大径プロペラを持つパワーユニットの注意点

最近のパワーユニットは小排気量エンジンに大径プロペラをセットしたものが多いと感じる。

まずこの利点は小径(短い)プロペラと比較してプロペラの回転数を下げて騒音を抑制することが出来る。つまりゆっくり回しても必要なトルクを得られる。

朝ぶぶ

弱点はエンジンが80-100cc前後で小排気量で非力であるためエンジン回転数自体は高回転であることが必要である。エンジンの騒音は大きくなる。

プロペラガードは乗じて大きくなる必要があるのでライズアップの時に握りこぶしはガードよりも内側に位置する、そのためライザーやラインがガードに直接接触してライズアップ時の傾きの原因となりやすい。

ランディングの時にガードの底部がかなり低い位置にあるので、パイロットが地上とガード底部の距離感を確実に把握しておかなければ接触してクラッシュしやすい。

径が大きくなることでフライト中の有害抵抗をより大きく生み出す。

翼部分の有害抵抗ではなくパイロットに発生する有害抵抗であるので翼の慣性モーメントで移動する速度とパイロットの慣性モーメントで移動する速度にズレが生じ、一時的に翼が先行してしまう。

わかりやすく言えばフライト中にハンマーヘッド現象といわれる翼の前かぶり現象が発生しやすくなる。この現象はとくに水平飛行をしている時に起こりやすいので低空でローパスを試みているときにハンマーヘッド現象が発生したらリカバリーが間に合わず地面にクラッシュする危険性がある。

これは必ず発生するものではないが翼の速度(翼面荷重の増大により速度域が高速となっている状態の速度)に対して有害抵抗が大きく影響して速度のズレが大きくなったときに発生する。

パラグライダーの機体選びのところで機体性能ではLTF1 もしくはLTF1-2が望ましいといった原因のひとつはここにある。より低速で飛べる翼を選んでおくほうがここでいう翼の速度とパイロットの慣性モーメント速度のズレが小さくてより安全に飛べるわけだ。

当然ながらプロペラ径をより小径なものを選ぶことも重要である。小径であれば当然ながら生み出す有害抵抗もより小さくなるのだから。

次に反転トルクの影響、これも小径プロペラと比較して大径のほうがより大きく影響する。

以前に反転トルクの説明をしたところモーメント方向の反対側に燃料タンクやリザーブパラシュートなどをバラストとして反転トルクをキャンセル(打ち消せる)

という安易な反論をされたことがある。

これを教えたインストラクターには説教をしたい。反転トルクはヨー方向に掛かるモーメントで バラストによるウェイトシフトはロール方向に掛かるのでまったく効かないわけではないがかなり的外れな対処法である。反転トルクは極端になるとパイロットがスピンを起こしてツイストしてしまう危険性があるので間違えた対処は避けなければいけない。

即席な対処法は アクセルONの時に反転トルクが発生したらツイスト方向に逆らってライザーを手で押さえる。これがもっとも有効である。

そしてできるだけ反転トルクの影響が少ない小径プロペラを選ぶほうが良いだろう。

必要なパワーとのバランスもあるので1000mm程度までのものを薦めたい。

ちなみに騒音について言えばエンジン音よりもプロペラの騒音のほうが目立つ。

プロペラの径や形状を変更することで低音になったり高音になったりもする。低音であれば距離が広がれば消音率が増すのでその点は大径に利点があるのだが。