AFNS NEWS LETTER No.21

AFNS NEWS LETTER

No.21

May 2015

アジア民間説話学会 [The Asian Folk Narrative Society]

日本支部事務局:立命館大学文学部 鵜野祐介研究室気付

〒603-8577 京都市北区等持院北町56-1 tel 075-466-3142 e-mail: y-uno@fc.ritsumei.ac.jp

学会HP : https://sites.google.com/site/afns2011/ (年会費:正会員3,000円、準会員 [学部学生] 1,000円)

<巻 頭 言>

鵜野祐介

今年もまた風薫る5月がやってまいりました。会員の皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。私どもアジア民間説話学会は、昨年8月に第13回国際シンポジウム大会を岡山市にて開催しました。中国から5名、韓国から8名、国内から約50名の方がご参加下さり、無事終了することができました。開催にあたり、辻星児先生が、会場・宿泊先・バスツアーなどの手配をはじめとする準備から当日の裏方業務まで、煩雑な作業を教え子の学生さんたちや梅花の院生・修了生たちを統率しながら手際よく進めてくださいました。また、皆様が毎年お納めくださっている会費のおかげで、会場費はもとより翻訳・通訳料や海外から来られた方がたの懇親会費もやりくりできました。心より御礼申し上げます。

8月22日の歓迎懇親会に先立って、崔仁鶴先生、劉魁立先生、高木立子さん等と共に、故稲田浩二先生の墓参を行いました。韓国式の深い拝礼をなさる崔先生のお姿を拝見しながら、2008年の第10回大会(6月28-29日、於梅花女子大学)のことを思い出していました。

この年の4月、稲田先生が急逝され、本学会の存続は不可能だろうと判断した私は、日本支部代表代行として、この第10回大会を以て学会を活動停止とする案を理事会にお諮りするつもりでした。けれども事前にご意見をうかがった日本の理事の先生方からは、日本側から提案する必要はないのでは、とのアドヴァイスをいただき、そして理事会の席上、韓国や中国の方がたからも「続けていこう。それが稲田先生のご遺志でもあるはずだから」とのお言葉を頂戴し、思い直しました。あれから7年、中国・杭州臨安市での第11回大会、韓国・光州市での第12回大会、そしてこの第13回大会を稲田先生の地元岡山で開催することができました。(あの時、辞めないでよかったなあ)と振り返ると同時に、これからまた新たな歩みを進めていきたいと、稲田先生の墓前に誓った次第です。

第14回大会は2016年8月に中国で開催の予定です。テーマは「英雄譚」です。今年の暮れまでには大会の概要が発表されるものと思います。ぜひ多くの皆様のご参加・ご発表を期待しております。どうぞよろしくお願いいたします。

2014年度活動報告

「第13回国際シンポジウム大会」

(2014年8月22-24日、岡山市ピュアリティまきび)

主題「東アジアの昔話における〈家族〉」

<8月22日(金)>

18:00~20:00 歓迎懇親会

<8月23日(土)>

9:30~9:50 開会式

10:00~12:00 第一セッション

畢雪飛(浙江農林大学)

「中日棄老譚の比較研究」

斧原孝守(奈良高校)

「東アジアの『姥捨山』について」

林継富(中央民族大学)

「ある語り手の語る親子二代の話」

13:30~17:15 第二セッション

高木立子(北京外国語大学文化教育専門家)

「漢民族の異類女房譚における家族構造」

宮井章子(立命館大学聴講生)

「日本の異類婚姻譚における親子関係

-「犬娘と蛇息子」を手がかりに-」

崔元午(光州教育大学校)

「韓国の口伝説話に現れた婿と嫁についての認識」鵜野祐介(立命館大学)

「『蛇女房』譚における母子離別モチーフの

歴史的背景と教育人間学的意味」

17:15~18:00 昔語り

筒井悦子(昔話研究会)

「日中韓3ヵ国共通話型を語る」

<8月24日(日)>

8:30~9:15 理事会

9:30~11:50 第三セッション

康麗(北京師範大学)

