事故調査 高速失速・自覚のない失速の危険

パラモーター:パワー・フライトでは山飛びでのパラグライダーと比較して高速失速が頻繁に発生している。

これはアドバンスストールとも呼ばれているがフライヤー本人に失速している自覚がない場合が多い。いや一握りの知識豊富なパイロットをのぞいて限りなく100%に近いのかもしれない。

離陸直後 またはローパスの直後に 進行方向に障害物があるとしよう、それを上昇することで回避しようと考えたフライヤー某氏が 障害物にクラッシュする前にエンジンのフルパワーを使ってで上昇して離脱できるはずのイメージで障害物めがけて直進するのだが、なぜか上昇できずにフルパワーでクラッシュ!!

または直前にあきらめて左右へ旋回して回避しようとするがなぜかブレークコードを操作しているにも関わらず旋回に入らずクラッシュ!!

こういう状況でのアクシデントが2例あるので紹介しておこう

京都の郊外でのエリア:ローパス後にエリアの端に山積みされた堤防用のブロックを上昇して避けようとしてフルパワーでクラッシュ!!

クラッシュ直前に両足を前方へ出して踏ん張ったことが直接原因で両大腿骨骨折 フルパワーなのでダメージもより大きい

和歌山の埋立地のエリア:初心者が趣味で指導をしていた経験者のもとでフライト中に ローパス後フォローで配電線を超えようとしたが上昇せず、ブレーク操作をして左右どちらかへ回避しようとしたが操作が効かず電線にクラッシュ!!

偶然に通りがかった電気会社のバケットカーに救助された。

これらのアクシデントはどちらも高速失速による操作不能状態となっている。

ロール方向・ピッチ方向・ヨー方向すべての機体操作の原点にはピッチコントロールがある。

上昇して障害物を越えるという発想自体にも危険があるが根本的により高い上昇率を得たければ迎え角は小さくしてパワーユニットの推力が有効に効果を発揮することを優先しなければならない。

簡単に説明すると 地上でグランドハンドリングをしているフライヤーをあなたが後ろから押してあげるとしよう。そのときに押されているパイロットがブレーク高度を引きすぎて上を向きすぎてしまった翼を押し上げる場合と ブレークコードはあまり引いてなくて水平よりも少し上を向いた翼を押すのとではどちらが楽に押せるか?

当然より水平に近いほうが断然の小さな力で押せるだろう。もちろん水平に近いと移動速度もそれだけ速くなるので押す力が加わればそれだけ直進速度も増すことになる。

和歌山の事故の場合はとくにフォローという状況もあり対地速度の速さに誤って大気速度を低速にしてしまったことが十分に推測できる。

これが高速失速である。失速してはいるだからブレーク操作が効きにくくなっているのは当然だが、パワーユニットが発する推力がこの不自然な滑空状態を強引に維持しているわけで本人もそばで見ているフライヤー仲間もそれには気づいていなかったのだろう。だれも適切な指示をあたえることなくアクシデントにいたってしまった。

この和歌山の事故で指導をしていた経験者のかたは後にある団体の主催するパワードパラグライダー教員試験に臨んでこられた。

関西地区ということで私はその試験の検定員を依頼されていたが 議事講習会でその事故を例にとって解説するそのかたの知識には驚くべき初歩的な間違いがあり、その間違いに気づくことなく後進のかたに指導していた。

残念なのは、その間違いとはJHFやそれに類する団体もしくは、パラワールド誌などの業界で発行されているマガジン誌の特集コーナーなどから、知りえるほどに初歩的な間違いであったことである。

別のところで紹介するが間違った認識 そしてそれを後進のフライヤーに伝えたいという思い。

正しい知識が行き届かないということはこれからフライトをはじめるかたには知る由もない恐怖である。