投稿日: 2016/12/10 5:15:27
海外ではいまもウィトゲンシュタインをめぐる議論が盛んであり、刺激的な展開を見せ続けていますが、その一方で、日本では彼の哲学はしだいに埃を被 りつつあると言えます。
それを一気に吹き払って新たな地平を切り拓くことを目的に、ここに14 篇の、すべて書き下ろしの論考が編まれました。
まず、日本の中堅・若手を代表するウィトゲンシュタイン研究者が結集し、海外の最新の研究動向も踏まえた新解釈を提示します。
そして、教育学、社会 学、計算言語学、法学の各分野をリードしつつ、ウィトゲンシュタインにも造詣の深い論者たちが、狭義の哲学分野の外部にもひろがる彼の思考の可能性を示します。
以上の構成を通じて本書は、英米系(分析系)と大陸系の枠を超えた哲学的見地から、そして、哲学研究の枠を超えたそれぞれの学術研究の見地から、 「21 世紀のいまわれわれがウィトゲンシュタインから何を学びうるのか」をあらためて問い直します。
ウィトゲンシュタインの遺産を、観賞用の作品ではなく、アクチュアルな哲学的思考 の主題として取り戻すために。
『これからのウィトゲンシュタイン――刷新と応用のための14篇』
荒畑靖宏・山田圭一・古田徹也 編著
リベルタス出版
目次
凡例
略記表
序論 (荒畑靖宏・山田圭一・古田徹也)
第1部 ウィトゲンシュタインを読みなおす
【前期・中期】
1 [吉田 寛] 「はしご」としての『論考』の読み方と哲学の可能性
2 [荒畑靖宏] 言語を、そして世界を取り戻すこと、治療すること――ひとりのウィトゲンシュタイン
3 [野村恭史] 実在と階層――『論理哲学論考』における「関数」のリダンダンシーについて
4 [林 大悟] 直接経験の記述による本質の把握――『哲学的考察』の現象学的言語
【後期・晩期】
5 [入江俊夫] 概念形成へのまなざし――ウィトゲンシュタインの言語観と数学の哲学
6 [菅崎香乃] 「心理学の哲学」最初期の思考――ウィトゲンシュタインの関心はどこにあったのか
7 [山田圭一] 与えられるものの原初性と多層性――アスペクト論と懐疑論はいかにしてつながっているのか
第2部 ウィトゲンシュタインをつなげる・ひろげる
【他の思想家とのつながり】
8 [古田徹也] 形態学としてのウィトゲンシュタイン哲学――ゲーテとの比較において
9 [大谷 弘] 倫理について哲学者が語りうること――ウィトゲンシュタイン、ロールズ、倫理的像
10 [水本正晴] ウィトゲンシュタインとゲーデル: 対話編
【哲学外へのひろがり】
11 [平田仁胤] 新しい世界に出会うための教育の技法――ウィトゲンシュタインの蝶番命題が示唆するもの
12 [西阪 仰] 身体の構造化と複合感覚的視覚――—相互行為分析と「見ること」の社会論理
13 [田中久美子] 機械は《言語ゲーム》をプレイできるか
14 [大屋雄裕] 言語のゲームとしての法――法学におけるウィトゲンシュタイン
文献表
出典索引
人名索引
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