「性別規範:女性の話とその伝統意識形態―中国の賢い女の話研究―」

韓順美(朝鮮大学校)

「韓国の癩病説話と家族という装置」

酒井董美(山陰民俗学会)

「民話「子育て幽霊」に見る母性愛」

12:00~12:15 閉会式

13:00~18:00 バスツアー

(後楽園-吉備津神社-鬼ノ城)

「日本支部2014年度総会・研究大会」(2015年2月14日、立命館大学)

<総会>

1.2014年度活動報告

2.会計報告(後述)

3.2015年度活動計画(後述)

<研究大会>

話題提供1 立石展大(高千穂大学)

「日中『シンデレラ譚』の比較について」

話題提供2 金賛會(立命館アジア太平洋大学)

「祖母嶽伝説と韓国 -鉄文化の視点から-」

昔語り 小栗栖真弓(姫路おはなしの会)

「兵庫県の昔話・伝説」

「2014年度研究大会に参加して」

立石展大

2月14日に、立命館大学で開かれた2014年度の研究大会で「日中『シンデレラ譚』の比較について」という題で話題提供をいたしました。

私がアジア民間説話学会に初めて参加したのは2014年8月に岡山市で開かれた第13回国際シンポジウム大会でした。三日間をとおして参加させていただき、とても温かい雰囲気の学会という印象を持ちました。ですので、今回の研究大会での発表をとても楽しみに伺いました。

「シンデレラ」は、ご存知のように世界的に伝えられている昔話です。西欧圏では、フランスのペローやドイツのグリム兄弟の筆による話がとくに有名ですが、アジアにおいても古くから伝えられている昔話です。

中国では、早く唐代の『酉陽雑俎』に載せられた話が知られていますが、現在の中国でも南部を中心に広く伝承されています。継母からの試練を、牛や鳥などの援助者の助けを借りて乗り越え、祭りで素敵な男性と巡り合い結婚します。そして結婚に際しては、靴が合う娘を探すことも語ります。また、中国の「シンデレラ」の特徴として、結婚後の転生譚が多く伝えられています。すなわち、嫉妬した異母姉妹に殺された主人公の娘が、死後に小鳥や竹に姿を変えて生き返る話が最後に語られます。

一方の日本でも、シンデレラ型の話は、ご存じのとおり「米福粟福」の昔話として全国で知られています。突出している例ですが、新潟では、『越後のシンデレラ』(水沢謙一編、野島出版1964年)として一冊の昔話集が出されたほどです。わが国では、援助者として山姥が登場したり、打ち出の小槌が着物を出してくれたりと、日本的な特徴が表れるのも楽しいですが、一方で考えさせられるのが、嫁探しに際して靴が合う娘を探すモチーフが随分と少ない点です。これは、古くから伝承されていた靴のモチーフが抜け落ちた結果なのか、それとも明治以降に西洋からの影響で新しく伝承されるようになった結果なのか。隣国の中国では靴のモチーフが多く語られていることを考えると、日本への伝播もあったのかと考えてみたくもなりますが、西洋からの影響も見逃せません。まだまだ、今後の課題として考えたい点です。

いずれにしても、世界中で伝承される昔話に接すると、各国の話の特徴に生活文化が反映されているのが面白く、また共通の楽しみとして昔話を伝えてきた歴史に圧倒されます。そして、昔話は言語の壁を簡単に越えられることからも、「この話を伝えたい」という人々の想いが大切であることを改めて実感します。私が昔話の国際比較に魅力を感じている点です。

学会の皆様にも、さまざまお教えいただきたいことが多く、今後ともよろしくお願い申し上げます。

「発表を終えて」

金賛會

2015年2月14日、アジア民間説話学会2014年度日本支部(代表:鵜野祐介立命館大学教授)の総会・研究大会が京都の立命館大学衣笠キャンパスで開催された。私としては同学会への出席ははじめてであるが、誘ってくださったのは代表の鵜野祐介教授であった。研究発表の会場になった衣笠キャンパスは、小生が約10年間、過ごした思い出の地でもあり、母校での学会の発表はまさに感慨深いものがあった。

