講演者(所属): 堀江 正信(株式会社RICOS)
題目:有限体積法を導入した機械学習手法による流体現象の高速・汎用的な予測
日時:2025年1月8日(水)16:30-18:00
場所:東京大学大学院情報理工学系研究科 工学部6号館2階62講義室 ※本郷地区の開催です.ご注意ください
概要: 物理現象の高速な予測を実現するための技術として機械学習が注目されている。しかしながら、多くの機械学習手法では学習した対象から大きく異なる入力に対して精度が劣化することが多いため、信頼性の高い予測を行うためには古典的な数値解析手法と同等以上の汎用性が必須となる。機械学習手法の汎用性を高めるためには物理現象の性質を満たすよう機械学習モデルの構造を定式化することが必要であると考えられており、そのためにはさまざまな数値解析手法を参考にすることが有効である。そこで本講演では、数値流体力学において代表的な手法である有限体積法をもとに物理現象の保存性・対称性を厳密に満たす機械学習手法を紹介する。本手法は物理現象のさまざまな性質を厳密に満たすことから、解析領域の外挿に対して精度の低下が見られないという数値実験の結果が得られており、汎用性の高い機械学習手法の構築のための重要な足がかりと考えられる。本講演は、筑波大学の三目直登助教との共同研究に基づく。
参考文献: M. Horie and N. Mitsume. Graph Neural PDE Solvers with Conservation and Similarity-Equivariance. In International Conference on Machine Learning (ICML), 2024.
備考:
講演者(所属): 伊藤優司(株式会社豊田中央研究所)
題目:不確実性や未知要素をもつシステムの制御
日時:2025年4月15日(火)16:30-18:00
場所:東京大学大学院数理科学研究科 002室及びオンライン (アクセス)
概要:化学・生物・人・社会・交通流等、世の中の多くの現象・システムは不確かさや未知の要素を持つ。これらを適切に解析・誘導・制御するため、確率論やデータに基づく制御理論が古くから整備されてきている。不確かさは確率パラメータとして表現する事ができ、時変なパラメータ、時不変なパラメータ、それらの混在等で分類する事ができ、各々に適した解析手法や制御設計手法が提案されている。また、未知の要素に対処するため、近年は機械学習分野で発展したモデルを用いたデータ駆動型の制御理論も盛んに研究されている。本講演では、講演者のこれまでの研究成果を中心に、不確実性や未知要素に対する制御理論の一部を紹介する。
備考:
講演者(所属): 谷口靖憲(東京大学大学院数理科学研究科)
題目:A Hyperelastic Extended Kirchhoff–Love Shell Model: Formulation and Isogeometric Discretization
日時:2025年4月22日(火)16:30-18:00
場所:東京大学大学院数理科学研究科126室及びオンライン(※普段と開催場所が異なりますのでご注意ください)
概要:アイソジオメトリック解析 (IGA) の普及によって、それまで有限要素解析で特別な処理が必要であった高階微分を含む方程式を直接実装することが可能となった。薄肉構造物の力学定式化・計算法であるKirchhoff–Love (KL) シェルモデルはその中でも代表的なものであり、IGAと組み合わせることで有力な計算手段となっている。近年では工業製品における薄肉構造にとどまらず、心臓弁のような柔らかく、構造表面から厚み方向に血流による圧力を受けるような現象まで、その適用範囲を広げている。
発表では、近年講演者を中心に開発した「拡張Kirchhoff–Loveシェルモデル」について、定式化とIGAによる数値解析例を中心に紹介する。本モデルは、回転自由度を持たない従来のIGAシェルと同じ表現において、慣例的に用いられてきた平面応力状態仮定をやめ、新たに厚み方向垂直応力を導入することで、心臓弁のような3次元応力状態を再現可能なモデルである。
備考:
講演者(所属): 大島伸行(北海道大学大学院工学研究院)
題目:壁境界が埋め込まれた流れ方程式とその応用
日時:2025年6月10日(火)16:30-18:00
場所:東京大学大学院数理科学研究科 002室及びオンライン (アクセス)
概要:界面を表現するレベルセット法やフェーズフィールド法を流れ解析へ導入・応用する研究の一環として、壁境界が埋め込まれた流れ方程式(Immersed-boundary Navier-Stokes)を提案した。その導出の考え方、数値検証例を示すとともに、工学応用事例として画像データが駆動する流れシミュレーション(image-data driven flow simulation)の構築について紹介する。
参考:
1. N.Oshima, J. Fluid Sci. Tech., Vol.19, No.3, (2024) 10.1299/jfst.2024jfst0026, Vol.18, No.4, (2023) 10.1299/fst.2023jfsr0034
2. N. Nakamichi, et al., Mech. Eng. J. , Vol.11, No.6, (2024) 10.1299/mej.24-00196
備考:
講演者(所属): 今川 真城(京都大学大学院情報学研究科)
題目:Convergence analysis of perturbed advection equations in a bounded domain
日時:2025年7月8日(火)16:30-18:00
場所:東京大学大学院数理科学研究科 126室及びオンライン (アクセス)
概要:移流方程式は流体のみならず広範な輸送現象を記述する1階偏微分方程式であり,その数学解析においては,2階の楕円型作用素に微小パラメータを乗じた項を付加して得られる近似方程式がしばしば考察される.この摂動項は数値計算において安定化効果に寄与する一方で,これは方程式の階数を変化させる特異摂動であるため,特に有界領域における境界値問題を扱う際には注意を要する.本講演では線型移流方程式の境界値問題に話題を限定し,近似方程式に課す境界条件が近似解の収束率に与える影響について議論する.また,得られた収束評価の妥当性を検証するための数値計算例も紹介する.
本講演は川越大輔先生(京都大学)との共同研究に基づく.
参考文献:M. Imagawa and D. Kawagoe, On strong convergence of an elliptic regularization with the Neumann boundary condition applied to a stationary advection equation. arXiv:2303.17904
備考:
講演者(所属): 鈴木貴(大阪大学)
題目:有界領域上のHodge分解の解析的証明とその応用
日時:2025年7月29日(火)16:30-18:00
場所:東京大学大学院数理科学研究科 123室及びオンライン (アクセス)
概要:有界領域上での微分形式についてそのHodge分解の解析的証明を与えていくつかの応用を紹介する。これは3次元のベクトル場に関する最近の結果の自然な拡張になっている。境界のある多様体の場合やBrezzi-Kikuchi不等式との関連性を述べ、Helmholtz分解の数値解法について新しいスキームを提案する。
備考: