空中での経験 海上編

パワーを持つことでパラグライダーでは簡単にはいけない空域へ進入してフライトすることがある。

そういった経験でのアクシデントは3例

連ダコのギネス記録に挑戦 というタイトルでテレビ番組の撮影に空中からの撮影を依頼されたことがあった。

このときには2つの失敗をした。

場所は桜島から鹿児島市内方向へと海上を横断するように連ダコを伸ばしてゆくというもの

フライトコースとしては桜島からテイクオフして4kmの海上横断をして鹿児島市内へランディングするのである。

役割としては連ダコの先端をビデオ撮影する。

海上撮影班がクルーザーで出動し、同時に空撮班(パラモーター)の緊急時には救助班としてクルーザーがその役割を受け持っていた。

いまにして思えばこれはかなり危険だった。過去の海上撮影での水難事故では救助班がそれ以外の役割を兼任することはもってのほかである。

知人パイロットが淡路島沖で海上での撮影フライト中にアクシデントでなくなったのは救助班であるクルーザーが被写体であるタンカーの接近をいち早く知らせるためにフライト中のパラモーターから離れたことが海上で助けを待つパイロットの救助を遅らせる原因となった。

話は桜島に戻り、予定していたフライトコースは風向きが予定通りでなかったために必然的に桜島島内方向へと連ダコは伸びていった。

空撮班もスタートということでテイクオフしようとしたがどういうわけかまったく浮力がつかない。

何度もテイクオフのやり直し、DK本社からメンテナンス担当のスタッフが同行してくれていたが使用機材のDK Beet初期型モデルはプロペラ径67cm

燃料タンクの容量は4L(実際は5L入る) 海上を横断するために十分な量である。しかし連ダコの移動速度にあわせることが重要であり、その速度ははかりかねるということで余裕を持つために両サイドにスペアタンクをひとつずつ取り付けた。タンクは合計15L入っている。

本体の換装重量17kgという軽量が特徴のDK Beetが重たい。

しかし浮力がでなかった原因はその重量だけではない。もっと重要なことはプロペラ径が小さいDK Beetでは両サイドにタンクを取り付けたことでプロペラの吸気を妨害していたため十分に推力が得られなかったのである。

2つのスペアタンクのうちひとつを外し、なんとかテイクオフ しかしこれも十分ではなかった。上昇してゆかない。

溶岩が固まってできた岩の上を旋回しながらわずかなサーマルのリフトを頼りにやっとの思いで高度をあげた時には連ダコの先端は島内の山を越えて伸びてしまっていた。

連ダコが伸びて意いるのだからその方向が風下ということになる。最初に予定していた鹿児島方向からは100度ずれており、山の尾根上に到達したときには風を正面に受けた山の裏側は湾となっていた。これはうかつに山の裏へはいけない!!

しかし無線機からは、本部からは山の向こう側にある先端がどうなっているか見えないので 撮影してきて欲しいというリクエストが出た。

これは本当に恐怖だった。

連ダコの先端は山の尾根上よりも低い高さに下がってまだ風をうけて飛んでいる。尾根上よりも下がっていること自体が下降風帯または乱気流帯にあることの証拠である。

高度を十分にとって先端の上空までいったがなんとか先端を撮影して欲しいというさらなるリクエストの念押しがあった。

これは自分の身に危険が及ぶ可能性が非常に高いので一応了解はして少しだけ高度をさげて帰還しようとした・・・ が 予想以上に高度が下がってゆく。

どうやら警戒してある高度を保っていたにも関わらず下降風帯に入ってしまったらしい。

即座にフルパワーにするが沈下が大きい。アルチメーターは装備していなかったが平均3m/sec前後の沈下だったように思う。

海上撮影班兼救助班は岬の形状をした山を回りこんでくるのに手間どってまだ現地入りしていない。

空中撮影どころではなくなった。とにかく完全に山の裏のウィンドシャドーとなった空域に入りあっという間に山の尾根線上よりもどんどn高度が低くなってゆく、目指すは山陰の影響を受けていない位置への移動 風上に対して尾根の横へ飛び出さなければ確実に海へ飛び込んでしまう。

当時はパラモーターではアクセルは装備していなかった。フルパワーから少しエンジン回転を下げて迎え角の増大を避け フロントライザーを掴んで力を込めて引き下げ少しでも速度を増しなんとか海へ飛び込む前にウィンドシャドーから脱出しなければ 残り高度50mm 40m 30m あと少し いけるか・・・ フロントのチェストバックルを外した。フットストラップも外すかどうか迷った 海への突入が避けれらなければ最悪でも空中にあるうちにハーネスから離脱して自ら飛び込むしかない

そうすることでハーネスの束縛から身体の動きを自由にし なおかつパラグライダーのサスペンションラインが身体に巻きつくことを避けなければならない

が どうにか沈下率がマシになったように感じてそこでフルパワー、どうにか水平飛行 そして次第に上昇が始まった。

生き伸びた!!! そう感じた瞬間だった。