はじめに

鵜野 祐介

立命館大学教授

アジア民間説話学会日本支部代表

ごあいさつ

設立の経緯

アジア民間説話学会は、2008年4月に逝去された故稲田浩二先生の提唱により1994年3月に創設されました。柳田國男『日本昔話名彙』(1948)、関敬吾『日本昔話集成』(1950-1958)および『日本昔話大成』(1978-1980)を踏まえた、日本昔話研究における最も重要な基礎資料となる畢生の大作『日本昔話通観』資料篇全29巻(1977-1990)を編集責任者としてまとめ上げた稲田先生は、次に日本昔話の国際的な位置づけを探っていかれました。その過程において、ATの名で国際的に知られるアールネ&トンプソン『昔話の型 [The Types of the Folktale.]』(1964)の限界と問題性を痛感され、ヨーロッパの資料に偏り、尚且つ論理的な構成を欠くATに代わる、新たな国際的なタイプインデックスをアジアの研究者と共同で作成したいという構想を持つにいたります。そして韓国と中国、両国における昔話研究の第一人者、崔仁鶴氏と劉魁立氏に打診され、三氏の呼びかけによって韓国・中国そして日本国内から数十名が大阪・梅花女子大学に集い、1994年3月23-25日、第1回国際シンポジウム大会が開催され、この学会が創設されたのです。