2020年6月総会 事前質問

「株主総会の目的事項にかかわる」質問に限って一人一問のみ受け付けるとのことです。「考える会」のメンバーが提出した事前質問は下記のとおりです。いずれも株主提案権を行使した第5号議案に関連する重要な問題です。総会では無視されることがないよう、また真摯な回答が得られることを願います。

役員報酬について

第4号議案との関連で、ウエバーCEOの2019年度の総報酬額及びその根拠についてご説明をお願いします。昨年の株主総会プレゼン資料で、今年度までに取締役報酬を株主に開示するとコミットされましたが、公表資料には見当たりません。

今年度から開示されたイグジェクティブ報酬の概要では、冒頭に「報酬体系はグローバルトップ10の立場を反映しています」と述べておられます。例えば代表的グローバル医薬品企業であるファイザーの招集通知では、全役員の報酬総額と内訳を三ヶ年比較で開示しております。グローバル企業を標榜する武田の株主としては、当然、このレベルでの株主への開示を要求します。

2019年度のグローバル医薬品企業のCEO報酬を比較すると、ウェバー社長の2018年度の報酬(17.6億円)は、2019年度の、メルクCEO報酬総額(29.8億円)、ファイザー(19.7億円)、ロシュ(13.0億円)、ノバルティス(12.0億円)に比べると、3位の水準にあります。

一方、株主貢献度を示す代表的指標であるROEの実績比較では、武田(0.9%)は、メルク(37.6%)、ファイザー(25.4)、ロシュ(42.6)、ノバルティス(15.2)、と比べようもなく、また過去5年間のTSR(株主総利回り)も武田(△29%)に対して、メルク(75%)、ファイザー(46)、ロシュ(31)、ノバルティス(31)となっております。ウェバー社長はメッセージの中で、「ROEも再び徐々に改善し株主総利回りも向上すると信じている」と述べられていますので、株主として期待しています。

召集通知には、「監査等委員でない社内取締役の個別の個別の報酬額の決定を報酬委員会に委任する」と記載されていますので、報酬委員会委員長に、報酬総額の開示と根拠のご説明をお願いします。 

売上収益の減少について

2019年1月シャイアー社買収以来、四半期業績が前年同期と同レベルで比較できるようになりました。その結果、「実質的な」売上収益の成長は 1.6%となりました(招集通知書P25)。

 シャイアー社買収直前では、2017年度医療用医薬品売上が前年比8%増加し好調でしたが、2019年度業績において買収効果が表れず、全く期待外れとなっています。 

旧タケダ製品の売上げを集計しますと、2019年度は5%の成長となっていますが、シャイアー社製品がマイナス成長となり、トータルとして大きく足を引っ張っています。

シャイアー社製品のみの売上げでは、第3四半期まで前年比8%減少でしたが、第4四半期、3カ月では、前年比20%以上と大幅な増加となっています。

この増加の要因を説明願います。今年度売上収益予想ではマイナス1.3%となっていますが、改善の見通しについて説明願います。

光工場へのFDAの警告書について

武田ニュ―スリリース及び日経新聞によれば、6月17日に武田薬品はFDAから光工場の品 質管理体制について、警告書を受領したとある。

 工場の無菌状態を維持するための手順の不備あるいは製造設備にエラーが出た際の原因の 特定が不十分だったという。これは、憂慮すべき重大な事故・事態と考える。

目標期限内に、包括的な是正・予防措置(CAPA)プランを策定・実行するとあるが、進捗 状況を知りたい。 

光工場は、「ルプロン」及び「エンテイビオ」の武田薬品の主力拠点であり、米国のみな らず、グローバルな問題である。米国、日本及び欧州他の諸国の欠品の解消やサプライチ ェーンの問題解消のタイミングは四半期ベースで何時になるのか?

FDAから品質管理体制につき、警告書を受け、販売停止に至ることは過去の武田薬品から は、考えられない事態である。 業績評価並びに会社幹部と従業員の報酬の乖離、コミュニケーションの欠如、コスト削減 や人員削減によるモラルやモチベーションの低下あるいは技術・経験の継承の断絶などが 想定される。

何に問題があって、このような事態が起こったと考えるか? 医薬品企業にとって一番大切な品質・安全の軽視に対する、ウェバー社長の経営責任をど のように考えるか?伺いたい。

武田ヘルスケアの売却に動いていると報道されているが、事実か? 

事実だとすれば、 何故、コロナ騒動で将来見通しが立てにくく競合による価額引き上げが期待出来ないこの 時機に売却に動くのか、また、多くの武田薬品の諸先輩は、武田薬品とアリナミン=武田 ヘルスケアは一体と考えており、負債の返済が急を告げているのか?

第5号議案について

「武田薬品の将来を考える会」よりの説明

「武田薬品の将来を考える会」事務局長の小安和夫です。発言の機会を与えて頂き、どうもありがとうございます。新型コロナウィルス禍の中、先ずはお見舞い申し上げます。

「武田薬品の将来を考える会」では今回、ガバナンス強化に資すべく社外取締役の候補者を推薦し、株主提案権を行使致しました。

ウェバーCEOは、シャイアー社買収後、経営の選択と集中と称してノンコア事業、優良資産などの多くを売却し、さらに国内を中心に多くの従業員を解雇することによって業績改善を図っておられます。しかし、経営指標ROEとTSRの状況は、株主提案に記載のように日系大手と比較して大きく劣っており、欧米マルチ医薬品とは比較にならない程低水準です。我々タケダの株主は、シャイアー買収案件の前後に、多大な損害を被っているのです。一方、CEO報酬を比較してみますと、武田薬品は18億円、代表的なグローバル製薬企業、メルク30億円、ファイザー20億円に次いで3位となっています。このCEO報酬は、この4年間(2018年度まで)で倍増となっており、2019年度にはさらに20億円にまで増加し、2位のファイザーを超えるのではと予想されています。このような経営者の報酬がなぜ、増加し続けるのでしょうか。

このような事態を招いている要因の一つは、経営者による自己利益の追求を監視するガバナンスが機能していないことにあります。グローバル化を急ぐ一方、タケダのガバナンス機能は世界水準に全く追い付いていないと判断し、今回の株主提案権行使となりました。

我々「武田薬品の将来を考える会」としましては、会社の永続的な発展のために、今後も友好的な対話を通じて、提言させて頂きます。株主の関心事は株価と配当であることを念頭におき、健全にして、持続可能な事業運営を目指して頂きたくお願い致します。以上です。