同日早朝、大分から特急電車に乗り、小倉駅で新幹線に乗り継いで京都駅に着いたのは正午の手前であった。学会開催の13時前に衣笠キャンパスに到着して、まったく知り合いのいない同学会であったのでやや緊張気味で会場に入って椅子に座るとお茶と和菓子が出され、出席された方々のお顔を拝見しほっと一息ついたのを思い出す。

話題提供(研究発表)は総会後の13時20分頃からのスタートだったが、小生の研究発表は高千穂大学の立石展大氏(題名:日中「シンデレラ譚」の比較について)の後で、発表のタイトルは「苧環型蛇婿入譚の祖母嶽伝説と韓国 ―鉄文化の視点から―」であった。従来、学界での苧環型蛇聟入譚についての研究は、『古事記』収載の三輪山神婚説話を中心に考察が行われ、豊後や日向地方を背景にしている「祖母嶽伝説」に中心を置いて考察した論考は皆無に近いといえる。そこで本発表では、豊後国と日向国を舞台とする、『源平盛衰記』や『平家物語』収載のいわゆる、「祖母嶽伝説」に焦点をあてて発表を行い、特に韓国では「夜来者説話」と呼ばれている苧環型蛇聟入譚がどのように展開されているのか、豊後国や日向国の祖母嶽伝説や民間伝承の苧環型蛇聟入譚との比較を通して、両伝承の特質を鉄文化の視点から明らかにしようとした。そこで本学会での主な発表内容やその趣旨を簡単にまとめてみたい。

(一)『源平盛衰記』『平家物語』の祖母嶽伝説では、『古事記』や『日本書紀』などに見える三輪山神婚説話と違って、豊後国や日向国を舞台として展開されているのが特徴であった。特に祖母嶽伝説は、『古事記』にはない、日本の昔話に多く存在する「立ち聞き型」に近い叙述が見られており、『古事記』の三輪山神婚説話とその趣向を異にしている。そこで両者は原拠とした説話が必ず同一のものであるとは言いにくく、大和の神話をそのまま、豊後国に再現したとも考えにくい。また日本の「立ち聞き型」には、節句の由来と関わって、子種を否定する伝承が多く見られ日本的特徴を保っているといえるが、この話型はすでに韓国の伝承にも見られるもので、中国からの直接影響というよりは朝鮮半島との関連から論じる必要性が出てきた。

(二)『源平盛衰記』では、「目は銅の鈴を張ったようで口は紅を含んだよう」とあり、生まれた子供については、異名を「皸童」、または「皸大弥太」、「銅大太」(大神系図)としており、延慶本では大太、赤雁大太となっており、鳥の名を付しているのが特徴であった。これは赤雁と鉄との関連から考えるべきであり、緒方氏をその祖とした大神氏は、製鉄文化を持った金属技術集団である可能性が高くなってきた。

(三)『源平盛衰記』と『平家物語』では、夜の訪問者の服装が「水色の狩衣」、韓国では「青色」のものが多く見られた。水色とは、普通無色透明であるが、池や湖などの色のように、緑がかった青色である。この青色とは酸化した鉄の色を表すこともあり、夜訪問してくる男がおそらく鉄文化と関連する人物であることが想定できるものであった。

(四)鎌倉時代の『平家物語』などに見える、大神氏の祖神としての嫗嶽山の嫗嶽大明神が江戸時代に入り、彦五瀬命の祖母である豊玉姫命信仰と結び付き、祖母嶽や祖母嶽明神(大蛇の霊)と同一視されるようになったことが推測される。こうした豊玉姫命信仰を持ち込んだのは他ではない豊後大神氏であり、自らの血筋が天皇家と繋がる神聖で貴い存在であることを主張することによって、当地の統治基盤を確立させたものと考える。

