プログラム
最終更新日時: Last modified: 2024-09-03
2024年開催予定の第三十五回ALGIのプログラムです。
※プログラムは暫定のものです。講演数や講演時間,講演される方のご希望などにより変更される可能性があります。
※今回の発表および聴講は現地にて対面のみです。
9月2日(月)
13:00 ~ 13:05
オープニング+連絡など
13:05 ~ 14:05
西郷甲矢人(長浜バイオ大学)
演題:圏代数と圏上の状態:基本概念とその応用に向けて
梗概:圏上の「たたみ込み」の代数である「圏代数」は非可換代数となるが、この非可換代数の上の「期待値汎関数」としての「圏上の状態」とセットにして考えることにより、圏構造と非可換確率構造が自然につながる。講演者はこのつながりを活用した量子場への新しいアプローチに取り組んでいるが、量子場理論に限らず、「確率構造」と「因果構造」の両方にまたがる諸問題への幅広い応用が考えられる。本講演では、圏代数と圏上の状態の理論の基礎概念を概観し、可能な応用の方向性について議論したい。また、時間が許せば、圏論への理論的フィードバックの可能性についても触れたい。
(休憩)
14:20 ~ 14:50
田中康平(信州大学)
演題:Discrete Lefschetz calculus and its application
梗概:オイラー標数を用いた積分理論(オイラー積分)の一般化として,レフシェッツ数(トレース)を用いた積分理論(レフシェッツ積分)が近年導入された.本講演では,有限位相空間(ポセット)上の関数に対して,レフシェッツ積分の定式化を行う.また,レフシェッツ数は不動点理論と密接に関わっており,有限群の作用で固定されたターゲットの数え上げへの応用を紹介する.
14:50 ~ 15:20
福本善洋(立命館大学)
演題:グラフのbounding genusについて
梗概:ホモロジー3球面は、ホモロジー群が3次元球面のそれと同型な3次元閉多様体であり、ポアンカレの当初の予想の反例としてポアンカレ自身によって発見されて以来、無尽に存在することが知られている。
Bounding genusは1981年に松本幸夫氏によって導入されたホモロジー3球面のホモロジー同境不変量であり、ホモロジー3球面全体のなす「ホモロジー同境群」と呼ばれるアーベル群におけるある種の距離を与える。
ホモロジー同境群は、高次元の位相多様体の三角形分割可能性と関わる重要な群であるが、その構造は、整数群の無限直和からなる部分群の幾つかの系列が知られていることの他は、捻れ部分群を含むかどうかなどよくわかっていない。
ロホリン不変量は、ホモロジー同境群からZ/2への準同型を与えるホモロジー同境不変量でありホモロジー3球面を境界にもつ滑らかな4次元多様体の符号数を用いて定義される。松本氏は、このロホリン準同型の核の「深さ」を測る指標としてbounding genusを導入し、4次元多様体の「11/8予想」はこのbounding genusの上界評価に基づいて提唱された。
ホモロジー3球面を構成する方法として「鉛管操作(plumbing)」があり、適切な整数の重みのついた樹木グラフから構成される4次元多様体の境界として実現される。
本講演では、bounding genusを有理(係数)ホモロジー3球面に拡張し、整数の重みのついた樹木グラフから鉛管操作によって得られる有理ホモロジー3球面のbounding genusとして、重みつき樹木グラフのある種の距離のようなものを考える。とくにSeiberg-Wittenゲージ理論による10/8不等式を用いることにより、樹木グラフのbounding genusの評価について、そのスプライシング操作に関する挙動などを調べていきたい。
(休憩)
15:35 ~ 16:05
西村進(京都大学)
演題:ブール多項式環上のグレブナー基底による並行分散プログラムの整合性検査
