パラモーター・フライトにマッチングするパラグライダー

まず最初に感じるのは 一般ユーザーの大半がパラグライダーを選ぶ基準としてライズアップ特性に集中している。

斜面と違ってフラットランド(平地)でライズアップする必要があるパラモーターでは確かにライズアップが要領よくいかないこともあるだろう。

発売当初から現在まで人気のあるパラモーター用パラグライダーはDKがリリースした”Hatorシリーズ シンフォニー”だということは広く知られている。

優れたライズアップ特性を備えていることが第一の要因といえるだろう。

さらに”シンフォニーの上級機”として同じ”Hatoroシリーズ”でリリースされた”レガート”はライズアップ特性はまったく異なった。

無風のときなどはライズアップするにはコツが必要でシンフォニーほどの支持率はなかったのが事実である。

しかし一般ユーザーには知らされなかったが 当時のDHVとAFNORの認証テストを受けたときに戸惑うべき結果が報告された。

AFNORではシンフォニーとレガートの安全性に関する結果を比較したときにシンフォニーがより安全であるという結果が報告されたが、DHVではまったくその逆の結果が報告されてきた。

ライズアップが楽=安全性が高いとは言い切れない結果が出たわけである。

もちろんトリムライザーを使って迎え角を下げるという方法でも知られているように迎え角を下げることでライズアップ特性は向上するものの、同時に前縁の潰れを誘発する可能性が高まることも知られている。

しかしそれはすべてのパラグライダーに対してだろうか? 答えはノーである。

たとえばLTF1 またはLTF1-2クラスであれば斜面でライズアップしたときを想定してオーバーシュート(ライズアップした機体が頭上を通り越す現象)を防ぐ意味で迎え角が大きく設計されている。もちろんフライト中の乱気流に対してという意味も含んでいるが。

このクラスの機体を選んで迎え角を少し小さくすることが理想的である。

当然ながらLTF2 LTF2-3の迎え角はわざわざ改造して迎え角を下げる必要はない、しかしそのクラスの性能のパラグライダーを使用するのは あなたがショーパイロットとして機敏な動きを観客に見せるために高速でのフライトを必要とするのでなければ避けたほうが無難である。 理由はまた別のところで触れる。

機体の迎え角を小さくする方法は一般的にはトリムライザーを使ってトリムを開放することがよく知られている。しかしできればトリムライザーは使用せずにアクセルを引き込んだ状態で仮留めできることがその機体の設計に対して理想的な迎え角を作る。

次に翼面積について大きめの機体を選ぶこともよくあると思う。

しかしこれも必ずしも正しいとはいえない。

燃料を積んだパワーユニットの重量が25-35kg程度あるのでそれを考慮した翼面積を選ぶということは正しいけれど

選ぶ機体のクラスわけによって判断は変化する。

たとえば同じブランドの機体であればLTF1の機体のSサイズ = LTF1-2のMサイズ = LTF2のLサイズ が、ほぼ同様の翼面積となる。

もちろん推奨されるウェイトレンジ(搭載体重の範囲)はそれぞれのサイズで異なる。

しかし仮に30kg程度のパワーユニットの重量が増加した時の翼面荷重の増加率がLTF1 に近くなるほど少なくなる。つまり影響が出にくくなるわけだ。

ここでいう影響とは速度域の高速化 ポーラーカーブの右側への移動 つまり失速速度 巡航速度 最高速度のすべてが同時に高速になるということだ。

仮に翼面荷重が20%増せば、速度はその50%分の10%だけ増す

投影翼面積25㎡ 適正総重量80kgで失速速度23km/h 巡航速度38 km/h 最高速度50km/h の LTF1 でMサイズのパラグライダーの場合 翼面荷重は3.2kg/㎡

これを体重64kg + パワーユニット重量27kg(燃料含む) + 機体重量5kg → 合計96kgで使用した場合 翼面荷重は3.84kg/㎡

翼面荷重の増加率20%

速度の増加率10%で 失速速度23→25.3km/h 巡航速度38→41.8 km/h 最高速度50→55km/h となる。

これがLTF2 の場合 Mサイズで投影翼面積が23㎡ 失速速度25km/h 巡航速度40 km/h 最高速度55km/h とする。

機体重量には変化があるが微弱なのでここでは無視して適性体重80kg 翼面荷重は3.4+kg/㎡

パワーユニットを搭載したときの重量96kgで使用した場合は4.15kg/㎡が翼面荷重となり増加率は29% 速度増加率は14.5%で 失速速度25→28.5km/h 巡航速度40→46 km/h 最高速度55→63.3km/h となる。

速度の変化率の説明はおわかりだろうか?

飛行速度が速くなれば その速度に慣れれば問題はないのじゃないか? と考えるのは間違いである。なれるのは速度に対してではない。 フライトテクニックとパワーユニットとのマッチングのところでその理由を二つ説明する。

ここでの最終的な回答ともいえるパラグライダー選びの基準は もしあなたが経験のあるパイロットであるならばLTF1-2で 山飛びでの推奨体重レンジに合わせた機体を選び必要に応じて迎え角を下げる工夫をするのが良いだろう。

そしてどうしてもLTF2クラスのパラグライダー性能を求めるのであれば山飛びでの適正体重レンジからサイズアップして選択することが必要となる。

付け加えるなら翼型としては翼後方にリフレックスを与えられたものでパラモーター用として開発されたものであればさらに好ましい。