(五)鉄神の象徴ともいえる大蛇の訪問と、その大蛇に糸を通した針を刺しておき、その糸を辿っていくと、大蛇の居住地が大岩であったというこのサイクルを苧環型蛇聟入神話と関連して、どのように理解すれば良いのかであるが、韓国の古墳では、鉄生産遺跡にも関わらず、糸を紡ぐときの紡錘車が大量に出土されている。紡錘車には鉄製のものもあり、鉄製品とともに服(機織りの巫女)と関連する紡錘車が祭祀対象物として使われた可能性が高く、苧環型蛇聟入譚は、おそらく巫女が蛇神であり鉄の神を迎える祭儀において機能していた時期があったと推測される。

以上が学会での発表の主な内容と趣旨であるが、一三世紀成立の『三国遺事』巻二には、苧環型蛇聟入譚に属し、祖母嶽伝説とも類似する、後百済国(900~936)の始祖である甄萱伝説が伝わる。そこでは毎晩娘の部屋を出入りする男の正体がミミズであり、後百済国始祖王の甄萱はミミズの血筋を引き継ぐ存在であった。この点が大蛇の子孫とする祖母嶽伝説などの日本の伝承と大きく相違するところであり、会場ではこれに関連するご質問が出され、活発な議論ができたのは幸いであった。なぜ始祖王の父系が大蛇ではなく小動物のミミズなのかが問題であるが、ミミズと蛇は再生力の強い動物で、韓国ではミミズは「地龍」とも言っており、「緒方三郎惟栄始祖神話」を伝える『平家物語』の絵巻では大蛇が龍として描かれているものであった。

学会の後に京都駅周辺で行われた懇親会は和やかな雰囲気で開催された。小生にとってその場での知り合いは、日本昔話学会などで普段お世話になっている竹原威滋先生(梅花女子大学客員教授)以外はなく、その他は皆が初対面であった。にもかかわらず学会の延長戦のように発表に関する様々な意見が出され、とても有意義な時間を過ごすことができたのも良い思い出になった。また、懇親会の帰りがけに奈良県立奈良高等学校の斧原孝守先生に出会ったのも幸いであった。先生は立命館大学時代に神話学研究で著名な松前健先生の教えを受けたと言い、小生の師匠である福田晃先生の沖縄探訪にも何回かご出席されたそうで、その時、もしかしたらお会いしていたかも知れないなと言いながら話が盛り上がった。

その斧原先生から後日、中国の苧環型蛇聟入譚に関する二編のご論考、「雲南彝族の三輪山型説話」(『比較民俗学会報』第二四巻第四号 通巻第一一八号、2003年12月)と、「中国西南少数民族の三輪山型説話」(『比較民俗学会報』第二八巻第四号 通巻第一三四号、2008年7月)が大学に届いた。このご論考の中で興味深かったのは、中国の弥勒県核桃寨に住む彝族の伝承においては、木で作った雌雄の龍を結婚させる儀式が実際に再演され、苧環型蛇聟入譚の始祖由来譚が儀礼と結び付いて伝承されていることであった。私は豊後大野市緒方町に今も伝わり、一年に一回母神が我が子神に会いに川を渡るという「緒方三社川越祭」の場合も、もともとはこうした神婚神話の再演であり、それが時代とともに衣替えして現在の祭りの形として受け継がれていると考える。

最後に一つ補足したいのは、『古事記』の三輪山神婚説話や『源平盛衰記』など収載の祖母嶽神話には、卵生要素が見られないし、三品彰英氏が『神話と文化史』(平凡社、1971年、三品彰英論文集第三巻所収)の第一章「南方系神話要素」、第一節「卵生族神話」において論じておられるように、従来学界では日本には卵生氏族神話が縁遠いものとされてきた。しかし日本の苧環型蛇聟入譚の中には、卵生型氏族始祖神話や卵生説話が多数含まれており、従来の学界の説は再考する必要性が出てきたことを付け加えて置きたい。

あらためてアジア民間説話学会2014年度日本支部において発表の機会を与えていただき、会場においても貴重なご意見を賜った日本支部代表の鵜野祐介先生と会員の皆様方に深く御礼を申し上げたい。

2014年度会計報告

(2014.2.1~2015.1.31)