梗概:並行分散計算の組合せ幾何モデル論では、実現可能な並行分散計算は、単体的複体の細分と単体写像のふたつの写像の組合せで必ず表現できることが知られている。[Herlihy&Shavit 1999] 本発表ではこれらの写像を、単体をデータ型で、細分をordered set partitionによる組合せ表現で表すことによって、パターンマッチ構文を備えた関数型プログラミング言語で記述することを提案する。ただし、このように定義された写像は、一定の幾何的整合性を満たさなければならない。このような幾何的整合性を検査するために、ブール多項式環上のグレブナー基底[Sato et al. 2011; Inoue 2012]を用いる手法が適用できることを示す。すなわち、与えられたプログラムから集合に関する制約を生成し、その制約をグレブナー基底を用いて解くことによって整合性の検査が達成できることを示す。
16:05 ~ 16:35
井上純(産業技術総合研究所)
演題:量子確率的プログラミング: 量子物理学を介さない量子プログラミング
梗概:現在、量子プログラミング言語はほぼ全てが量子ビットを基礎単位とする量子データを操作する体系になっているが、そうしたデータの振る舞いの記述は普通プログラマが習う機会の無い高度な線形代数に依拠している上、振る舞い自体も直観に反する部分が多々あり、それらを理解するには量子物理学の造詣が要求されるため、非常に敷居が高い。講演者が最近提唱した量子確率的プログラミングでは、量子的振る舞いの源を「負の確率で返す結果がある乱数生成器」に代表される量子非決定性の計算効果に求めることで、量子データの概念を不要とした。こうする事で、量子プログラミングの中心的な概念や制約を、物理学的観念に言及すること無く、計算的直観に訴える「負の確率」一本槍で説明することができる。この講演では、量子確率的プログラミングの基本的な考え方と、もつれやテンソルといった諸概念が、独立性など誰でも知っているような確率論の概念を通して「負の確率」という唯一の非古典的異物に帰着できる事を説明し、測定もこの枠組みで十全に説明できることを紹介する。
16:35 ~ 17:05
QI Xuanrui(名古屋大学)
演題:Modal homotopy type theories for synthetic algebraic geometry
梗概:TBA
(懇親会参加者は,17:33 田村駅発の電車にて長浜駅へ移動)
18:00〜
懇親会@長濱浪漫ビール(長浜駅より徒歩4分,予算:1人5000円程度)
9月3日(火)
10:00 ~ 11:00
安藤浩志(千葉大学)
演題:Large-scale geometry of Banach-Lie groups
梗概:位相群の中でも局所コンパクト群と非局所コンパクト群のクラスは表現論的に非常に異なる性質を持つことがよく知られています。特に非局所コンパクト群に対する大域幾何学的構造をどのように定義し、研究するための枠組みは最近のRosendalによる位相群に対するcoarse geometryの導入によってようやく始まったといえます。Rosendalは一連の研究の中で, Banach-Lie群は位相群の大域構造を規定するmaximal metric, 局所構造を規定するminimal metricの双方を同時に持つのではないかと予想しました。松澤, Doucha氏との共同研究でこの予想をC*環論由来のアイデアを用いて肯定的に解決しました。その後Doucha氏とは局所(Lie)構造に関する研究もおこなっていますが、この講演ではRosendal のcoarse geometryを概観し、Rosendal予想や関連する話題についてお話させていただきます。
11:00 ~ 11:30
西郷甲矢人(長浜バイオ大学)
演題:蒔かぬ種は生えぬ:因果性への圏論的アプローチ
梗概:因果性は科学においても哲学においても重要な概念である一方で、その数理的な定式化は完成していない。本講演では、直感的に言えば「ある種の過程が起こらないとき、この種の過程は起こらない」という法則性としての因果性の概念を、圏構造を用いて定式化することを試みる。それにより決定論と似て非なるこの因果性の概念の理解を深め、可能な応用の方向性について議論したい。また、時間が許せば、圏論への理論的フィードバックの可能性についても触れたい。
11:30 ~ 11:45
クロージング+連絡など