業務としてのパラモーター・パイロット

もしあなたが業務パイロットを目指すなら

または町内のイベントで上空を飛んでにぎわして欲しいという依頼を受けたら・・・

一時的にであれ、報酬の有無に関わらずそれは業務パイロットとなることを認識して欲しい。

航空ショーやイベントで行うショーフライト、そして撮影フライト

これらの大半は初めてフライトする場所で離発着を行う場合が多い。

パイロットは当然ながらフライトするであろうすべての空域を事前にチェックし、特に離発着場所と、ローパスやスパイラル、カラースモークへの着火などの演技を行う予定ポイントをあらかじめ決めておき、すべてを予定通りに行う必要がある。

航空ショーなどでは観客席の位置と風向きや風速によってすべての演技ポイントがおのずと決まってくる。

飛行場の滑走路などでフライトする場合はサーマルの存在がショーフライトの安全性に大きく影響し、複数のパラモーターでフライトする場合にとくに隊列の乱れを生み出しやすい。

複数でフライトすれば編隊を組むことが想定できるが リハーサルなしでいきなり編隊を組めるとしたら最大で2機までである。

それも十分にショーフライト経験のあるパイロットが組んだ場合の話で、これが3機以上となるとリハーサルなしではとてもショーとしての価値がないフライトを披露することになるだろう。

過去に毎回単独で参加させてもらっている航空ショーで3機編隊での依頼を受けた。

2名応援のパイロットを頼んだが1名は小さなイベントでのショーーフライト経験のあるパイロット、もう1名はフライト経験はあるがショーの経験はゼロ、居住地が離れていることもあり実施日までに天候の都合でリハーサルが間に合わないまま当日を迎えた。

対策としてもっとも経験の少ないパイロットを先頭機として選出し、同高度をただ周回してもらった。

2番機には少し経験のある応援パイロットに入ってもらい 周回する毎にあらかじめ決めておいた演技として 先頭機より高度を高く飛ぶ、また先頭機よりも左にずれた位置で飛ぶといった変化をつけてもらった。

そして3番機にはその中で一番経験が多かった私が入り、先頭機と2番機の距離と同じ距離を 2番機との間に保って飛ぶ

これでどうにか急編成の編隊が組めたわけである。

編隊飛行においてもっとも経験を要求されるポジションは後方である。 3機以後から最後尾までは経験値の高いパイロットが受け持つ必要がある。。

先頭は後ろの隊列の乱れを気にせずに決められたコースをただフライトすれば良いのである。

そして2番機は1番機のあとを追従して追い越しさえしなければ3番機が見栄えを演出することが可能である。

もしも可能なら地上から管制役をしてくれたスタッフが指示を出してくれることがべストだろう。

航空ショーについていえばさらに別の特殊性がある。

実機(軽飛行機やヘリコプター、セールプレーンなど)が滑走路に離発着するために、スケージュールに定められた時間にならないと滑走路に出ることを許されないことである。

そして予定時間には演技を終了して滑走路内から退避しなければならない。

通常、機材のセットアップは最低でも1時間前から開始する。

当然ながら前日までにすべてのメンテナンスとチェックは終えてあり、ここでいうセットアップとチェックはあくまでも再確認という意味である。

パラグライダーは開けばすぐにテイクオフできるようなブレイクダウンを常にしているので、無線機のチェック、燃料の投入、エンジンの暖機、ハーネスの調整チェック、カラースモークの取り付けなどの作業を行う。

ヘルプのスタッフがいればどのようにヘルプして欲しいのかを打ち合わせしておくことも重要な準備である。

例えばどの位置に機体を広げておき、もしライズアップをやり直すことになったらどのようなヘルプをしてもらいたいかなどが時間内で確実に演技をこなすうえで重要となる。

ショーフライトでは仮にコンディションが適切でない場合にも 自分の晴れ舞台であることからプライドや、普段の人間関係から依頼者の立場を考慮したりなどを考えて強引にフライトを強行するケースがありがちだろう。しかしこれは十分に考慮してコンディションが整わなければフライトをやめる勇気を持って欲しい。

かつて私はDKというスカイスポーツを業とする企業の社員として業務パイロットの役割をこなすことが多々あった。毎月コンスタントに1-2件のデモフライト依頼があり2-3年はそんな状況が続いた。

自分から状況判断によりフライトすることをNOとは言い難い立場でデモフライトやショーフライトに望むことばかりだったが、コンディションや地形が適切と思える状況でのフライトはその中で5-10%程度だったと記憶している。

依頼者の大半がスカイスポーツの知識がないのだから仕方がない。寒冷前線やよほどの強風でなければ飛べないことを納得してくれないだろうし、一旦引き受けて現地へ赴き交通費、私の出張手当、宿泊費などの経費が発生した時点で一企業のビジネスとして飛べなかったから費用は要りませんとはいえないのだからどうでも飛ぶしかない。というプレッシャーを常に抱えていた。

当然ながらそれなりに危険な目にもあったし、地元のフライヤー打ち合わせをできないままで親切でヘルプをしてくれたことが原因で、彼らの知識の不足から私が危険な状況に置かれてしまったといった経験がある。

いまにして思えば十分に打ち合わせができていない人にヘルプされてフライトしてしまった自分の浅はかさを悔いた。

飛ばなければならない という環境は絶対に避けて欲しい。

怪我や死の危険はあなたが思うよりも大きな確率となっているはずだ。