<収入>

・前年度繰越金 485,806(円)

・2013年度分会費 3,000

・2014年度分会費 66,000

・2015年度分会費 3,000

・入会金 2,000

・利息 24

(2014年度総会・研究大会)

・参加費 10,500

・懇親会費 55,000

収入合計 625,330

<支出>

・通信費 5,243

・総会・研究大会諸経費 5,476

・懇親会費 46,350

・シンポジウム補填 344,765

支出合計 401,834

2014年度残金 625,330-401,834=223,496円

会計:山中郁子、宮井章子、会計監査:中塚和代

2015年度活動計画

A.日本支部2015年度総会・研究大会 2016年3月5日(土)立命館大学

B.日韓中3カ国共通昔話タイプ資料集の編纂

C.その他

入会者 (2014年3月-2015年2月)

佐々木幸喜氏、高島葉子氏、立石展大氏

情報アラカルト

1.新刊情報

(会員の著書・論文)

・鵜野祐介「ユニバーサル・デザインとしてのうた・語り」、子どもの文化研究所『子どもの文化』2014年7+8月号

・同 『ポスト三・一一の子どもと文化 いのち・伝承・レジリエンス』(加藤理との共編著)港の人2015年3月

・同 『昔話の人間学 いのちとたましいの伝え方』

ナカニシヤ出版2015年4月

・酒井董美「「鶯の歌」-労作歌と唱歌に思う-」『松江しんじ湖番傘』2014年 4月号

・同 「山陰のうたと語りを訪ねて半世紀」『子どもの文化』子どもの文化研究所2014年8月

・同 「山陰のわらべ歌から見た子どもの世界」『語りの世界』2014年8月

・同 「民話「子育て幽霊」に見る母性愛」『北東アジア文化研究』鳥取短大北東アジア文化研究所2014年11月

・同 「全日本語りの祭り開催地を引き受けて」『山陰中央新報』2014年12月2日

・同 「島根半島の伝説①弁慶と鰐淵寺 ②弁慶と長見神社 ③出雲地方以外の弁慶伝説」、『島根半島四十二浦巡りの旅』島根半島四十二浦巡り再発見研究会、2014年3月

・立石展大「シンデレラ型昔話の比較-中国を中心に-」、『国際化時代を視野に入れた説話と教科書に関する歴史的研究(平成25年度広域科学教科教育学研究経費報告書)』東京学芸大学2014年3月

・西村正身 「『シンドバード物語』所収話の泉源(2)」『作大論集』第4号、2014年3月

・同 「翻訳:王冠を戴く王と王妃と賢人シンドバードと七人の大臣の物語およびそれぞれの語る物語(1)」アラビア語版Atの訳、『作大論集』第5号、2015年3月

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(会員以外の関連図書)

・石井正己『国際化時代と『遠野物語』』三弥井書店2014年9月

・大塚ひかり『昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか』草思社2015年3月

・二本松康宏監修『水窪のむかしばなし』三弥井書店2015年4月

・橋本陽介『ナラトロジー入門――プロップからジュネットまでの物語論』水声社2014年7月

・樋口淳『妖怪・神・異郷―日本・韓国・フランスの民話と民俗』悠書館2015年4月

・廣田收『入門 説話比較の方法論』勉誠出版2014年10月

・松岡享子『子どもと本』岩波新書2015年2月

・百田弥栄子『シルクロードをつなぐ昔話 中国のグリム童話』三弥井書店2015年3月

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2.関連学会の大会情報

・日本口承文芸学会 2015年度大会

6月6-7日 国学院大学

・日本昔話学会 平成27年度大会

7月11-12日 立命館大学

・説話・伝承学会2015年度秋季大会

11月7‐8日 ハートピア京都、京都女子大学

*詳しくは各学会HPもしくはブログをご覧ください。

研究報告

沖縄の「天女伝説地」を訪ねて

山本美千枝

天女伝説の調査を、日本四大伝説地中三か所には足を運んだが、沖縄だけが残っていた。鳥取県境港市に住んでいると、沖縄は遠い。沖縄便のある岡山・広島・関空等まで行くのにまず時間がかかるので、今一つ億劫になっていた。だが、昨年スカイマークが米子空港に進出し、沖縄直行便が実現した。やっと「天女伝説の宝庫沖縄」に足を延ばすことができた。

