2020年CEO報酬と株主総利回り(TSR)

タケダ薬品のCEO報酬(2019年実績)を代表的なグローバル製薬企業4社(ロシュ、ノバルティス、ファイザー、メルク)の最新(2020年)実績と比較した。タケダの20億円は、メルク(23億円)およびファイザー(22億円)に匹敵し、ノバルティス(15億円)およびロシュ(12億円)を大きく上回っている。

引退を表明したメルクCEOフレイザー氏の報酬は2019年の29億円からは減少したものの製薬業界の最高額と推定される。2015年に9.9%だったROEを28%へと改善し、5年間平均年率6.6%の配当成長を実現した手腕が高く評価されている。2015年から2020年まで6年間のTSR(Total Shareholder Return)を見ると、メルクの年率8.6%はS&P500指数(7.8%)を上回った。

ロシュのCEO報酬が減少した唯一の原因はTSRが年率5.1%にとどまり、市場平均を下回った点だったと思われる。ロシュは血友病治療薬ヘムライブラなどの好調から、従来の主力3製品(リツキサン、ハーセプチン、アバスチン)の特許満了による大幅減少を乗り越え、ROEは40%へと1.1%ポイント改善し、年率2.4%の配当成長を維持している。

タケダ薬品の2020年度ROEは事業売却や一時的な益税効果によって前年度の0.9%から7.6%へ大きく上昇し、2015年度比では3.7%ポイント改善したが、配当成長率はゼロ、TSRは6年間の平均年率でマイナス2.7%と最低の経営成績だった。前述の事業売却と益税処理を除外した実質的なROEは2%前後だったと推察される。一方で、CEO報酬は2015年度から2018年度までの4年間で18億円へと倍増し、さらに2019年度には20億円を超えている。2020年度会社業績の正当な評価によって役員報酬を見直し、減額することを強く要請する。

タケダ薬品の株主総利回りとCEO報酬2021年5月.pdf