウィトゲンシュタインの著作を読む人には、やはりとっつきにくいところもあります。そのため、彼の哲学に関する予備知識がなくとも、また、彼のほかの著作や解説書を傍らに置かずとも、この本から読み始めることができるように、訳註と用語解説をできるだけ充実させました。

体裁についても、編集部に提案して、第1巻、第2巻、訳註、用語解説のタイトルページを黒地にしてもらいました。これで、それぞれの位置および範囲が、本の側面や天地を見ればすぐに分かります。読書中のストレスが少しでも減るように。

価格の方も、学術書の単行本としてはかなり低く抑えられました。512ページで税抜き2700円ですが、前述の通り、原著では2巻本のものを1冊にまとめていますので、1巻分あたり1350円という格好。もしも2冊に分けて出していたら、合わせて4-5千円にはなっていたと思います。

ともあれ、哲学の研究者や学生だけでなく、幅広い層の方に手にとって頂けるよう、丁寧につくりました。お好きなページから、ゆっくり読書を愉しんで頂けたらと思います。