天女伝説は日本全国いろいろな形で伝わっている。代表的な四か所とは、静岡・清水町、滋賀・余呉町、京都・峰山町、沖縄・宜野湾市である。宜野湾市一か所と、那覇市三か所を歩いたので、沖縄の特徴を四点記してみたい。

一点目は、天女が水浴した場所はどこも湧水。しかも集落の「命の水」でもある生活用水を汲む場でもあった。水を汲み易いようにか、たくさんの石やコンクリートで囲んであった。そばには拝所があり香炉が置かれていた。「ここは聖なる場所です」という看板も設置されている所もあり、今でも大切にされ、整備もされ、地域の信仰の場でもあることが窺えた。

二点目は、子どもが昇天の援助者となること。羽衣を隠す場所が高倉や稲倉の中で、姉が弟に歌う子守歌の中に羽衣の隠し場所があり、子守歌を母天女が聞いて、羽衣を見つけて昇天する。他県の伝説に比べて子どもの存在は大きい。

三点目は、天女が生んだ子どもたちが大きくなって活躍すること。宜野湾市の場合は、中部の察度王(のちに中山王)になり、中国・日本・朝鮮・南蛮との貿易を始め、琉球に鉄文化も伝えている。那覇市内の伝説地でも、女の子がのちの尚真王の夫人となったり、ノロ(女神官)となったり、男の子なら地頭となったりしている。始祖伝説型といえる。

四点目は、伝説に関わる場所が多くあること。宜野湾市の察度王の父奥間大親(天女の夫)の屋敷跡もあり、その家の隣には祠堂がある。奥間大親の位牌も祀ってあり、直接見せていただいた。近くには、察度王の居住跡や貿易港跡や倉跡もあった。那覇市内の伝説地の一つでは、天女と結婚した銘苅子の墓所が市内の広い墓地の中にあり、墓碑に「名苅子墓/此人天女ト夫婦ニナリ娘誕生/カノ娘/国王尚真尊君之御妃ニナリタマフ/・・」と刻まれていた。

また、天女伝説は沖縄本島の北部にはなく、中南部の湧き水の出る場所に集中しているとのことだった。帰ってから、『日本昔話通観』(同朋舎1983)の「26沖縄」をひも解いてみたところ、確かに、採集された48話の中で北部には1話しかなく、47話は中南部や宮古島・石垣島などの島々のものであった。内容は昇天型・始祖型・星由来型・七夕伝説型などで違いはあるものの、改めて羽衣伝説の宝庫だと確認できた。

鳥取県中部にも「打吹天女伝説」がある。日本に一つしかない内容だ。母天女が昇天するのを子ども達が追いかけて、笛を吹き太鼓をたたいて呼び戻そうとしたのである。昇天後も、毎日子ども達は山で奏したという。五大伝説地にするなら、鳥取県が入るであろう。

残念なことに、スカイマークは搭乗率の低さゆえ、今年8月で米子空港から撤退する。たった1年間の米子-沖縄路線であったが、観光に1度、調査に1度、計2度利用することができた。ありがたい直行便であった。

<編集後記>

本号は、今年2月14日に開催された日本支部の年次大会に始めてご参加・ご発表いただいた立石展大氏と金賛會氏のご寄稿、また昨年12月に沖縄へ取材旅行に行かれた山本美千枝氏のご寄稿によってたいへん充実した紙面となりました。心から感謝いたします。

2015年度の日本支部大会は来年3月5日(於立命館大学)を予定しております。多くの皆様のご参加をお待ちしております。(鵜野祐介)

2015年度会費のご納入をお願いします。同封の振込用紙をご利用ください。正会員3,000円、準会員1,000円となっております。よろしくお願いいたします。

<会費納入のお願い>